2つの影響
周知の通り、南中国海情勢は昨年下半期より、沈静化という望ましい流れを示している。中国とASEAN諸国のCOCをめぐる交渉に前進が見られ、5月中旬に「準則枠組み文書」を採択していた。規則を基礎とする危機管理メカニズムの構築に向け、実質的な一歩を踏み出した。
米国のこの新たな措置が、すでに安定化しつつある南中国海情勢を覆し、破壊的な影響を及ぼすことは間違いない。これは政治的相互信頼と海上協力を促進する地域諸国の努力にもとり、同時に中国とASEAN諸国が実施中の準則をめぐる交渉、及び今後中国が主導する南中国海地域の安全秩序の構築に大きな衝撃を及ぼす。
米軍の航行の自由作戦の南中国海情勢への影響は、主に地域内外の諸国と米国の同盟国・パートナーの、南中国海政策の調整及び海上行動の強化という2面に反映される。
米国の航行の自由作戦を歓迎し喜んでいるのは、主に日本、豪州、インド、ベトナムなどだ。日豪印は米軍の同作戦に直接的もしくは間接的に参与する。うち日本は直接的かつ全面的に参与することで、夢にまで見た南中国海における軍事的存在のメカニズム化と長期化を維持する可能性がある。
次に豪州とインドだ。「インド太平洋安全戦略」の重要な推進者、対中関係の大幅な悪化を起こさない手段による航行の自由作戦への参与は現在、両国の南中国海政策の方針、戦略的な考えとなっている。
それからベトナムだ。ベトナムは中比関係の改善後、米日が南中国海での妨害行為に抱き込もうとする国になっている。ベトナムは日本やインドのように公然と支持しないが、米国の南中国海における軍事的存在を楽観するばかりか、米軍に港湾基地の使用権を提供するなど二国間軍事協力により、米国の中国を念頭に置く航行の自由作戦を応援する可能性がある。
また米国の航行の自由作戦は国際社会と地域諸国に、米国が南中国海問題で一方に肩入れし、中国を敵とする包囲政策を続けることをアピールする。これが少数の当事国に南中国海で「一方的かつ危険な行動」を起こすことをそそのかし、南中国海の緊張情勢をさらにエスカレートさせることは間違いない。
この意義から論じると、南中国海の航行の自由作戦年間計画の発表は、トランプ政権が「同盟関係に基づく米国のアジア太平洋秩序の主導権の維持」を中心内容とする、前任者のアジア太平洋政策を引き継いでいることを反映した。これはトランプ政権の南中国海政策の形成を示す、象徴的な出来事でもある。中米の南中国海における新たな軍事対抗を主な特徴とする南中国海情勢が、引き続きエスカレートすることは必然的だ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年8月7日