ドイツのフィッシャー前外相は5月、気候変動がひとたび制御不能になった場合にもたらされる恐ろしい結末を、世界金融危機による深刻な打撃に続き、世界に降り立つおそれのある1羽の「コクチョウ」にたとえた。フィッシャー前外相は、人類は「コクチョウ」の着地を阻止するための、逃すことの許されぬ機会を前にしていると指摘する。
7月8-10日にイタリア・ラクイラで開催される主要国(G8)サミットはまさに、世界の気候変動対策にとって特別な時機に招集される。イタリア側は、サミットを気候変動対策における一里塚にしたいとの意向を表明している。果たして、これは現実のものとなるだろうか?
アナリストは、ラクイラ・サミットが気候変動分野で突破口を開くことができるか否かは、2つの重要な障害を乗り越えられるか否かにかかっていると指摘する。1つは、G8首脳が先進国の温室効果ガス排出削減の中期目標について一致した見解に至り、かつそれを、科学者たちの示す要求に沿ったものにできるか否か。もう1つは、G8の少数の国々が、発展途上国も排出削減の数値目標を実行すべきとの主張を、取り下げられるか否かだ。この2つの問題の解答がイエスなら、ラクイラ・サミットの名は歴史に刻まれるだろう。
近年来、何度も開催された主要経済国の気候変動会議であれ、2度の国連気候変動交渉であれ、実質的な成果を上げられなかったのは、先進国内部、特にEU諸国・米国・日本間に、排出削減の中期目標の設定において大きな隔たりがあり、しかも、少数の先進国が京都議定書とバリ・ロードマップの規定に背き、不合理にも発展途上国に、排出削減の数値目標の実施を要求してきたことに、主たる原因がある。
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