一、 裁判制度

裁判制度は法院(裁判所)制度であり、法院の設置、裁判官、裁判組織とその仕事などの面の法律制度を含む。

(一) 人民法院の組織と職権
現行の憲法と人民法院組織法の規定に基づき、人民法院は国家裁判機関であり、その組織体系は地方の各クラス人民法院、専門人民法院、最高人民法院からなっている。各クラス、各類の人民法院の裁判の仕事は統一的に最高人民法院の監督を受ける。地方の各クラスの人民法院は行政区画によって設けられ、専門法院は必要に基づいて設けられる。

1、地方の各クラス人民法院は末端人民法院、中級人民法院、高級人民法院に分けられている。
「人民法院組織法」に基づいて、末端人民法院は県と自治県の人民法院、区を設けない市と市が管轄する区の人民法院を含み、その職権は主に次の通り。
(1) 刑事、民事、行政事件を裁判する一審事件を含み、法律が別に規定したものは除外する。受理した事件に対し、情状がゆゆしく上級人民法院によって裁判しなければならない場合、裁判のため上級人民法院に移送することができる。
(2) 開廷して裁判を行う必要のない民事紛争と一般的な刑事事件を処理する。
(3) 人民調停委員会の仕事を指導する。
人々の訴訟のために便利をはかるため、末端人民法院はいくつかの人民法廷を設立して派出機構とし、 人民法廷は一つの裁判の等級ではない。その職権は一般の民事と刑事の事件を審理し、人民調停委員会の仕事を指導し、法制の宣伝を行い、人民からの投書を処理し、人民の来訪を受け入れることである。その判決と裁定は末端人民法院の判決と裁定である。
中級人民法院は省、自治区の地区によって設立された中級人民法院、中央直轄市の中級人民法院、省、自治区の管轄する市と自治州の中級人民法院を含み、その職権は主に次の通り。
(1) 次の事件の裁判を行う。
@ 法律の規定した中級人民法院が管轄する一審事件。刑事訴訟法の規定によって、中級人民法院が管轄する一審刑事事件は、国の安全に危害をもたらす事件、死刑と無期懲役の判決の可能がある事件、外国人が罪を犯すかあるいは中国公民が外国人の合法的権益を侵害する刑事事件などである。民事訴訟法の規定によって、中級人民法院が管轄する民事事件は重大な渉外事件、当該管轄区内の大きな影響のある事件、最高人民法院が中級人民法院を指定して管轄する事件である。行政訴訟法の規定によって、中級人民法院が管轄する一審行政事件は発明の特許権を確認する事件、税関が処理する事件、国務院の各部、省・自治区・直轄市人民政府の具体的な行政行為に対して訴訟を提出する事件、 当該管轄区内の重大かつ複雑な事件である。
A 末端人民法院が移送してきた一審事件。
B 末端人民法院が判決あるいは裁定をおこなう上訴事件と控訴事件。
中級人民法院はその受理した刑事、民事、行政事件に対し、情状がゆゆしく上級人民法院によって裁判しなければならない場合、裁判のため上級人民法院に移送することができる。
(2) 管轄区内の末端人民法院の裁判の仕事を監督する。すでに発効した末端人民法院の確定判決に誤りを発見した場合、中級人民法院は自ら裁判をしなおすかあるいは末端人民法院を指定して再審理させる権利がある。
人民法院組織法の規定に基づいて、高級人民法院は省・自治区・直轄市に設けられ、その職権は主に次の通り。
(1) 次の事件の裁判をおこなう。
@ 法律が規定した高級人民法院によって管轄する一審の重大かつ複雑な刑事事件、民事事件、行政事件。
A 裁判のため下級人民法院が移送してきた一審事件。
B 下級人民法院の判決と裁定に対し上訴あるいは控訴をする事件。海事法院の所在地にある高級人民法院は海事法院の判決と裁定に上訴する事件を裁判する権利がある。
C 人民検察院が裁判監督のプロセスによって提出した控訴事件。
(2) 中級人民法院が死刑の判決を下し、被告人が上訴しない一審刑事事件を再審すること、そのうち、死刑判決に同意した場合、認可のため最高人民法院に報告し、死刑判決に同意しない場合、自ら裁判をしなおすかあるいは下級法院に再審させる。
(3) 中級人民法院の死刑二年間執行猶予の判決を下した事件を再審する。
(4) 最高人民法院に授けられた権利によって、一部死刑判決事件を審査の上認可する。
(5) 管轄区内の下級人民法院の裁判の仕事を監督する。下級人民法院の確定判決に誤りを発見した場合、自ら裁判をしなおすかあるいは下級人民法院に再審させる権利がある。

