——第14次五カ年計画(十四・五)は、「社会の文明レベルの顕著な向上」を社会発展の目標の一つにしています。その中で、「中華文化の影響力はさらに高まる」と言及しています。世界各国の人々がより良く中国を知ってもらうために、中国の物語をしっかり語り、中国文化のソフトパワーを強化し、中国文化が海外に出て行くのを支援する上で、中国はさらにどのような努力をすべきだと思いますか。
黄平 文化は一つの大きな概念で、生活様式や交流方法、思考方法を指し、狭義の伝統的な文芸作品の上演や出版・展覧会を指すだけではありません。「海外に文化が出て行く」とは、文化の形式を通じてより多くの国の人々に中国を認識してもらうことです。中国文化が海外に出て行くのは、文化界の人たちのことだけでなく、多くの留学生や旅行者、ビジネスパーソンのことでもあります。こうした人々の海外での言行も絶えず中国の物語を発信しているからです。
現在、グローバル化や情報化によって今日の世界は新たな相互作用の枠組みを示しています。だから、私たちが中国の物語を発信する方法も多種多様で、より生き生きとし、より具体的で、より個人的に発信しなければなりません。そうすれば、中国文化は海外に進出する際に正真正銘の説得力と訴求力、影響力を持つようになります。
——習近平総書記は、文化は一つの国家の魂であり、一つの民族の魂であると指摘しました。文化強国というこの壮大な目標を実現するために、中国はどのようにして文化への自信をさらに深め、国の文化ソフトパワーの実力を高めるべきだと思いますか。同時に、文化交流は国際交流の中で独特で重要な役割を発揮しています。中国はどのようにして対外文化交流のレベルをより高め、また人類文明の交流・学び合いと全人類の共同価値の明示のために、どのように貢献すべきだと思いますか。
黄平 人類文明の交流・学び合いは、一方的な対外輸出という意味での「文化発信」と異なり、これは実質的に文明のインタラクション(相互作用)の過程で、文化への自信にもつながっています。
私の恩師の費孝通(社会学者、1910~2005年)先生がかつて振るった揮ごうの一つで、今では多くの人が話し、私も費先生が日本で話したのを覚えているものに、「各美其美、美人之美、美美与共、天下大同」(それぞれ素晴らしい理想を追求しつつ、他人の素晴らしい理想を尊重する。素晴らしい理想が共有されれば、世の中は一つになる)があります。この「各美其美」が、つまり文化に自信を持つという問題です。
全ての国家、全ての民族、そして全ての人は自分の文化と歴史、およびそれが秘める価値に対して尊重と自信の態度を持つべきです。このようにしてこそプライドを持つことができ、民族が自立できるのです。しかし、それだけではまだ足りません。「美人之美」もするべきです。つまり、一つの国や民族の歴史、文化がどれほど悠久で豊かであっても、必ず他者を尊重することを身につけ、他者の良さや長所を見て、その長所で自分の短所を補うことができるようにしなければなりません。最後に、皆さんがそれぞれの長所を提供し共有し「美美与共」を実現しましょう。
習近平国家主席が提唱する文明の相互学習とは、さまざまな文明――その大小や新旧、東西、伝統的か先進的かを問わず、全てを互いに参考にし、長所を取り入れ短所を補わなければならず、こうしてこそ自分をより豊かにできる、ということです。このような文化の自信こそ本当の意味での自信であり、他者から尊敬を得ることができ、彼我の間に共同もしくは双方向の価値と共有の意味を形成することができるのです。
例えば、私たちは皆平和を愛し、相互理解を主張し、自然を尊び、弱者を守ることなどを提唱しています。また、人類の平等への追求は古今を通して止んだことはありません。しかし現在、どのように実行されるのでしょうか。民族間や国家間から、一国の内部の各層に至るまで、「美美与共」と文明の学び合いを通してこそ平等の価値は実現されると私は感じています。また、他者を尊重すると同時に自分も自信を得ることができます。このようにして文明の学び合いを理解することは、実際には「各美其美、美人之美、美美与共」の三つの境地をより高く、より深いレベルに推し進めることです。
——中日両国の文化交流は歴史が長く、東アジアの文明を共同で創造してきました。今の時代、文化の交流と協力において、中日双方にはどのようなきっかけがあるのでしょうか。中国はどうやってここから中華文化の影響力の向上を実現し、また日本と文明の学び合いの関係を構築するのでしょうか。
黄平 私たち中日間の文明の交流と学び合いを後押しすることは、少なくとも二つの面で大いにやりがいがあります。一つは双方の歴史上の文化、文明、価値観、生活様式などの面で、共有したものあるいは分かち合った中味を共に掘り起こすことです。
かつて私は鑑真和上をテーマにしたドキュメンタリー映画の撮影に参加したことがあります。当時、日本のNHKがこれを放送し、日本の各界で好評でした。鑑真和上は仏教文化を日本に伝えた人です。仏教はインドから中国に伝来し、鑑真はその仏教を携え日本に渡りました。歴史上このような一つの文化が共有された道筋と軌跡にはまだ掘り起こす価値のあるものが多くあり、それらは中日両国の地方文化や文学・芸術および社会発展史、生活変遷史の中にひそんでいると思います。
もう一つは中日両国の民間の文化交流分野です。実は、日本文化の中国に対する影響は大きく、中でも私たちも含めて多くの人が日本の映画やテレビドラマ、歌などが好きで、日本で流行のファッションや生活様式も中国の青少年に人気があります。逆もまた同様で、中国にも日本と分け合い共有できるものがたくさんあります。
このため、中日の民間、とくに青少年間は、両国の地理的な便利さや歴史的な結びつき、現在の相互のニーズを十分に利用し、より密接な相互交流を展開し、学び合いを深めるべきです。もし、双方の民間交流が勢いよく発展すれば、中日間の文化の理解と文化の尊重の深化、文化の学び合いと共有に対し、大きな後押しと促進の役割を果たすでしょう。
(第13期全国政協委員、中華文化交流・協力促進会理事長 黄平)