祖国統一の大業達成促進のために引き続き奮闘しよう
江沢民(1995年1月30日)

同志の皆さん、友人の皆さん:
 全国各民族人民がつい最近1995年の元旦を喜びの中で過ごしたのち、また乙亥年の春節を迎えることになった。この中華民族の伝統的な祝日を迎えるにあたり、北京に居られる台湾同胞と関係のある方々が、楽しく一堂につどい、共に両岸関係の前景と祖国平和統一大業について語り合うことは、とても有意義なことである。この機会を借りて、私は中国共産党中央委員会、国務院を代表して、2100万の台湾同胞に新年の祝賀の意を示し、台湾同胞に新春の喜びを祝い、万事順調にゆくよう祝うものである。

台湾は中国の不可分の一部である。百年前の1895年4月17日、日本帝国主義は戦争の手段で、腐りはてた清朝政府に迫って国権を失う国辱の「馬関条約」(日本では「下関条約」と呼んでいる――訳注)を締結させて、台湾と澎湖諸島をむりやりに奪い取った。その結果、台湾人民は日本の植民地支配のもとで半世紀にわたって暮さなければならなかった。中国人民は永遠にこの屈辱の歴史を忘れないであろう。50年前、中国人民は世界人民とともに日本帝国主義にうち勝ち、1945年10月25日、台湾と澎湖諸島は再び中国の版図にもどり、台湾同胞はそれ以後、植民地支配のくびきから脱却した。しかし、周知の原因から、1949年以後、台湾はまたしても祖国大陸と分離される状態におかれた。祖国の完全な統一を実現し、中華民族の全面的振興を促すことは、依然としてすべての中国人にとっては神聖な使命、崇高な目標である。

1979年1月に全国人民代表大会常務委員会が「台湾同胞に告げる書」を発表していらい、われわれは「平和統一、一国二制度」という基本的方針と台湾に対する一連の政策を制定した。ケ小平同志は中国の改革・開放の総設計師であるとともに、「一つの国、二種類の制度」という偉大な構想の創造者でもある。ケ小平同志は大所高所に立ち、実事求是をむねとして、鮮明な時代的特色をもつ、台湾問題解決のための一連の重要な論断と思想を提出し、祖国の平和的統一実現の指導方針を確立した。

ケ小平同志は次のように述べている。問題の核心は祖国の統一であり、中華民族の子孫なら、すべて統一を望んでおり、分裂は民族の意志に背くものである。中国は一つしかなく、台湾は中国の一部である。「二つの中国」あるいは「一つの中国、一つの台湾」とかいうものの存在は許されるものではなく、「台湾独立」にはだんこ反対する。台湾問題の解決には二種類の方式しかなく、一つは平和的方式であり、いまひとつは非平和的方式である。どの方式で台湾問題を解決するかは、まったく中国の内政であり、外国の干渉は絶対に許さない。われわれは平和的方式で、話し合いによって平和的統一を実現することを堅持する。同時にわれわれはまったく武力を行使しないことを約束できない。もしもこの点を約束するなら、平和的統一を不可能にするだけであり、最終的に武力で問題を解決することになるだけである。統一後に「一国二制度」を実行し、国の主体は社会主義制度を堅持し、台湾はもとの制度を保つことになるのである。「こちらがあちらを呑み込んでしまうのでもなく、また、あちらがこちらを呑み込んでしまうのでもない」のである。統一後、台湾の社会経済制度は変わらず、生活様式も変わらず、台湾と外国との民間の関係も変わらず、外国の台湾にある投資と民間の交流、往来は変わらない。台湾は特別行政区として大きな自治権を有し、立法権と司法権(終審権をも含む)を有し、みずからの軍隊をもってもよく、党、政府、軍のシステムはすべてみずから管理される。中央政府は軍隊、行政要員を台湾に駐在させないが、中央政府には台湾のために定員を残す。

十数年このかた、「平和的統一、一国二制度」の基本的方針の導きのもとに、海峡両岸の同胞、香港・澳門(マカオ)同胞および海外在住の華僑同胞がともに努力を払った結果、両岸の人的往来および科学、技術、文化、学術、スポーツなどさまざまな分野の交流にはめざましい発展がみられるようになった。両岸の経済の相互促進、相互補完と互恵の局面も初歩的に形成された。両岸の直接の「三通」を早期実現することは、広範な台湾同胞、とりわけ台湾の工商業者の強く望むところであるばかりか、台湾のこれからの経済発展にとっての実際の必要ともなっている。両岸の事務的話し合いには進展がみられ、「汪辜会談」は両岸関係が歴史的な重要な一歩を踏み出したことを示すメルクマールである。

