share
政治・安全>
japanese.china.org.cn |04. 06. 2025

「愛」の名のもとに太平洋を「火薬庫」へ押しやる米国

タグ: アジア安全保障会議
中国網日本語版  |  2025-06-04

「時に我々は厳しい愛をもって行動するが、それも結局は愛だ」このほど開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で、ヘグセス米国防長官は同盟国に向け「痛切なる思いやり」を表明した。「NATO加盟国は対GDP比5%の国防支出を約束した。アジアの同盟国も欧州諸国を見習うべきだ」米国防省の情報によると、ヘグセス氏はオーストラリア国防相との会談で、防衛費の対GDP比を3.5%まで引き上げるよう明確に要求。また、日本メディア掲載のヘグセス氏書面インタビューでは、米国が日本に防衛費の対GDP比を5%に引き上げるよう求めたことが明らかになった。「環球時報」が伝えた。

5%と3.5%という2つの数字は、日本とオーストラリアの頭上にぶら下がる「ダモクレスの剣」のごとく、同盟の信頼基盤を揺るがしかねない。現実問題として、この要求は両国にとって短期間での達成が不可能だ。

日本の防衛安全政策は近年、戦後未曽有の積極的な姿勢を示しているが、これは主に「戦後レジーム脱却」を目指す「国家正常化」の主張に駆られたもので、独自性の鮮明な特色を帯びている。しかし日本の軍事的野心に歯止めをかけたのは経済的な現実だ。日本政府の債務残高の対GDP比は260%に達し、少子高齢化の危機は空前の深刻さで国家財政を逼迫。財政予算の3分の1が社会保障支出に、4分の1が国債元利返済に充てられ、財政収支は借金に依存しつつ辛うじて均衡を保っている。岸田文雄政権時には防衛費調達のための増税案が提示されたが、国内世論と野党の激しい反発を招いた。仮に日本の防衛費の対GDP比を2%から3%に引き上げるなら6兆円もの資金不足が生じ、日本経済及び国民生活に耐え難い重圧をもたらし、国民の理解を得られないだろう。5%達成には、現在の低い円相場で試算しても2000億ドル超が必要となる。これは間違いなく戦後日本の平和主義的発展路線を根本から覆し、日本の「軍国主義復活」への懸念を引き起こす。

米政府は同盟国に軍事費増額を要求し、「責任分担」と称しているが、その実質は米国が世界覇権維持のコストを最大限に同盟国に転嫁し、「アメリカファースト」の利益に役立てることに過ぎない。このようなやり方は同盟国の財政負担と戦略的自主性への要望を無視しており、利益の計算に満ちた利己的本質を露呈している。

ヘグセス氏はアジア安全保障会議の演説で、トランプ政権の「実力による平和」という「インド太平洋戦略」の目標を売り込んだ。しかしこの政策アプローチは米国と同盟国の軍事力拡大を基盤としたものであり、アジア太平洋地域で新たな軍拡競争を引き起こすだけである。もし日豪韓比などの米同盟国がこぞって従来の安全保障政策の枠組みを突破するような事態となれば、アジア太平洋の戦略的安定は失われ、強制的な陣営対立が対話・協力に取って代わり、地域を安全保障のジレンマのエスカレートに陥らせるだろう。米国が軍拡によって「抑止力」構築を図ることは、同盟国の福祉と地域安定を犠牲にするだけでなく、最終的には予測不能な戦略的暴走を招きかねない。(筆者・項昊宇 中国国際問題研究院アジア太平洋研究所特別研究員)

「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年6月4日