石原慎太郎・東京都知事が米国での講演で打ち出した釣魚島(日本名・尖閣諸島)購入構想を巡り、国内は賛否両論に揺れ、中日関係は気まずいものになっている。釣魚島の領有権の係争は、中国の海洋権益発展の行方に関わるものである。中国海軍の艦艇は、釣魚島に程近い、沖縄本島と宮古島間の海域を通って太平洋に出るのが通常となっている。だが、監視を受けながら同海域を通過するのは、制海権拡大を目指す中国にとっていさかか煩わしい出来事になっている。
◇中国が警戒すべきところ
マスコミの中には、石原都知事の釣魚島購入構想を新党結成の布石だと批判する声も少なくない。また、釣魚島購入構想を「単なるパフォーマンス」と見なし、東京都がそのような歳出を認める訳がない、とする声もある。こうした認識は誤りではないが、釣魚島購入構想の背後には、中国側の懸念を拭い去れないものが存在する。
まず、日本の主要紙上、釣魚島の領有権については同じ認識を掲げており、石原都知事の言動に対する評価のみが異なっていることである。
次に、石原都知事は釣魚島の領有権の係争を、国内の土地所有権の問題にしてしまったことである。こうしたネタを振りかざすことで国民の目はそらされ、釣魚島の領有権問題は隅に追いやられてしまい、中国は第三者的な立場でそれを眺めるしかなくなってしまった。また、石原都知事は与野党議員に圧力をかけることで、日本の政界に波紋を投げかけ、国民を釣魚島問題に釘付けにさせることに成功したのである。
最後に、釣魚島問題には米国と切っても切れない関係が存在しているということである。石原都知事がわざわざ米国での講演中にこの構想を打ち出したのは、釣魚島が日米安保の適用対象であることを訴えてのことであり、また、米国の東アジア戦略に追随する形となったことを示している。
◇真の狙いは太平洋への出口ルート