軍事制度

中華人民共和国の軍事制度は国の武装力の統帥権、指揮権の帰属、国の武装力の構成および兵役制度のことを指す。

一、 武装力の統帥権、指揮権の帰属

(一) 軍隊に対する中国共産党の指導

中国共産党は人民解放軍およびその他の人民武装力に対する指導を堅持する。

軍隊の中の分隊に中国共産党党員がおり、小隊に党小グループを設け、末端の大隊には党支部を設け、連隊以上の組織には党委員会を設ける。

軍隊に設けられる各クラス党委員会は軍隊の中における統一的指導と団結の中核であり、党委員会は所属する部隊のすべての組織、すべての部門、すべての人員、すべての活動に対して統一的指導を実行し、部隊のすべての重要な問題は緊急状況の下で首長が臨機応変に処置できる以外は、いずれもまず党委員会によって決定されなければならない。

中国人民解放軍の党組織は、中国共産党中央の指示に基づいて仕事を行う。

中国共産党中央、中国共産党中央軍事委員会の授権を経なければ、いかなる組織あるいは個人も軍隊の問題に介入し、口出しし、あるいは処理してはならず、さらに軍隊を勝手に移動させ、指揮することはなおさら許されない。

中国共産党は共産主義青年団以外のその他のいかなる党派、政治団体、政治組織が軍隊の中に組織をつくり、メンバーを拡大することを禁じる。その他の組織と団体のメンバーはもし軍隊に入隊すれば、元の組織と関係を絶たなければならない。軍隊の中では、党組織の認可を経なければ、いかなる性格と形態の小さな団体、小さな組織をつくることも許されない。中国共産党の組織だけが軍隊の中の各クラス指導幹部を委任、派遣することができ、その他のいかなる組織と個人も軍隊に対して幹部を委任、派遣することは許されない。

(二) 中央軍事委員会

中央軍事委員会は全国の武装力を指導し、中央軍事委員会は全国武装力の最高軍事統率機構である。

中央軍事委員会のメンバーは中国共産党中央委員会によって決定される。

国家中央軍事委員会と中国共産党中央軍事委員会は同一の機構である。

国家中央軍事委員会は国務院、最高人民法院、最高人民検察院と並列する最高国家機構の一つである。国家中央

軍事委員会主席は全国人民代表大会によって選出される。

国家中央軍事委員会主席の指名により、全国人民代表大会は中央軍事委員会のその他の構成メンバーの人選を決定する。全国人民代表大会常務委員会は全国人民代表大会の閉会期間において、中央軍事委員会の指名により、中央軍事委員会のその他の構成メンバーの人選を決める。

国家中央軍事委員会主席は全国人民代表大会と全国人民代表大会常務委員会に責任を負う。

中央軍事委員会は主席、副主席数名、委員数名からなる。

中央軍事委員会の主席、副主席、委員は連続当選すれば再任できる。

中央軍事委員会主席は職に就く資格の制限はない。

中央軍事委員会は主席責任制を実施する。

二、 武装力の構成

中華人民共和国の武装力は中国人民解放軍、中国人民武装警察部隊と民兵からなる。

中華人民共和国の武装力は人民に属する。その任務は国防を強固にし、侵略に抵抗し、祖国を防衛し、人民の平和的な労働を守り、国の建設事業に参加し、人民に奉仕することに努めることである。

中国人民解放軍の現役部隊は国の常備軍であり、主に防衛作戦の任務を担い、必要な場合は法律の規定に基づいて社会秩序を守ることに協力することができる。予備役部隊は平時の規定に基づいて訓練を行い、必要な場合は法律の規定に基づいて社会秩序を守ることに協力することができ、戦時は国の発布した動員令に基づいて現役部隊に変わる。

中国人民武装警察部隊は国から与えられた安全防衛任務を担い、社会秩序を守る。

民兵は軍事機関の指揮の下で、戦争に備えての勤務、防衛作戦任務を担い、社会秩序を守ることに協力する。

三、 軍事の指導指揮体制

中央軍事委員会の指導のもとに、人民解放軍には本部、軍種、兵種、軍区などの指導機関を設け、人民武装警察部隊には総隊機関を設け、民兵は各クラス中国共産党組織と地方軍隊によって指導される。

(一) 人民解放軍の指導指揮体制

人民解放軍は中央軍事委員会指導下の総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部の体制を実行する。総参謀部、総政治部、総後勤部と総装備部は中央軍事委員会の戦略的意図の執行機構でもあり、軍隊全体の軍事、政治、後方勤務、技術装備を管理する最高指導機関でもある。基本任務は作戦と軍隊の建設に関する中央軍事委員会の戦略的政策決定と諸方針、政策の実現を保障することである。

