北京の伝統文化を味わうのに最適な場所の一つである茶館。著名な作家・老舎の戯曲『茶館』は、形を変え何十年にもわたって上演され続けてきたが、いまだにその人気は衰えず、昔の北京の伝統文化を集約しているといわれている。
この戯曲にちなんで作られた「老舎茶館」は、中国の茶道や民族芸術を紹介する場として内外にその名が知られ、米国のブッシュ元大統領や日本の海布俊樹元首相、タイのマハ―・ チャクリ・シリントーン王女も訪れたことがある。
明清時代の調度品、天井からぶら下がっている宮廷で使われた専用の提灯、竜井茶やウーロン茶などの銘茶の名前が刻まれた小さな木の札、壁に飾られた書画などを見ていると、まるで北京の民俗博物館のようだ。
「老舎茶館」の最大の特徴は、お茶を味わいながら中国の伝統芸術を楽しむことができる点。1988年に営業が始まって以来、漫才の馬三立や現代劇の名俳優・于是之、京韻大鼓(曲芸の一つ)の駱玉笙などもここで公演を行っており、今でも毎日、「北京琴書(曲芸の一種)」や「京韻大鼓」、「単弦(三味線の一種)」「河南墜子(河南省の曲芸)」などの伝統的な演目が上演されている。
また伝承が途絶えそうな、口の中でロウソクを燃やしながら歌う「含灯大鼓」や、2人の芸人のうち1人がその後ろに隠れて声を出す「双簧」など、珍しい民間芸術もこの場所で観賞でき、観客も琴の演奏や将棋、書道や水墨画、京劇などを体験することができる。