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japanese.china.org.cn |29. 05. 2025

「チャイナ・ショック」と米国の雇用 その真相とは=米紙WSJ

タグ: 米国 関税 雇用
中国網日本語版  |  2025-05-29

米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は27日、「チャイナ・ショックの真相」(サブタイトルは「チャイナ・ショックの米国の雇用への影響は限定的・一時的で、実は米国の全体的な雇用と消費者の福祉を促進」)と題した記事を掲載した。要旨は下記の通り。

米国の政治家や専門家は頻繁に、1999年から2011年までに米国の中国からの輸入が急増し、中国の台頭により米国で240万人分の雇用が喪失したと主張してきた。しかしこれらの学者の研究は、米国の全体的な雇用市場を見渡すことなく、米国の労働市場の局部である製造業の雇用状況のみに焦点を当てていた。

確かに、中国製品と激しい競争を展開した米国の一部地域では、製造業の雇用が減少した。しかしこれらの失業労働者の大半は他の地域で新たな仕事を探すことなく、現地に留まった。「チャイナ・ショック」が米国全体の雇用に影響を与えたと断じるのは間違っている。中国からの輸入品は確かに米国の特定地域に影響を与えたものの、米国全体の雇用が明確な純減を被ったわけではないと、複数の証拠が示している。全米経済研究所(NBER)の最近の研究では、一部地域で失われた雇用の大半が、米国の他地域での雇用増によって相殺されたことが判明した。中西部と南部の製造業拠点では就職率が低下したが、西海岸や北東部の沿岸地域、ハイテク産業の中心地ではサービス業の雇用が急増した。輸入競争によって米国の雇用は消滅ではなく移転したのだ。

「チャイナ・ショック」が2000年から2007年にかけて米国の就職率全体を小幅上昇させ、より安価な輸入品が企業と消費者のコストを下げたことにより、他の産業における需要と雇用の増加が刺激されたことが研究者によって明らかになった。対中貿易の影響を受けた米国のほぼすべての地域で雇用純増加率は平均1.27%を記録し、現地の賃金も増加した。特に注目すべきは、輸入競争の影響を最も強く受けた米国内の一部地域においてさえ、新規サービス業の雇用を算入すれば、「チャイナ・ショック」が地域全体の雇用にプラス効果をもたらしたという事実である。

雇用に関する警鐘は、対中貿易が米国経済にもたらした巨大な利益に言及していない。最も顕著な利益は、衣類・電子製品から家具に至るまで多様な商品を低価格で購入できるようになった点だ。関連研究によると、中国からの輸入が1%増加するごとに米国の消費者価格が約1.9%低下することが判明している。米国の中・低所得世帯が特にこの「ウォルマート効果」の恩恵を受けただけでなく、米国企業も受益者となり、中国からの輸入部品・材料を使用する製造業者はさらなるコストカットにより国際競争力を強化した。「チャイナ・ショック」に関する大半の研究は、生産者や消費者へのこうした積極的な効果を考慮していない。米国に対する中国の影響を公平に記述するためには、これらの効果を加味する必要がある。

さらに重要なのは、製造業を再構築する自動化という別の強い力を背景とし、「チャイナ・ショック」を捉えるべきということだ。仮に米国が何らかの方法で中国からの輸入品との関係を断絶したとしても、多数の工場の雇用は機械とソフトウェアの代替で消滅する運命にある。

対中貿易を非難する危険性は、米国が問題を見誤り間違った解決策を求める点にある。追加関税で時間を逆行させようとする試みは、十分に理解されていない疾病に高価な処方箋を出す行為に等しい。(筆者:ノーベル経済学賞受賞者/シカゴ大学経済学教授 ジェームズ・ヘックマン他)

「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年5月29日