前書
中国における立法は特定の主体が一定の職権と手続きに基づき、一定の技術を運用して、制定、認可、改正する法律をめぐっての特定の社会規範活動のことを指す。中国の現行の立法システムは中央が統一的に指導し、ある程度の分権があり、各クラスの立法が共存し、さまざまな種類の立法が結合する立法権限の区分システムである。 中国の立法には全国人民代表大会と常務委員会による立法、国務院と関連部門による立法、一般地方の立法、民族自治地方の立法、経済特区の立法および特別行政区の立法などが含まれる。

中国の現行の立法システム

(一) 立法制度

立法制度は立法活動、立法過程におけるさまざまな実体的ルールの総称であり、国の法制の重要な構成部分である。

現代の立法制度は①立法システムに関する制度②立法主体に関する制度③立法権に関する制度④立法過程に関する制度⑤立法監督に関する制度⑥立法と関連方面の関係制度から構成される。

(二) 立法システム

ある国がどのような立法システムを取るかは人々の主観によるものではなく、客観的なものによって決められる。立法システムは立法と同じように、歴史の範疇、国情の概念である。現在、世界では君主独裁制度がすでになくなり、民主、法治の原則を基礎とする民主立法システムが構築されている。国情が異なるため、各国の立法システムも異なっており、一部の国の立法システムはまったく異なるものである。

中国の現行の立法システムには次ぎのような特徴がある。①立法権は一つの権力機関ひいては一人で行使するのではなく、すなわち単一の立法システムではない。②立法権を二つ以上の権力機関が行使するのは多種多様な立法権が存在することを指す。国の立法権、行政法規の立法権、地方的法規の立法権などはそれぞれの権力機関に行使され、一つの立法権はいくつかの権力機関に行使されるのではなく、複合的な立法システムでもない。③中国の立法システムは制約の立法システムではなく、立法、行政、司法三権が相互分立、相互制約の原則に基づいて設けられているのではなく、国家主席と政府総理は全国人民代表大会によって選出され、国家主席は全国人民代表大会(以下、全人代と略)の決定によって法律を公布し、総理には全人代の立法を批准し、あるいは否決する権限がない。行政法規は全人代が制定した法律と抵触するものであってはならず、地方法規は国の法律および行政法規と抵触するものであってはできず、全人代には全人代が制定した法律と抵触する行政法規と地方法規を取り消す権限がある。これは中国における立法システム内部の従属関係、統一関係、監督関係を表わすばかりでないし、制約関係を表わすものでもない。

中国の現行の立法システムは特色の著しい立法システムである。立法権限の違いから見れば、中央の統一指導とある程度の分権であり、各クラスの立法が並存し、さまざまな種類のものが結びついた立法権限の区分システムである。最高の国家権力機構および常設機構が統一的に指導し、国務院がそれ相当の権力を行使し、地方は一部の権力を行使する。これは中国の現行の立法権限区分システムの特徴である。

中央の統一的指導とある程度の分権は、次の2つの面を指す。もっとも重要な立法権すなわち立憲権と立法権という国家立法権は中央に属し、立法システムの中で指導的立場にある。国の立法権は最高国家権力機構および常設機構しか行使することができず、地方や他の機構にはこの権限がない。行政法規、地方的法規は憲法、法律と抵触するものであってはならない。自治法規は憲法や法律と一致しない例外はあるが、自治法規は自治権として憲法、民族区域自治法と立法権に規定される権限に従って行使し、全人代常務委員会の批准や受理が必要である。これらの制度は国の立法権が自治法規制定権に対する指導的立場を確保するものである。一方、国のすべての立法権は、中央と地方の多くの主体によって行使される。これは中国の現行の立法システムのもっとも大きな進歩、変化である。かなりの分権には各クラスの立法が並存し、さまざまな種類のものが結びつく立法に表れている。