しかし、すべての中国人が警戒すべきなのは、近年、台湾の島内における分離傾向がいくらか発展し、「台湾独立」の活動がはびこる傾向を示していることである。一部外国勢力は一歩進んで台湾問題に介入し、中国の内政に干渉している。これらの活動は中国の平和的統一の進行過程を阻害しているばかりでなく、アジア・太平洋地域の平和、安定、発展をもおびやかしている。

当面の国際情勢は依然として複雑で変幻きわまりないが、全般的趨勢は緩和に向かっている。世界各国はいずれも未来に向けての経済戦略を制定し、総合国力の増強を第一義的な任務とし、それによって次の世紀に世界でしかるべき位置を占めようとしている。われわれは海峡両岸の経済がいずれも前へと発展していることを目にして喜んでいる。1997年、1999年には、わが国は相継いで香港および澳門に対する主権行使を回復することになっており、これは台湾同胞を含めた全国各民族人民の一大慶事となろう。中華民族はなが年の歴史の変遷を経て、いろいろな苦難をなめ尽してきたが、いまこそ祖国統一の大業を完成し、全面的な振興を実現するときである。これは台湾にとってもチャンスであり、全中華民族にとってもチャンスである。ここでわたしは現段階において両岸関係を発展させ、祖国の平和的統一の進行過程を促すいくつかの重要な問題について、次のような見方と主張を提出したい。

(一) 一つの中国の原則を堅持することは、平和的統一を実現するための基礎と前提である。中国の主権と領土を分割することは決して許されない。「台湾独立」をつくりだすいかなる言論と行動にも、断固反対すべきである。「分裂・分治」、「段階的な二つの中国」などの主張は、一つの中国の原則に背くものであり、これにも断固反対すべきである。

(二) 台湾が外国と民間的な経済・文化関係を発展させることに、われわれは異議を唱えない。一つの中国の原則のもとで、しかも関連ある国際組織の規約にもとづいて、台湾はすでに「中国台北」の名義でアジア開発銀行、アジア太平洋経済協力閣僚会議(APEC)などの経済的国際組織に参加している。しかしわれわれは台湾が「二つの中国」、「一つの中国、一つの台湾」をでっちあげることを目的として、いわゆる「国際生存空間を拡大する」活動を行なうことに反対する。国を愛するすべての台湾同胞と有識者はみな、このような活動を行なうことは問題を解決できないばかりか、逆に「台湾独立」勢力にさらにほしいままに平和的統一の進行過程を破壊させることだと認識するようになるであろう。平和的統一を実現してこそ、台湾同胞ははじめて全国各民族人民とともに、世界における偉大な祖国の尊厳と栄誉を真に存分に分かち合うことができるのである。

(三) 海峡両岸の平和的統一の交渉を進めることは、われわれの一貫した主張である。平和的統一の交渉過程で、両岸の各党派、各団体の代表的な人士を吸収して参加させてもよい。わたしは1992年10月の中国共産党第14回全国代表大会で行った報告の中で、「一つの中国を前提とするかぎり、どのような問題についても話し合うことができる。両岸の正式交渉の方式について台湾当局と討議し、双方がともに適切と認める方法をさがしだすのも、その一つである」と述べた。われわれの言う「一つの中国を前提とするかぎり、どのような問題についても話し合うことができる」にはもちろん、台湾当局が関心を寄せているさまざまな問題も含まれている。われわれはたびたび、双方が「両岸の敵対状態を正式に終わらせ、平和的統一をちくじ実現する」ことについて交渉することを提案した。ここで、わたしは改めてこの交渉を行なうことを厳粛に提案し、またその第一歩として、双方がまず「一つの中国の原則のもとで、正式に両岸の敵対状態を終わらせる」ことについて交渉を行ない、合意に達することを提議する。これをふまえて、共同で中国の主権と領土保全を守る義務を担うとともに、今後の両岸関係の発展について構想を練る。政治交渉の名称、場所、方式などの問題については、早く平等な協議をしさえすれば、いずれは双方とも受け入れられる解決策を探し当てることができる。

