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米ロが核軍縮を推進、その動機は一体どこに
発信時間: 2009-05-19 | チャイナネット

 

米ロ両国による新たな戦略兵器削減条約交渉が18日、モスクワで鳴り物入りで始まった。年内の合意を目指している。

20年間鳴りをひそめていた核軍縮再開の背景には、世界各地で日増しに高まる「非核地帯」設置を求める声のほか、オバマ大統領就任後の伝統的外交政策の刷新がある。オバマ大統領は就任式で「武力だけではわれわれ自身を守ることはできない。安全は事業の正義の性質から来るものだ」と述べた。オバマ大統領は米国が安全と理想の間で二者択一をしなければならないとは考えていない。

その実、オバマ大統領の主張は理想から来るとともに、それ以上に現実に源を発しているのだ。オバマ大統領は、米国が今日直面する主たる脅威は、もはやロシアのような大国ではなく、目下の大敵はアルカイダやタリバンといったテロリストや原理主義勢力だと認識している。核兵器はこうした国境のない敵にとってはまったく抑止力とならいばかりか、その手に渡れば、テロの道具となる危険がある。オバマ大統領は「核世界大戦のリスクは減ったが、核テロの危険は逆に増大した。核兵器あるいは核分裂性物質がテロリストの手にひとたび渡れば、深刻な結果をもたらす」と述べた。また、米国が核兵器を率先して削減することは、イランや朝鮮の核開発を阻止する上で道義上の権威になるとしている。

このためオバマ大統領は一方では「核のない世界」という遠大な理想を打ち出し、もう一方では具体的な約束をいくつか示している。第1に、「包括的核実験禁止条約」の批准を議会に求めること。第2に、核兵器用核分裂性物質の生産を禁止する新条約の締結を各国に促すこと。第3に、「核不拡散条約」体制の強化。第4に、原子力の平和利用のための国際共用核燃料庫の設置という提言だ。オバマ大統領は以上の問題について、核の安全に関する首脳会議を年内に開催することを提案している。

米国が核軍縮を推進するのは、それが米国の総体的な軍事的優位を損なわないからだ。周知の通り、ロシアは核攻撃によって米国を壊滅できる世界唯一の国であり、その大国としての地位は米国と拮抗する戦略核兵器保有数に全面的に由来する。通常戦力、特に精密誘導技術と攻撃能力で米国はロシアを大きくリードしている。このため戦略核兵器の削減は、米国の通常戦力上の優位を損なわないまま、ロシアが核開発面で優位に立つのを阻止することができるのだ。

ロシアが核兵器削減交渉に同意した理由は、旧ソ連が遺した核兵器の多くが老朽期に入りながら、現在のロシアには大規模な維持・入れ替えを行う資金がないからだ。専門家は、ロシアには資金がないため、核兵器削減条約が締結されようとされまいと、配備可能な核兵器は1000発以下に減ると予測する。このためロシアは米国にも増して、新たな核兵器削減条約を必要としている。同時削減により両国の核兵力の均衡を保つ意図があるのだ。

こうして見ると、米ロ双方に、新たな戦略兵器削減条約をまとめる必要と誠意があるが、障害も依然少なくない。02年にブッシュ大統領とプーチン大統領が署名した「モスクワ条約」は、2012年までに両国の核弾頭を1700発から2200発の間まで削減すると定めている。だが条約には大きな問題が3つある。第1に、米国が削減する核弾頭は廃棄されるのではなく、倉庫に保管されること。第2に、運搬手段の削減規定がないこと。第3に、査察制度が設けられないことだ。このため新条約交渉では、削減数、査察方法、運搬手段などの問題について両国間で駆け引きが行われることになる。もう1つ難しいのは、プーチン首相が先日、東欧における米国のミサイル防衛計画と核兵器削減をリンクさせて協議すると表明したことだ。この問題において米国は、いくらか柔軟性を示したようである。このため両国の政府要人は、オバマ大統領の7月のロシア訪問で、交渉が大きく前進する見込みがあると考えている。(「人民日報海外版」(望海楼)欄)

「人民網日本語版」2009年5月19日

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