中国全国人民代表大会外事委員会主任委員の傅瑩氏、中国南海研究院院長の呉士存氏はこのほど、メディアに記事「南中国海情勢および南沙諸島の係争:歴史を振り返り、現実を考える」を投稿し、中国の南中国海における目標について次のように論述した。
まず、中国の南中国海政策の根本的な出発点は、国家の主権の安全および海洋権益の維持で、「静をもって動を制し、後から手を打ち相手を制する」を貫いている。中国人は、中国の南中国海の島嶼およびその周辺海域における主権・権益をさらに損ねることを、すべての国に対して絶対に認めることはなく、そのため国家が自国の利益を守る能力を持つことに強く期待している。中国は毅然たる姿勢で国家の領土・主権および権益を守り、かつ情勢をコントロールしさらなる損失を回避する能力を強化する。現状を見ると、重大な脅威がなければ、歴史を尊重する態度に基づき、「係争を棚上げにし共同開発する」政策を続けることができる。協議と交渉による係争の平和的解決に尽くすという、中国の政策が変わることはない。
次に、中国の南中国海政策は、航行の自由と航路の安全の維持に専念しなければならない。南中国海は世界の戦略的通路であり、世界で最も行き来の激しい商業航路がある。毎年、世界の貨物の4割が南中国海を経由する。南中国海の航行の自由と安全は、世界の各主要経済体の重大な利益に関わる。中国の貿易とエネルギーの7−8割が南中国海の航路を利用する。中国は南中国海の通路の最大の使用者であり、南中国海は中国海軍の世界進出の重要な通路でもある。
それから、中国と周辺諸国の南中国海における最大公約数は、地域の平和と安定の維持だ。中国には、いわゆる地域の覇権を求める動機と計画はない。中国が係争の当事国との意見の不一致と食い違いのコントロールに取り組んでいるのは、周辺の全体環境の重要性を鑑みてのことだ。今後は海外への情報提供、資料の共有を増やし、相互理解を促進する必要がある。公共サービスの提供を増やし、地域の安全と福利を強化する。ASEAN諸国と「南中国海行動準則」を制定することで、地域内の効果的な規則を共に形成する。長期的に見ると、南中国海の最大の沿岸国である中国は、南中国海で軍事防御および平和維持の能力を保持し、交渉により係争の解決を推進する能動的な地位を強化するべきだ。
また、中米の南中国海における共同の戦略的利益は、航行の自由と安全、および南中国海周辺地域の繁栄と安定だ。中米間には南中国海の係争が存在しない。両国は対話、双方の意図の説明により、現在の南中国海問題がもたらしている安全の苦境と誤解を回避するべきだ。中米は南中国海で徐々に協力に向かう必要があり、その可能性もある。中国は海洋強国を建設中で、世界範囲の広い海洋は中国の発展と世界の協力にとってより重要になっている。中国の海洋の視野は、南中国海を越えることになる。陸権という考え、古い海洋支配の理念により中国を推し量ろうとするのは、理にかなっていない。
情勢が今度どのように変化するかは、関連国の認識と選択にかかっている。協力を選べば、ウィンウィンが実現されるだろう。対抗を選べば、膠着状態に陥り、さらには衝突に至る恐れがある。そこから利益のみを得ることは、どの国にとっても難しいだろう。(傅瑩氏は中国全国人民代表大会外事委員会主任委員、中国社会科学院国家世界戦略シンクタンク上席専門家、中国国際経済交流センター客員副理事長。呉士存氏は中国南海研究院院長、研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年5月16日 |