中国は1人当たりGDPがわずか2000ドル余りの発展途上国で、なお農村部では1500万人以上が絶対貧困状態にあり、都市部では2200万人余りが生活保護を受けている。中国は現在、工業化の急速な進行の段階にある。1人当たりの温室効果ガスの排出量は先進国の3分の1足らずであり、歴史的な累計排出量となるとさらに低い。しかも、排出量の相当部分は民衆の生活を維持するための排出や、国際製造業による移転排出だ。私たちは、経済発展、貧困撲滅、温室効果ガスの排出削減という多重の圧力に直面している。世界の発展の歴史を概観すると、先進国では200年余りの工業化の過程で段階的に現れた資源・環境問題が、わが国では現段階に集中して現れている。先進国が高度経済成長後に数十年かけて解決した省エネ・排出削減問題を、私たちは遙かに短い時間で解決しなければならない。これは前代未聞の難事業だ。中国政府は、エネルギーと資源の節約や環境保護にプラスとなる生産方式・生活方式・消費モデルを揺るがず推し進め、低投入・高産出、低消耗・少排出の、循環的で持続可能な国民経済システムを構築し、生産が発展し、生活が豊かで、生態環境が良好な持続可能な発展の道へと社会全体を推し進めていく。
現在、全世界的な金融危機の拡大が進み、世界経済の成長が明らかに減速し、各国の経済成長と人々の生活に深刻な試練をもたらしている。こうした状況の中、わたしたちは気候変動対策への決意を断じて揺るがせてはならず、その行動の手も断じてゆるめてはならない。
第1に、国際社会は気候変動対策における協力を堅持しなければならない。気候変動の人類への影響は全方位的であり、この巨大な試練を前に、気候変動から逃れることができる国は1つとしてないし、気候変動に立ち向かう重責を単独で担うことのできる国も1つとしてない。実務協力の行動を取らなければならない。そうしてこそ、人類の調和発展と各国の相互利益を実現することができるのだ。
第2に、持続可能な発展の枠組内での気候変動対策を堅持しなければならない。気候変動は重大な環境問題だが、詰まるところは開発問題だ。気候変動に対応するために開発目標の達成に影響が出るのも、あるいは気候変動の脅威を無視して経済成長のみを追求するのも、国際社会の共通利益に合致しない。現在の気候変動は、主として先進国による長期間の累積排出によってもたらされたものであり、数多くの発展途上国、特に後発発展途上国や小さな島国は、気候変動への対応能力が弱い。こうした国々に気候変動による深刻な帰結を引き受けさせるのは公平性・妥当性を欠く。先進国は持続不能な消費モデルを改め、温室効果ガスの排出を大幅に引き下げると同時に、発展途上国がその国情に適した持続可能な発展の道を歩むことを支援し、経済発展と気候変動対策の有機的な統一の実現に努力すべきだ。
第3に、「共通だが差異ある責任」の原則を堅持しなければならない。これは先進国と発展途上国が気候変動対策において尽くすべき異なる義務を反映しており、国際社会を指導して気候変動対策を行う上で主導的・核心的地位にある基本準則である。先進国は自国の長年にわたる累積排出という歴史的な責任と1人当たりの高い排出量という現実を正視し、「京都議定書」に定める第一約束期間の排出削減目標を厳格に履行し、かつ2013年以降も引き続き排出を大幅に削減していくべきだ。同時に、「バリ・ロードマップ」に沿って約束を果たし、発展途上国の気候変動対策を資金・技術・能力建設面で支援しなければならない。
第4に、国連「ミレニアム開発目標」を堅持しなければならない。わたしたちは、現在も世界で約10億人が貧困ライン以下の生活を送っており、国連が打ち出したミレニアム開発目標の達成にはまだ程遠いことを忘れてはならない。全世界に数多いる貧困層が人類の発展と現代文明の成果を享受できるようにすることは、各国政府が尽くすべき責任である。国際社会は、発展途上国の経済と社会の進歩がなければ、気候変動対策の目標を達成できぬだけでなく、世界の繁栄と安定を確保することもできないということを認識しなければならない。
第5に、技術進歩に依拠した気候変動対策を堅持しなければならない。
「人民網日本語版」2008年11月19日
|