南潯には古来、祭日や歳月に合わせて行ってきた慣習、行事がある。こうした古い風俗の内容は時代によって異なる。 ■端湯 女性は結婚後、一般に男性の家に住む。子どもが生まれる数ヵ月前になると、実家は衣服や物を娘に贈る準備を始める。これを「端湯」と呼ぶ。それぞれの実家が贈る物に大差はなく、黒砂糖やタマゴ、粉ミルクなどの栄養食品が主体。手製の子ども服やおしめなどを贈る家も。 ■三朝面 出産して三日目を「三朝」と言う。昔、庶民はこの日に「三朝面(麺)」を食べていた。実家は鶏肉や魚などを入れた麺を作って親戚や友人を歓待したり、隣人に送ったりしていた。 ■満月酒 出産して一カ月を「満月」と呼ぶ。実家は親戚や友人を招いて祝いの席を設ける。これを、満月酒を並べると言う。この日、生まれた子どもが初めて客人に紹介される。満月が過ぎると、母方のおじいさんが初めて子どもの髪にはさみを入れる。 ■拝師 昔は13、4歳の少年が、勉学または商売をするために師を拝する、つまり弟子入りする礼が盛んに行われていた。弟子入りするには推薦する親戚や友人が必要。師の許しを得た後に、紹介者が弟子を伴い、1対の蹄や赤蝋燭、礼金を携えて拝師の礼を行って初めて、師弟関係が成立する。期間は一般に3年で、それを過ぎると「満師」(弟子入りを終えた)と言う。 ■撑腰餻 旧暦の二月二日、農閑期が過ぎて春の耕作が近づくころになると、農村では米の粉で作った餅、「撑腰」と呼ぶ餻(餅)を食べる。「撑腰」とは、腰を強くして壮健にするという意味。農作業で腰を痛めないように、との願いが込められている。 ■お茶を飲む 南潯の人はお茶を飲む習慣がある。ことに郊外の壮年、老齢の農民の間に多い。真夜中に起きだして、何キロも道を歩き、暗闇の中を茶館に入って朝のお茶を楽しむ。世間話に耳を傾けたり、農業市況の情報を交わしたりしながら、持って来たニワトリやカモ、タマゴなどを傍らで売り、売ったお金で油や塩、しょう油、お酢、布地、幼子の好きなお菓子などを買って家に戻って行く。大きな茶館には「書場」(講談場)が設けられているところもあり、講談を聴きながらお茶を楽しめる。お菓子や果物、ウリの干し種を出す茶館などもあり、昔日の農村部の生活の様子を映している。 ■熏豆茶を飲む 熏豆茶は南潯人がことに好んで飲むお茶だ。いぶした豆に、お茶の葉や塩漬けしたミカンの皮、炒めた白ゴマ、塩からい干しダイコンなどを少量加え、お湯をかければ熏豆茶ができる。さっぱりした口当たりで、紅や緑、黄や白の色合いが実に鮮やか。春節には熏豆茶を出して客人に歓待する。 「チャイナネット」2006年6月
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