中国社会科学院日本研究所 盧昊
日本の新任の菅義偉首相はこのほど外交「デビュー」を果たし、ベトナムとインドネシアの2カ国を訪問しました。日本の新政権は、歴代政権の東南アジアという周辺外交の根拠地への重視を引き継ぐと同時に、感染症という背景を利用しASEAN諸国との戦略的な協力内容の拡大を試みています。さらにより主体的にASEANを日本の「インド太平洋ビジョン」に収めようとし、より大きな戦略的効果を発揮することを支持しようとしています。菅氏も「安倍外交」の基本路線を継承すると同時に模索・調整を開始し、徐々に自身の政策の特色と姿勢を示しています。
戦後日本の「アジア外交」の突破口は、東南アジアです。現在の国際的な変動において、日本は東南アジアを通じ周辺外交を強化し、全体的な対外戦略の需要をさらに満たそうとしています。ベトナムは今年、ASEAN議長国です。インドネシアはASEANの大国、ASEAN本部の所在地であり、ASEANで唯一のG20参加国です。両国はいずれも日本と密接かつ伝統的な関係を持っています。菅氏はこの2カ国を初の外遊先に選びましたが、これはASEAN重点国との連絡を優先し、「点から面へ」と対外戦略の影響力を強化する考慮を反映しています。
菅政権は対ASEAN外交の重視を維持すると同時に、感染症による国際協力の需要の変化を見据え、戦略的な協力内容を拡大し、ASEANの日本に対する利益依存関係を強めようとしています。特に発展途上国の医療衛生及び経済発展の援助、産業安全及びサプライチェーンの多元化をめぐる協力などに焦点を合わせています。また日本とASEANの軍事防衛などの協力もさらに顕著になっています。例えば日本とベトナムは武器装備品及び技術移転の実質的な協力協定を締結しており、日本とインドネシアの関連協定の協議も加速され、さらに日本とインドネシアの外相と防衛相の「2プラス2」会談を早急に再開します。日本側はさらに、上述したASEAN諸国と共に、東中国海、南中国海情勢に「共通の懸念」を示しました。
菅政権は経済・安保の両面から同時にASEAN重点国との戦略的協力を強化し、ASEANに対する全体的な政治的影響力を強めようとしています。またASEANの力を借り、安倍時代に形成されたASEAN中心の「インド太平洋ビジョン」を定着させ、促進しようと願っています。ところが安倍政権は日米印豪という4カ国の枠組みの強化を重視し、ASEANの役割については明確にしていませんでした。菅氏はインドネシアで、首脳外交を通じ、ASEANとの緊密な協力により「インド太平洋ビジョン」を推進すると表明しましたが、同時にこれは「インド太平洋版NATO」の創設ではないと念を押しました。これは日本が「インド太平洋ビジョン」の地政学的な機能を十分に利用・発揮し、外交戦略の多元化を促進しようとしていても、その対抗的な要素を過度に強化することで、日本を大国の駆け引きのリスクに陥らせるつもりはないということです。
アジアの地域協力は互恵・ウィンウィンの原則、ASEAN中心の開放・協力枠組みを貫くべきで、特定の国を排斥・けん制の対象とすべきではありません。この点について、日本の新政権が流れに順応し、建設的な周辺外交を通じ自国の外交の局面を切り開くと同時に、地域の平和・発展により力強い支持を提供することを願います。中日も地域秩序の構築及び実務協力をめぐり、より多くの対話と協調を展開するべきです。