1、 人民解放軍の本部機関

(1) 総参謀部

総参謀部は全国武装力の軍事活動の指導機関であり、全国武装力の軍事面の建設を組織し、指導し、全国武装力の軍事行動を組織し、指揮することに責任を負う。

それには作戦部、情報部、通信部、軍事訓練部、軍務部、装備部、人民武装部などが設置されている。

主な任務は戦略戦役の計画と動員計画を作成し、それを組織し、実施し、各軍種、戦区の作戦行動を指揮し、実施し、人民武装力の建設計画を作成し、それを組織し、実施し、軍隊の組織面の建設、軍事訓練、装備計画と行政管理事務を掌握する。

(2) 総政治部

総政治部は軍隊の中国共産党組織の活動と思想政治活動を管理する最高指導機関である。

それには組織部、幹部部、宣伝部、防衛部、文化部、大衆工作部、連絡部、軍事法廷、軍事検察院と解放軍報社などが設けられ、中国人民革命軍事博物館、八一映画製作所などの部門を管轄している。

総政治部の基本的任務は中国共産党中央、中央軍事委員会の決議と指示に従って、軍隊全体の政治活動の方針・任務を確定し、下級機関の執行を指導し、中国共産党中央、国務院、中央軍事委員会から軍隊に与えられた諸任務の完成を保障することである。

中央軍事委員会の政治活動機関は中国人民解放軍総政治部であり、総政治部は軍隊の中の党の活動と政治活動を管理することに責任を負う。軍隊の中の党の組織体制と機構は中央軍事委員会によって規定される。

(3) 総後勤部

総後勤部は軍隊の物資、医療衛生、技術、輸送などの供給に責任を負う機関である。

それには司令部、政治部、財務部、軍需部、衛生部、軍事機械部、車・船部、燃料供給部、基本建設兵舎部、軍事交通部、軍需生産部などが設けられ、20余りの部隊、大学、物資供給と科学研究などさまざまな性格の直属部門を管轄している。

総後勤部の基本的任務は軍隊全体の後方勤務の仕事を企画、実施し、後方勤務条例と規則制度を制定し、それを監督し、貫徹し、軍隊全体の後方勤務教育・訓練と科学研究を組織している。

(4) 総装備部

総装備部は軍隊全体の武器装備の建設の仕事を組織し、指導することに責任を負い、それには政治部、科学技術委員会、総合計画、軍・兵種の装備、陸軍装備の科学研究・購入、汎用装備の保障、電子電信の基礎、装備技術協力などの部門が設けられている。

2、 軍種、兵種、軍区などの指導機関

(1) 軍種の指導機関

海軍、空軍の指導機関は中央軍事委員会の指導する海軍、空軍を管理する業務部門と海軍、空軍部隊の指導機関である。

その基本的任務は海軍、空軍の建設と作戦に関する中央軍事委員会の方針・原則に従って、部隊の建設と戦争に備える仕事を指導する。

海軍の指導機関

それには司令部、政治部、後方勤務部、装備修理部が設けられ、各戦備海区に艦隊を置いている。
航空兵部はに設けられている。

空軍の指導機関 

空軍の指導機関には司令部、政治部、航空工程部が設けられている。
各軍区には空軍機関を設け、軍区と空軍の二重の指導を受ける。

(2) 兵種の指導機関

砲兵の指導機関は総参謀部砲兵部であり、その下には司令部、政治部、後方勤務部が設けられている。

装甲部隊の指導機関は総参謀部装甲部隊部であり、その下には司令部、政治部、後方勤務部が設けられている。
工兵の指導機関は総参謀部工兵部である。

化学防御兵部の指導機関は総参謀部化学防御部であり、その下には司令部、政治部、後方勤務部が設けられている。

通信兵部の指導機関は総参謀部通信部である。

戦略ミサイル部隊の指導機関は第二砲兵司令部であり、それには指揮コントロール、自動化指揮システムなどの部門が設けられている。

(3)軍区の指導機関

軍区は戦略区域に基づいて設置される軍隊組織である。司令部、政治部、後方勤務部、連合勤務部などの指導機関が設けられ、一定数の部隊を管轄している。

軍区は主に管轄区内の各軍、兵種部隊の合同作戦の指揮と所属部隊の軍事訓練、政治活動、行政管理、後方勤務技術の保障に責任を負い、管轄区内の民兵、兵役、動員の仕事と戦場の建設を指導している。

軍区は管轄する軍事区域の大きさに基づいて、大軍区、省、自治区軍区、軍分区と人民武装部に分けられる。

大軍区

大軍区は中央軍事委員会の指導のもとに直属し、その下には一定数の軍隊、小軍区(小さな軍区とも言う)と軍事大学を管轄している。
現在、瀋陽、北京、済南、蘭州、成都、南京など7つの軍区が設けられている。

省軍区

省軍区は軍区と省、自治区、直轄市党委員会の二重の指導を受けている。所在する省(自治区、直轄市)の軍事活動に対して責任を負い、主に予備役、民兵、兵役と動員の仕事を指導し、国境警備、沿岸防衛任務を担っているものもある。
各省、自治区、直轄市はそれぞれ省軍区、衛戍区と警備区を設けている。
全国には27の省軍区、衛戍区(北京)、三つの警備区(天津、上海、重慶)が設けられている。