(四) 平和的統一の実現に努め、中国人同士は戦わない。われわれは武力行使の放棄を承諾していないが、それは決して台湾同胞にではなくて、外国勢力の中国統一への干渉と「台湾独立」の企みに対するものである。台湾同胞、香港・澳門同胞、海外在住の華僑同胞がわれわれのこの原則的な立場を理解してくれるものと、われわれは確信している。

(五) 21世紀の世界経済の発展に目を向けて、両岸の経済交流と協力を大いに発展させ、それを両岸経済の共同的繁栄に役立たせ、中華民族全体に幸せをもたらすようにしなければならない。われわれは、政治面の意見の食い違いが両岸の経済協力に影響を与え、それを妨害しないことを主張している。われわれは引き続き長期にわたって台湾業者の投資を奨励する政策を実行し、『中華人民共和国台湾同胞投資保護法』を貫徹する。いかなる状況のもとでも、われわれは台湾業者のすべての正当な権益を確実に保護する。引き続き両岸同胞の相互往来と交流を強化し、相互理解と相互信頼を増進しなければならない。両岸の直接の郵便物交換、通航、通商は、両岸の経済発展と各方面の交流の客観的要請であり、両岸同胞の利益にかかわるものでもあり、実際的段取りを追ってその実現を速めるべきである。両岸の事務的協議を促進する必要がある。われわれは、互恵互利をふまえて、台湾業者の投資の権益を保護する民間協定について話し合い、それを結ぶことに賛成する。

(六) 中華各民族人民がともに築きあげた5000年のさん然たる文化は、終始全中国人を結びつける精神的きずなであり、平和的統一を実現させる重要な基礎でもある。両岸の同胞は共同で中華文化の優れた伝統を受け継ぎ、発揚しなければならない。

(七) 2100万の台湾同胞は、その本籍が台湾省であるかその他の省であるかを問わず、みな中国人であり、血肉を分けた同胞、兄弟である。台湾同胞の生活様式および主人公となる願望を十分に尊重し、台湾同胞のすべての正当な権益を保護しなければならない。わが党と政府の各関係部門は、駐外機構を含めて、台湾同胞とのつながりを強め、彼らの意見や要求に耳を傾け、彼らの利益に関心と配慮を寄せ、できるだけ彼らの困難解決を手助けしなければならない。われわれは、台湾の社会が安定し、経済が発展し、生活が豊かになることを望み、台湾の各党派が理性と前向きの、建設的な態度で両岸関係の発展を促すよう望む。われわれは、台湾の各党派、各界の人士が両岸関係と平和的統一について、われわれと意見交換をすることを歓迎し、彼らが参観や訪問に来ることも歓迎する。およそ中国統一のために貢献した各方面の人士であれば、歴史は彼らの功績を永遠に銘記するであろう。

(八) われわれは、台湾当局の指導者の適切な資格で訪問に来ることを歓迎する。われわれは、台湾側の招きに応じて台湾に赴くことも望んでいる。国是について話し合ってもよく、まず若干の問題について意見交換をしてもよい。互いに訪れ、見てまわるだけでも有益である。中国人の事はわれわれ自身がやり、いかなる国際の場に頼る必要もない。両岸は目と鼻の先にあり向かいあっており、とにかく行ったり来たりすべきであって、「死んでも行き来しない」ようなことがあってはならない。

香港・澳門同胞、海外在住の華僑同胞は、両岸関係促進、祖国統一、中華民族振興のために多くの努力を払った。その功績は無視できないものである。われわれは、広範な香港・澳門同胞、海外在住の華僑同胞が一歩進んで両岸関係発展、祖国統一、中華振興のために、新たな貢献をするよう望んでいる。

祖国統一の早期実現は、中国各民族人民の共通の願いである。統一を際限なく引き延ばすのは、すべての愛国的同胞が目にしたくないことである。中華民族の偉大な革命先駆者孫文先生は「統一は中国全国民の望みである。統一できれば、全国人民は幸せになるが、統一できなければ、害を受ける」と述べたことがある。われわれは、すべての中国人が団結し、愛国主義という偉大な旗じるしを高くかかげ、統一を堅持し、分裂に反対し、全力あげて両岸関係の発展を推し進め、祖国統一という大業の達成を促すよう呼びかける。中華民族の近代的発展の過程で、このさん然と輝く日がかならずやってくるであろう。