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japanese.china.org.cn |07. 12. 2017

トランプ氏の中東政策、イスラム世界の感情の「レッドライン」を踏む

タグ: ホワイトハウス 記者会見 イスラム



 米政府当局者は5日夕方にホワイトハウスで開かれた記者会見で、トランプ大統領が6日、エルサレムをイスラエルの首都として承認することを宣言すると発表した。また直ちにではないが、米大使館のテルアビブからの移転を始めるとした。

 

 博聯社総裁、国際問題専門家の馬暁霖氏は「トランプ大統領の発言は、米国のエルサレムの地位に対する、20年以上に渡る無関心かつ中立的な立場を打破し、中東の平和の進展を見守りこれを主に推進すると称する米国の名誉と地位を貶める。パレスチナとイスラエルの平和の進展に大打撃を与える」と分析した。

 

 【イスラム世界の感情を損ねる】

 

 大使館のエルサレムへの移転は、トランプ大統領の昨年の大統領選での公約だ。匿名の米当局者は「トランプ大統領はこの約束を守らなければならないが、移転に直ちに着手することはなく、数年の時間が必要だ」と話した。

 

 馬氏は「トランプ大統領は事前にパレスチナやヨルダンなどの国に心の準備をさせていたが、これらの国がどのような態度を示すかはまだ不明だ。エルサレムの地位は一般的な議題でなく、どちらに肩入れするかという程度ではなく、イスラム世界全体の感情に関わる。米国とイスラム世界の関係に対して、長期的に影響を及ぼす」と述べた。

 

 エルサレムの地位は、パレスチナとイスラエルの食い違いが最も大きな議題の一つだ。イスラエルは1967年の中東戦争後、東エルサレムを併呑し、エルサレム全体をイスラエルの「恒久的で切り離せない首都」と宣言した。パレスチナは東エルサレムをパレスチナ側の首都とすることを求めている。国際社会はエルサレムの主権がイスラエルに帰属することを認めていない。

 

 米国政府は長期的に、エルサレムの地位については、双方が協議によって確定すべきとしてきた。

 

 中国現代国際関係研究院米国研究所の学者である孫成昊氏は「トランプ大統領は実際の行動により、最も敏感なエルサレムの地位に関する問題を起こした。パレスチナ、アラブ・イスラム諸国のレッドラインを踏み、2国家共存の基礎を徹底的に揺るがした。これにより双方の平和交渉が進められなくなった」と指摘した。

 

 【非理性的】

 

 馬氏は米国の中東政策について「トランプ大統領の決定はまずい手だ。まずこれはオバマ政権とイスラム世界の関係改善の努力の後退を意味する。オバマ大統領が昨年サウジアラビアを訪問し、アラブ・イスラム諸国とイランに対応するため構築した連携体制の解体を引き起こす」と話した。

 

 馬氏はまた「次にこれは新たな反イスラエル、反ユダヤ人の過激な思想を刺激し、テロリズムと過激主義がエルサレムをめぐり新たに深刻化する。それからこれは新たな反米ムードを引き起こす。中東のパレスチナ・イスラエル間の食い違いが、再び米国とアラブ・イスラム世界の食い違いに転じる。米国が中東で推進する戦略にとって不利益であり、米国の中東における長期的な利益の維持にとっても不利益だ」と補足した。

 

 【中東回帰の足がかり?】

 

 中国人民大学国際関係学院の刁大明准教授は「トランプ大統領は今年、内政・外交の成果が乏しい。選挙時の一部の約束を実現することで、得点を稼ごうとしたのかもしれない」と述べた。

 

 刁氏は「トランプ大統領は力強く中東に回帰するため、足がかりを求めている。さらに大きな問題を作り出すことで、米国の回帰のチャンスを生み出そうとしているようだ」と分析した。


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