2、専門人民法院は実際の必要によって特定の部門に設立された特定の事件を審理する法院であり、現在、軍事法院、海事法院、鉄道運輸法院などの専門法院が設けられている。
軍事法院は末端軍事法院、大軍区と軍・兵種軍事法院、中国人民解放軍軍事法院の三つのクラスが設けられている。
中国人民解放軍軍事法院は軍隊における最高の裁判の等級であり、その職権は次の通り。
(1) 正師団級以上の人員の犯罪の一審事件を裁判する。
(2) 渉外刑事事件の裁判を行う。
(3) 最高人民法院が権利を授け、あるいは裁判を指定した事件および自ら裁判をする必要のあるその他の一審刑事事件の裁判を行う。
(4) 二審、死刑の照合と再審を担当する。
大軍区、軍・兵種軍事法院は各大軍区軍事法院、海軍軍事法院、空軍軍事法院、第二砲兵部隊軍事法院、解放軍総直属部隊軍事法院などを含む。これは中級連隊軍事法院であり、その職権は次の通り。
(1)副師団クラスと連隊クラスの人員の犯罪の一審事件の裁判を行う。
(2)死刑の判決を下す可能性のある事件および上級軍事法院が権利を授与するかあるいは裁判を指定した事件の裁判を行う。
(3) 上訴、控訴事件の裁判を担当する。
末端軍事法院は陸軍軍クラス部門軍事法院、各省軍区軍事法院、海軍艦隊軍事法院、大軍区空軍軍事法院、北京駐留直属部隊軍事法院などを含み、その職権は次の通り。
(1) 正大隊長級以下の人員の犯罪、無期懲役以下の懲罰の可能性のある一審事件の裁判を行う。
(2) 上級軍事法院が権利を授与するかあるいは指定した一審事件の裁判を行う。
海事法院は海事司法管轄権を行使するために設けられた一審海事、海商事件の裁判を行う専門的人民法院である。最高人民法院は1989年5月に「海事法院の事件受理範囲に関する規定」を制定し、海事法院が中国法人と公民の間、中国法人と公民が外国・地域の法人と公民の間、外国・地域の法人、公民の間の海商事件を受理することを規定し、5部類 14種が含まれる。
(1) 海事権利侵害紛争事件は10種類で、主に船舶衝突損害賠償事件、船舶が海上、通過水域、港の建物と施設に衝突したことによる損害賠償事件、船舶が有害物質と汚水を排出、漏らして水域の汚染をもたらすかあるいはその他の船舶と貨物の損害賠償事件、海上運輸あるいは海上、通過水域、港の作業過程における死傷事故の損害賠償事件がある。
(2) 海商事件は14種類で、主に水上運輸契約紛争事件、水上旅客と荷物運輸契約紛争事件、船員労務契約紛争事件、海上救助、サルベージ契約紛争事件、海上保険契約紛争事件がある。
(3) その他の海事海商事件は11種類で、主に海運、海上作業における重大な責任事故事件、港湾作業紛争事件、共同海上損失紛争事件、海洋開発利用紛争事件、船舶所有権、占有権、抵当権あるいは海事優先請求権をめぐる紛争事件、海洋、内陸河川主管機構にかかわる行政事件、海運詐欺事件などがある。
(4) 海事執行事件は5種類で、主に海洋、内陸河川主管機関が法によって強制執行を求める事件、当事者が仲裁裁決の執行を申請する事件、「承認、執行される外国仲裁公約」の規定に基づいて、当事者は中国海事法院が外国・地域の仲裁機構の仲裁裁決を承認、執行することを申請する事件、中国と外国が締結した司法援助協定あるいは互恵原則によって、外国の法院の裁決執行を援助する事件がある。
(5) 海事請求保全事件は2種類で、上訴の前に船舶の差押さえを申請する事件と上訴前に積載された貨物あるいは船舶用燃料の差押さえを申請する事件がある。
鉄道運輸法院は鉄道沿線に設けられた専門的人民法院で、主に次の事件の裁判を行う。
(1) 鉄道公安機関が調査し、鉄道検察院が起訴する鉄道沿線で発生した刑事犯罪事件。
(2) 経済紛争事件。最高人民法院の規定により、経済紛争事件は12種類あり、鉄道貨物運輸契約紛争事件、国際鉄道合同運営契約紛争事件、鉄道システム内部の経済紛争事件、鉄道安全法規に違反し鉄道に損害をもたらす権利侵害紛争事件、鉄道の車両運転と操車による人身、財産の損害事件、原告が鉄道運輸法院による起訴を選択する権利侵害紛争などである。

3、最高人民法院は首都北京に設けられた国の最高裁判機関であり、法によって国の最高裁判権を行使し、同時に地方の各クラス人民法院と専門人民法院の仕事を監督する。最高人民法院は院長一人、何人かの副院長、廷長、副廷長、裁判員からなる。最高人民法院は次の職権を行使する。
(1)地方の各クラス人民法院と専門人民法院の仕事を監督する。地方の各クラス人民法院と専門人民法院の確定裁決に誤りを発見した場合、自ら裁判をしなおすかあるいは下級人民法院に再審させる権利がある。
(2)次の事件の裁判を行う
@ 法律が規定した最高人民法院に管轄される一審事件と自らが裁判すべき一審事件。刑事訴訟法の規定によって、最高人民法院に管轄される一審刑事事件は全国的範囲の重大な刑事事件である。民事訴訟法の規定によって、最高人民法院に管轄される一審民事事件と経済紛争事件は全国的範囲の重大な影響をもたらす事件である。行政訴訟法の規定により、最高人民法院に管轄される一審行政事件は全国的範囲の重大かつ複雑な事件である。
A 高級人民法院、専門人民法院が判決、裁定を行う上訴事件と控訴事件および最高人民検察院が裁判監督プロセスによって提出された控訴事件。
B 死刑の判決を下す事件を審査の上認可する。
C 司法解釈を行う。つまり人民法院が裁判の過程においてどうして法律、法令を応用するかの問題についての解釈のことである。
D 全国の各クラス人民法院の司法行政の仕事を指導、管理する。