| japanese.china.org.cn |03. 11. 2025 |
「十五五」計画が世界経済にもたらす影響とは=小林正弘氏
文=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー
第十五次五カ年計画(「十五五」計画、以下は「計画」)が発表された。そこには今後5年間の中国における成長発展戦略が示されている。計画が世界経済に与える影響を考察するキーワードとなるのは「質の高い発展」、「美しい中国の建設」そして「ハイレベルの対外開放」であろう。すなわち、計画では①「質の高い発展」を堅持するためのエンジンとして科学技術イノベーションと産業イノベーションの融合および未来産業育成の強化、②「美しい中国の建設」のために新型エネルギー体系の構築と汚染物質排出減少による生態系保護を柱とするグリーン発展を堅持、③「ハイレベルの対外開放」としてサービス業を重点とした市場参入条件の緩和、科学技術イノベーション・サービス貿易・産業発展などの重要開放協力プラットフォームの整備、質の高い「一帯一路」共同建設等の強化を掲げている。
このような発展戦略に基づき今後中国で発展する未来産業としては量子技術、バイオものづくり、水素エネルギー、核融合エネルギー、ブレインマシンインターフェース(脳で機械を直接操作する機器やコンピューター・プログラム、BMI)、具現化 AI、第 6 世代移動通信(6G)が重点として挙げられており、これらの分野の中国発の技術革新が世界経済に大きな影響を与えていくだろう。
これらの技術分野の多くは中国のみならず世界のグリーン発展にも大きな貢献が期待される。その中でも特に注目されるのが現在中国で建設が進む核融合実験装置「人工太陽(BEST計画)」である。未だ多くの課題はあるが、理論上はクリーンで安価な電力をほぼ無尽蔵に生み出せる「人工太陽」は2027年に完成予定で、人類史上初めて「核融合による発電」に成功する可能性がある。その後、2030年前後に「初の融合発電による電球点灯(人工太陽の点灯)」を行う計画だ。二酸化炭素を排出しない新型エネルギーが実用化されれば中国のみならず人類にとっても地球温暖化と環境破壊を止める強力な切り札となるだろう。
フランスの著名な思想家・経済学者ジャック・アタリ氏は将来世代の利益を考えることが自らに利益をもたらす「合理的利他主義」の考えを提唱し、温室効果ガスの少ない生産活動など将来世代の役に立つ生産活動を目指す「命の経済」の拡大が気候危機回避のための唯一の選択肢だと主張する。
自国第一主義で世界が混迷を深める中、中国は「人類命運共同体」の理念に基づき「命の経済」の旗手としてグリーン発展や AI、デジタル経済、医療衛生・ヘルスケア、観光、農業などの分野にて世界経済を持続可能な発展の方向へとリードしていくことが期待される。
筆者が本年訪問した上海市普陀区の「海納小鎮(ハイナタウン)デジタルイノベーションセンター」や北京大興区の「北京中日イノベーション協力モデル区」などでは技術・人材リソースマッチングや知的財産保護の強化など技術・産業革新を生み出すエコシステム構築の先進的な試みがなされていた。また、昨年末に訪れた蘇州市相城区では外国企業にも自動運転技術のデータ収集を行うハイテクインフラを提供し最先端の自動運転自動車関連産業の育成と技術革新・製品開発のサポートがなされており、日本企業を含む多くの外国企業が次世代技術の開発に取り組んでいる様子が伺えた。中国で生み出される未来産業等の分野における共同開発・サービス提供やサプライチェーンでの部品や技術の提供などでいかに中国の企業、大学、研究機関などと積極的に提携しウィンウィンの関係を構築できるかが外国企業にとっては重要な成長戦略の一つとなる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年11月3日