多くのクラス(多くのフェーズ)の立法の並存は、すなわち全人代および常務委員会が国の法律を制定し、国務院と所属機構がそれぞれ行政法規、部門の法規を制定し、一般地方の国家権力機構と政府が地方的法規、地方政府の規則を制定する。全人代および常務委員会、国務院および所属機構、地方の国家権力機構と政府は立法上およびその規範的な法律文書の効果においてクラスごとに違いがある。これらの異なるクラスの立法と規範的な法的文書が中国の立法システムに並存している。

多種類のものを結び付けているというのは、上述の立法および制定した規範的な法的文書が民族自治地方の立法や自治法規、経済特区や香港・澳門特別行政区の立法と規範的な法的文書と種類の上で異なることである。中央による統一的指導、分権、多クラスの立法などの表現のほかに多種類という表現を使うのは、統一的指導、多クラスの立法などの表現では中国の立法システムのすべての特徴を総括することができないからである。その理由としては①自治法規(自治条例、単独条例)や香港・澳門特別行政区の法律は地方の規範的な法的文書の範疇に属するものであるが、地方的法規や地方政府の規則と異なるため、同列視できない。②行政法規は普通全国で法的効果を発揮することができるが、自治立法や特区立法の規範的な文書は全国で効果を発揮することができないため、行政法規は自治立法、特区立法の上にある。しかし、自治立法や特区立法の規範的な文書は地方的法規のように行政法規に基づく必要がない。この点から見れば、行政法規より一クラス低いものとは言えない。行政法規と同じレベルのもの、あるいは地方的法規の上にあるものと見て取るのも適当ではない。以上の理由から、「種類」という概念を使用する必要がある。

中国における現行の立法システムは国情と深くかかわりがある。まず、中国では人民が国の主人公であり、法は人民意志の反映である、ということである。全国人民の最高の意志を代表する最高国家権力機構の全人代と常務委員会は国の立法権を行使し、全国の立法を統一的に指導し、国と社会の基本制度、基本関係の法律を制定、変更することこそ、国情と一致した中国の立法の本質の具現である。

次に、中国は国土が広く、人口が多く、各地域、各民族の経済、文化の発展がアンバランスで、国の立法だけで各地の複雑な問題を解決することはできない。多くの場合、国の立法によって規定することは難しい。おおさっぱに立法することは問題の解決に役立たないが、細かく立法することもできない。そのため、国情に適応するため、国の立法によって国の基本的問題を解決する以外に、立法上である程度の分権も必要である。関係部門に行政法規、地方的法規、自治法規、特区の法的文書をそれぞれ作成してもらう。

さらに、現段階の中国には、経済は国有経済を主導とする多種類の経済の形が並存する市場経済の構造を実施しており、政治においては民主集中制を実施している。経済、政治面の特徴、地理、人口、民族などの特徴、各地における発展のアンバランスなどの特徴は国が中央の統一的指導を堅持する一方、十分に民主を発揚し、多方面のものが立法に参与し、特に中央と地方の関係を正しく対処する立法システムを決定づけることになった。

第四、歴史的または新しい経験から見れば、1954年の憲法は建国初期の各行政区、各省ひいては市、県が法令、条例を制定するシステムを変え、立法の集権原則を実行することになった。これは当時、国の統一を固め、分裂に反対するうえで必要なことであった。しかし、立法権が集中しすぎていたので、地方の発展にマイナスとなっただけでなく、中央のエネルギーをも分散させ、上級機構の官僚主義を助長しやすいものとなった。立法上である程度の分権制度を実行する必要があった。一方、ここ数年来、国、社会、公民の生活の発展、特に市場経済の急速な発展によって立法に対して多くの要求が提出された。差し迫った多くの立法の作業は国の立法権を行使する機構によって完成することはできない。近年来、立法システムの改革措置を取り、現行の立法システムを実行したため、実際問題をたくさん解決し、国の経済建設、民主、法制建設を促している。

最後に、また特に重要なのは、中国の国情により歴史的な問題はかなりの分権的立法システムを実行する必要がある。

 
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