インド太平洋の概念、泡のように消え失せる

インド太平洋の概念、泡のように消え失せる。

タグ:インド太平洋

発信時間:2017-11-22 14:00:15 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

 「インド太平洋」は地政学的概念として、インド人学者が10年前に打ち出した。豪州、日本、米国の学界がこれに反応を示した。しかし当時のインドはインド国民会議が政権を運営し、対中関係の改善に期待したので、この概念を提唱することはなかった。インド太平洋の前に、米日は「民主価値観共同体」という構想を打ち出し、中国に矛先を向けた。当時のインド政府は、これにも同意しなかった。インドの態度により、インド太平洋に類似する概念はこれまで、学者の間で議論されるだけで、流行することはなかった。

 

 しかし今や、インド太平洋の概念が浮上している。直接的な原因は米国の重視で、少なくともトランプ政権はこれに一定の価値があると感じている。米国国内を見ると、トランプ大統領はアジア太平洋戦略を打ち出す必要があるが、オバマ大統領のレガシーを嫌い、「アジア太平洋リバランス」の踏襲を避けている。このタイミングで日本が再び米日印豪による戦略対話を提案したことで、インド太平洋がトランプ大統領の視界に入った。

 

 もう一つの原因は、インドと日本の態度の変化だ。中印関係はこれまで、あまり良好ではなかった。今年6-8月の洞朗地区における対立で、両国の溝が浮き彫りになった。しかしその前に5月に北京で「一帯一路」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)国際協力サミットフォーラムが開催された際にも、インドの態度はすでにおかしかった。さらに遡ると、中国がパキスタンとの経済回廊の推進を始めてから、インドは反感を示していた。一部の西側の戦略家はチャンスを嗅ぎ取り、中印間の齟齬が徐々に増加しており、つけ入る隙があると感じた。そこで彼らは再びインド太平洋の概念を持ち出し、インドからも反応があった。

 

 日本は現在、インド太平洋戦略の構築にも積極的になっている。トランプ大統領は就任後、直ちにTPP離脱を宣言した。安倍政権はTPPを利用し、中国をアジア太平洋の経済・貿易圏の外に排除しようとしていたが、空振りに終わった。これを背景とし、日本側は米国の説得を試みる一方で、情勢に迫られアジア太平洋で自らの取り組みを進めている。そのため今年はインド太平洋及び4カ国の同盟に何度も言及している。

 

 米印日という重要な役割が積極的になり、学者の間で議論されるだけだったインド太平洋の概念が熱を帯びた。

 

 インド太平洋の構想が最終的に実現するかについては、多くの不確定性が存在するだろう。これは関連国、特に米印両国の未来の変化と、中国がいかに対応するかにかかっている。

 

 不確定性はまずインドにある。インドは近年自信を深めており、少なくともデータを見ると好景気だ。モディ首相は地位を固めており、国内政治が全体的に安定している。これは世界、特に米日などの国がインドを持ち上げる理由となっている。インドは自信を持っているが、その経済はやや虚ろだ。国際市場では「インドの概念」が誇張され、資本が大量に流入し、インドの外資導入規模が急拡大している。しかし国際市場の風向きの変化、もしくはインド自身の変動により外資が流出すれば、インド自身の資本では高度経済成長を支えられない。経済にひとたび問題が生じれば、インドの外交面の「小さな野心」が失われ、米日から見ても価値が低下する。

 

 不確定性は米国にもある。トランプ政権はインド太平洋という表現を選択したが、これはまだ米国のアジア太平洋戦略とは呼べない。米国全体の外交戦略がまだ確立されておらず、その一部であるアジア太平洋戦略はまだ模索中だ。そのためアジア太平洋戦略に付随するインド太平洋の概念は、地位がまだ定まっていない。

 

 アジア太平洋方面では、中国の台頭に対応するか、朝鮮への対応を中心とするかについて、米国新政権はまだ決めかねているようだ。米国人は朝鮮の核問題は実際の脅威であると判断し、朝鮮がすぐに米国本土に到達する核ミサイルを保有することを懸念しており、直ちに朝鮮の核問題を解消しなければならない。そのためには、米国は中国との協力が必要だ。米国は中国と接触しながら警戒を維持しているが、中国の働きかけやトランプ政権の実務的な方針により、米国が中国との協力に転じる可能性も否定できない。

 

 インド太平洋という概念の3つ目の不確定性は、中国がいかに対応するかだ。中国は対米外交で多くの取り組みをしており、現状を見る限りすでに奏効している。20世紀の中米関係の歴史は、米国が中国との協力を選べば結果は往々にして良好であることを証明している。まずは協力し日本軍国主義を打ち破り、その後さらにソ連を解体させた。しかしその反対に中国と争えば、米国は往々にして利益を手にできない。中国が貧困で立ち遅れ、米国の同盟体制が飛ぶ鳥を落とす勢いだった50-70年代においても、米国は朝鮮とベトナムの戦場で中国とも引き分けるしかなかった。トランプ大統領が価値観に操られなければ、中米は完全にパートナーシップを構築できる。そうなればインド太平洋は米国にとって用なしとなる。

 

 インド太平洋という概念に含まれる別の国についても、中国は十分に重視している。洞朗地区の対立を対話で解消し、国際メディアの「米印が歩み寄り」「日印が歩み寄り」という喧伝についても冷静さを維持している。習近平国家主席は先ほどダナンAEPC会議に出席し、ベトナムの訪問を成功させた。中越関係に、新たな展開があった。豪州は実力に限りがあり、経済面で中国に高度依存しており、アジア太平洋もしくはインド太平洋の概念では、せいぜい「枯れ木も山の賑わい」程度の役しか演じられない。

 

 米国がより実務的になり、インド、ベトナム、豪州も積極的に協力しなければ、日本がどれほど騒ごうとも、インド太平洋は絵空事にすぎない。日本も現在、対中関係の改善を目指しているのだからなおさらだ。

 

 全体的に見て、再び喧伝され始めたインド太平洋という概念について、我々は研究する必要があるが緊張する必要はない。これには多くの不確定性が含まれる。合理的に対処すると同時に自国の事に取り組めば、中国を念頭に置く小賢しい手段は自ずと消え失せる。歴史の泡のように、陽が射せばすぐに消えてしまうのだ。(筆者・金燦栄)


 「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年11月22日


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