「2015年、中国と米国との間に海上での激戦が発生、最終的には中国海軍が米国側の原子力空母「ジョージ・ワシントン」を打ち破る」。これは米国海軍ジェームス・クラスカ(James Kraska)中佐が外交雑誌『World Affairs』上に執筆掲載した文章の一節である。
クラスカ氏の予言はあくまで主観的な憶測の域を出ないものではあるが、しかしこれは本質的にみて、近年における米国の中国海軍の軍事力に対する憂慮と狼狽とを示すものである。米国が冷戦時代の「列島線」概念をここに来て再び持ち出し、米国が自国の「庭への門」とみなしている「第一列島線」の内に中国海軍を封じ込めようとしていることは、このような米国の心理を最も如実に映し出しているものといえよう。
列島線が中国の桎梏(しっこく)となる
中国の軍事専門家である戴旭氏は、「冷戦終結以降、米国が構築し中国の封じ込めに用いてきた列島線は未だ消滅していないのみならず、かえって絶えず伸長し、陸海両面での(中国)包囲網を形成している」、と主張する。戴氏の指摘によれば、米国は現在中国に対して、「C字型包囲網」を形成しているという。海上の包囲網は日本からインドに至り、陸上の包囲網はインドから中央アジアに至る。「“第一列島線”であろうが“C字型包囲網”であろうが、いずれにせよこれらが米国の地理戦略上の中国に対する桎梏であることは確かだ」と、戴氏は続ける。