米国でトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都として承認することを宣言した後、この决定がイスラム世界で引き起こした抗議の声はますます高まっている。トルコの呼びかけで開かれたイスラム協力機構特別サミットは13日、コミュニケを発表し、東エルサレムをパレスチナの首都として認めることを宣言し、国際社会にも承認するよう呼びかけた。サウジアラビアのサルマン国王も同日、米国の决定への反対を表明し、東エルサレムを首都として独立し建国するパレスチナの合法的な権益を保障するよう呼びかけた。(牛新春・中国現代国際関係研究院中東研究所所長)
イスラム世界は強烈な反撃に出ているものと言えるだろう。エルサレムは三大宗教の聖地であり、歴史的にはこれまで数十回にわたって、死体の山を築き、血の川が流れる大惨劇の舞台となってきた。もちろん歴史はそのまま繰り返すわけではなく、今回の危機が大規模な戦争を引き起こすことはないだろう。だが歴史の教訓は忘れてはならない。米国に後戻りさせる「機会の窓」がまだ閉まらないうちに、国際社会が共同で努力する必要があるだろう。
3つの選択肢
エルサレムをイスラエルの首都と承認することは、トランプの対イスラエル政策の調整のゴールではなく、中継所ですらなく、せいぜい給水所といったところだろう。米国は現在、事態の発展や各者の反応を注意深く見守り、利害をはかっているところだ。トランプのデスクには今、3つの選択肢が載っている。
第一に、原則については曖昧な立場を保ちながら、行動についてはケースバイケースで進める。トランプはエルサレムをイスラエルの首都と承認したが、どのエルサレムがイスラエルの首都であるかは言っていない。これは言い忘れたというようなものではなく、未来の選択に余地を残しておくためである。エルサレムは東西の2つの部分に分かれている。西エルサレムはイスラエルの事実上の首都で、イスラエルの主要な国家機関はすべて西エルサレムにあるが、国際社会の承認は受けていない。
イスラエルは事実上、東エルサレムとその周辺地区をコントロールし、ユダヤ人の入植地を建設している。だがここの主な住民はパレスチナ人であり、国際的には、東エルサレムは占領地であると幅広く考えられている。トランプは、今後も曖昧な立場を保ち続け、イスラエルの首都が西エルサレムなのかエルサレム全体なのかを明言しない可能性がある。オープンな選択肢をカードとすれば、イスラエルに肩入れすることもできるし、パレスチナを支持することもできる。
だが具体的な事情については米国も日和見を続けることはできない。米国はこれまで、東エルサレムに対するイスラエルの主権を認めておらず、オバマもトランプも大統領の身分でイスラエルを訪問し、活動に参加する際には、ディテールに十分な注意を払い、誤解を引き起こさないようにしてきた。今後、トランプが立場を明確に示さなければ、米国の官僚や軍人が公的な身分で東エルサレムに入ることができるかは、ケースバイケースで決めざるを得ず、毎回議論を引き起こすことになるだろう。
第二に、西エルサレム全体と東エルサレムの一部、さらにはエルサレム全体をイスラエルの領土と宣言し、崖っぷちへとさらに前進する。トランプは今回、東エルサレムに対するパレスチナの権力については一言も言及せず、米国はエルサレムの最終的な地位については立場を持っていないとしただけである。将来的には、米国が立場を明確化し、エルサレム全体を含めることも排除されてはいない。実際、トランプは声明で、1995年に米議会が制定した法律を根拠としているが、この法律は、エルサレム全体がイスラエルの首都であると規定している。国際的な世論も現在、トランプが指しているのはエルサレム全体だとみなしている。そうだとすれば米国は「二国家解決案」の棺に最後の釘を打ったということになるだろう。
第三に、西エルサレムだけをイスラエルの首都と認めると明言し、「遷都」の行動を遅らせ、ダメージを最大限コントロールする。米国の歴代政権はここ30年、パレスチナとイスラエルの2カ国を建てる「二国家解決案」を支持し、エルサレムが未来のパレスチナ国家の首都となることも事実上認めてきた。もしトランプが西エルサレムだけをイスラエルの首都と認めるのだとすれば、エルサレムの地位が未定であるという国際的に今日つ認識を破壊しただけで、「二国家解決案」にはまだ救いがある。さらに踏み込んで東エルサレムを未来のパレスチナの首都と認めれば、パレスチナやアラブ世界を最大限になだめることができる。