素朴で善良な台湾の人たち

現在、台湾島の住民数は約2,100万人で、ほとんどが漢族と高山族である。その中で、漢族は97%以上、高山族は約2%を占めている。

高山族は台湾島の原住民で、中国大陸の同方古越族の後裔である。彼らの祖先たちはインドシナ半島と南洋諸島を経由して台湾に到達したのである。それぞれ違う言語と風習によって、高山族はアタヤル、サイシャット、ブヌン、パイワン、アミ、ツォウ、プユマ、ルカイとヤミという9の種族に分かれている。また、すでに異化した平埔族が西部の平野に暮らしている。高山族はパイワン族を除いてほかの族はみな氏族制度のいくつかの特徴を保っている。アミ族は今でも母系社会の習慣を保ちつづけている。高山族の風習は中国大陸のチワン・トン語族にかなり近いが、その言語はアウストロネシア語族のインドネシア語派に属している。

台湾の漢族の大多数は福建省と広東省からの移住民である。福建省からの移住民が圧倒的に多いが、泉州かしょう州を本籍地とする人が多数を占める。広東省を本籍とする人はほとんどが梅県と潮州の出身者である。しょう州と泉州の移住民が優位約八割を占めているため、びん南語(別称福ろう言葉)は台湾民間の主な言語になり、「台語」といわれている。広東省からの移住民は「客家(ハッカ)人」といわれ、使っている方言はすなわち「客家語」である。ただ、台湾で通用している言語はなんといっても北京語(標準語)で、台湾の人たちの間では「国語」と呼ばれている。台湾における国語の普及率はかなり高いので、標準語ができれば台湾に行っても言葉の上で困ることはないだろう。

台湾人民は中華民族の大家族の一構成員として中華民族の伝統文化と風習を保ち続け、数回植民地支配のもとに置かれたにもかかわらず変わっていない。そして民間の風俗はむしろ福建および広東地域の習慣に近い。総じて言えば、台湾の風習は大陸と大きな違いはない。ただし、歴史的及び地理的な原因によって、台湾は独自の特徴をも持っている。その中で、宗教信仰が盛んであることは台湾民俗の一大特徴である。

移住民の社会として、台湾人はみな先祖を崇拝し、やがては故郷に身を落ち着けようという気持を持っている。それは中国文化の重要な内容の一つでもある。台湾ではどの家庭にも先祖を祭る祭壇と位牌が安置されており、重要な出来事や祝日の際にはまず先祖の霊にお祈りをささげる。そして族の系図を記載しつづけることや伝統的な祖先の祭り方などは台湾の民間では念入りに継承されている。

台湾ではお寺も多いし、信者も多い。おおまかな統計によると、台湾でちょっとした規模とレベルのお寺が一万ヵ所以上もあり、中でも一番参詣者が多いのは媽祖(海上での無事を守ってくれる女神)のお寺である。媽祖のお寺は信者が最も多く、まさに台湾の最大の宗教と言える。

衣食住や交通、祭祀祝日、冠婚葬祭などの民間生活の各方面に台湾の宗教信仰が浸透し、どこにでもあり、いついかなるときもその存在を感じることができる。例えば、台湾の主な祝日は旧正月、上元、清明、七夕、中秋、重陽、冬至、大晦日などで、大陸とはいくらか違いがあるが、ほとんど同じである。その間にまた「神を祭る日」がところどころに組み入れられ、毎日に小さな祝日、十日ごとに大きな祝日があるといえるぐらいである。