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林国本:中国も「三ちゃん」農業の時代か
発信時間: 2009-03-13 | チャイナネット

 

 

ひと昔前の高度成長期の日本では数多くの農村の若者が大都市に出稼ぎに行き、故郷には年老いた両親と妻を残すのみとなった。いわゆる「おじいちゃん」、「おばあちゃん」、「かあちゃん」の「三ちゃん」が故郷で農業を営んでいたのだ。

さいきん、三月八日の国際勤労婦人デーのテレビ番組で、キャスターが中国でも「三ちゃん農業」の時代に近づきつつある、と言っていた。食糧戦略、食糧安全ということが叫ばれる今日、はたしてこれで大丈夫なのだろうか、と懸念せざるをえない。

さいわい、中国独特のシステムが存在しているので、すこしぐらいの困難にぶつかっても、政府の宰配のもと、一挙に解決できるケースが多いので、筆者の懸念は杞憂かもしれぬが、友人のジャーナリストの話では、国民のかなりの人たちが栄養失調状態にある国もあるし、町を行けば物乞いがわんさとついてくる国もあるという。筆者も日本の新聞などでそういうことも知っているが、そこまでひどいとは思っていなかった。外交関係に配慮して国名を挙げないことにし、ご想像におまかせする。

ラッキーなことに、筆者は今日までのところ、脂肪の摂取が多すぎるとか、コーヒーや糖分を取りすぎることはよく気にしているが、カロリー不足の心配をしたことはない。しかし、宴会や友人との食事の際に、三分の一以上の料理にハシもつけずに残して帰る時には、内陸部の貧しい生活をしている人たちのことを思い、申し訳ないことだと反省している。筆者たちの世代はそういう教育を受けていたので、たしかにこれからは気をつけよう、と思っているが、筆者の子供たちの世代になると、そんなことは、いっさいお構いなしということ。自分のおカネを払って食べているのだ、なにもそこまで気兼ねすることもなかろう、というのだ。

まったくの私見ではあるが、政府がよく言っている耕地の最低ラインをあくまで守ることは非常に大切である。もし十三億の人口を抱える中国が、十億人分の食糧しか生産できなくなれば、今日のような繁栄を目にすることは不可能となろう。そして、社会不安が起こることになるかもしれない。中国の大発展を好ましく思っていない人たちにとっては、願ってもないことである。筆者は一介のジャーナリストとして、日本のかなりの雑誌に目を通している。なかでも、「正論」とか、「諸君」という雑誌は、利用しているデータそのものが陳腐化しており、有人宇宙飛行に成功し、オリンピックの主催にも成功し、これまで一部の国によって禁輸措置がとらわれていたスーパーコンピューター、NC工作機械も量産されるようになり、高速鉄道、地下鉄、高速道路もどんどん作れるようになった中国のことを、全然正確に捉えていないが、一部筆者は大学教授のような定職、定給のある身分でないので、絶えず「オオカミが来るぞ!」風の文章を書かざるをえない状況にあるのだと思われるが、八十年代のデータを書き続けていては説得力がなくなることになろう。しかし、こういう反面教材の言っていることも参考しておけば、中国は前進途上によこたわる問題をいっそう的確につかむことができるようになる。

中国は30年前から農家の生産責任制を実施し、農民の意欲を引き出してきた。その頃の農民は今やもう60歳近くなっている。新しいタイプの農民の育成、近代的な農業の育成など、課題はたくさんある。とくに、「お天道様頼り」の農業から脱却し、十三億の民を干害であろうと、豪雨に見舞われようと、ゆうゆうと食べさせていける農業を確立するために、農民の利益の確保を大前提としながら、農業インフラへの資金投入を大幅に増やしていくべきである。本当に「三ちゃん」農業になって十三億の食の問題は、大きなリスクを抱えることになる。筆者は農政の専門家ではないので、正しいかどうかわからないが、東北地区にあるような大機械化農業生産システムをいくつかってくることで、リスクをマネジメントすることも考えてみてはどうか。

日本のある評論家は、凶作などつづけて起きれば、中国では社会不安に陥る、というようなことをある対談で述べている。30年の改革・開放はスムーズにいったが、今やいつ底打ちするかわからぬ国際危機の中でいろいろ苦労している中国は、この際、これまでの成功に酔うのではなく、もう一度冷静に次の30年に取り組んでいくロード・マップについて考えてみてはどうだろうか。

 

「チャイナネット」 2009年3月13日

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