軍分区

軍分区は地区クラス行政区域内に設けられた軍隊の一クラスの組織であり、省軍区と党地区(省管轄市、自治区、盟)委員会の二重の指導を受け、所在する地区の軍事活動、それも主に民兵、兵役と動員の仕事に責任を負う。

人民武装部

県(旗)、大都市の区、一部の県クラス市には人民武装部が設けられている。
人民武装部は地方の編制に属し、地方と軍隊の二重の指導を実行する。
少数民族地区の人民武装部は軍隊の編成に属し、現役の軍人からなる。

(二)人民武装警察部隊の指導・指揮体制

1、 人民武装警察部隊の指導・指揮関係

中国人民武装警察部隊は国家公安部門に所属する。国務院、中央軍事委員会の二重の指導を受けている。

各クラス武装警察内部衛戍部隊は地元の政府と上級の武装警察指導機関の指導を受けている。

武装国境警備部隊、消防部隊と警備部隊は公安部門の指導のもとにおかれている。

武装警察水力発電施設部隊、金採掘部隊と交通部隊の業務はそれぞれ公安部、国土エネルギー部、国家冶金管理総局、交通部の指導のもとにおかれている。

武装警察森林部隊は林業部門と公安部門の二重の指導を実施し、林業部門を主とし、中央と地方の指導においては地方を主とする管理体制を実施している。

国境警備、消防、警備、水力発電、金採掘、交通および森林武装警察部隊の軍事、政治、後方勤務活動は、いずれも武装警察本部の指導を受け、編制の序列は内部衛戍部隊とほぼ同じである。

武装警察部隊はみずからの制服様式、識別マークと軍人階級の等級があり、その内務制度、規律面の要求、隊列の基礎訓練と政治思想活動などは中国人民解放軍の関係条令、条例と規定を執行している。

2、 人民武装警察部隊の本部機関

武装警察部隊の指導機関は武装警察部隊の本部である。
本部には司令部、政治部、後方勤務部が設けられている。

3、 人民武装警察部隊の地方機関

各省、自治区、直轄市には武装警察総隊を設けられ、地区(地区クラスの市、州、盟)には支隊、県(旗、県クラス市)には中隊あるいは大隊、ステーション、所が設けられる。直属支隊が設けられ、支隊、大隊、中隊、小隊、分隊の序列に基づいて編制されている総隊もある。

四、 兵役制度

兵役制度は、公民が武装部隊に入隊するか、あるいは武装組織以外で軍事任務を担い、軍事訓練を受けることに関する国の制度である。
中国は義務兵と志願兵の結合、民兵と予備役の結合という兵役制度を実施している。

(一) 義務兵と志願兵の制度

公民は兵役に服する義務がある。

毎年12月31日以前に、満18歳の男子公民は、募集されて現役に服すべきである。その年に募集されなかったものは、22歳以前に、やはり募集されて現役に服することができる。

軍隊の必要に基づき、上記の規定に基づいて女子公民も募集されて現役に服することができる。

義務兵が部隊で兵役につくことは、国のために義務を尽くすことである。

国は義務兵の家族に対して優遇政策を実行している。

義務兵が現役に服する期限は二年とする。

義務兵が現役に服する期限が満了したら、志願兵に改めてもよい。

(二) 民兵と予備役の制度

民兵は武装力の構成部分であり、人民解放軍の助手と予備力である。

予備役は公民が軍隊以外で服する兵役である。

義務兵と志願兵が現役から退く時、予備役の条件に合うならば、部隊が兵士予備役に服することを確定し、考課を経て、将校の職務を担当することに適するならば、将校予備役に服する。

28歳以下の現役から退いた兵士と軍事訓練を経たものおよび軍事訓練に参加したものを中堅民兵に編成する。その他の18歳から35歳までの兵役に服する条件に合った男子公民を一般民兵に編成する。

(三) 軍事訓練制度

現役に服したことのない中堅民兵は、18歳から20歳までの間に、30ないし40日間の軍事訓練に参加しなければならない。専門技術を身につけた民兵の訓練期間は、実際の必要にもとづいて適当に延ばす。

予備役の兵士の軍事訓練は、民兵組織の中で行うか、あるいは単独に行っている。

予備役の将校は予備役に服している期間には、3ないし6カ月の軍事訓練に参加すべきである。

大学・高等専門学校と高校の学生は基本的な軍事訓練を受けなければならない。

五、 国防部

国防部は国務院の軍事部門である。その基本的職能は全国武装力の建設、たとえば人民武装力の募集、編制、装備、訓練、軍事科学研究および軍人の階級、給料などを統一的に管理している。

国防部の事務は解放軍本部機関によってそれぞれ処理されている。