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すべての家庭の幸のために--楊大文氏、婚姻法改正について語る
婚姻法の改正は離婚を制限するためなのか、そして新しい婚姻法は「愛人を囲うこと(内縁関係)」を処罰し、新しい時代の品行方正な男性を作り上げるためなのか。社会学者たちの懸念、マスコミの偏りぎみの報道によって、この重要な法律制定についての本当の意義はまだ人々によく理解されるに至っていない。3年間にわたって検討し続けてきた新しい婚姻法は2001年に公布されることになっているが、なぜ現行の婚姻法を改正しなければならないのか、改正のポイントはどこにあるのか。これらの問題について、民法と婚姻・家庭法の専門家、婚姻法起草グループのリーダーである楊大文教授はチャイナネットの要請に応じて次のように語った。

1950年の婚姻法について

1950年5月1日に公布、施行した『中華人民共和国婚姻法』は、新中国建国後の最初の基本法的法律であり、その公布と施行は全国範囲での婚姻・家庭制度の改革のスタートを示すものである。まず、婚姻法の公布、施行は偶然のことではないと言ってもよい。なぜかというと、一方では、これは建国後の婚姻・家庭制度改革の客観的必要であり、他方では、中国共産党の指導する革命政権は建国以前の革命根拠地で進められた婚姻・家庭についての法制建設で比較的豊富な経験を蓄積していたからである。

1950年の婚姻法の立法の目的は、封建主義の婚姻制度を廃止し、新民主主義の婚姻制度を実行し、社会主義の婚姻・家庭制度のために基礎を築き上げることにあった。

時間的に見れば、共産党の指導の下での婚姻・家庭の法律制定は国民党よりそれほど遅れてはいなかった。『中華ソビエト共和国婚姻条例』が1931年12月に、『中華ソビエト共和国婚姻法』が1934年にそれぞれ公布施行されている。抗日戦争と解放戦争の時期には、多くの地域的条例が公布施行された。例えば、『陝西・甘粛・寧夏辺境区婚姻条例』、『山西西北部地区婚姻暫定条例』、『晋察冀(山西・チャハル[現在の内蒙古・遼寧省にまたがっていた地域]・河北)地区婚姻条例』などがそれである。これらのすべては建国後の婚姻・家庭法制定のために重要な準備を整えるものであった。

1950年の婚姻法の公布施行後、婚姻・家庭制度の改革が全国的範囲で深く、そして幅広く押し進められた。1953年に進められた婚姻法実施の活動を通じて、婚姻・家庭制度をめぐっての反封建主義闘争は決定的な勝利を勝ち取った。この婚姻法はかなり綱領的なものであり、極めて大きな歴史的役割を果たしはしたが、内容としてはあまりにも原則的で、具体性が足りないため、よりはやく改正すべきだったと思われる。

1980年の婚姻法について

「文化革命」と呼ばれているあの10年(1966――1976年)の大災禍の中で、婚姻・家庭法制が破壊を被ったため、すでに打破されたいくつかの旧習がまたその機に乗じて台頭した。1980年9月10日に開かれた第5回全国人民代表大会第3回会議では、現行の『中華人民共和国婚姻法』が採択され、1981年1月1日から現在まで20年間にわたって実行されてきた。

1980年に制定した婚姻法は1950年に制定した婚姻法に対しいくつかの重要な改正と補足を行い、わが国の婚姻・家庭制度の健全な発展の上でかなり積極的な役割を果たした。しかし、この法律そのものについて言えば、やはり完ぺきの域に達していないことをも見て取らなければならない。20年来、わが国の社会生活と人々の婚姻・家庭生活には非常に大きな変化が生じ、多くの新たな情況や問題が現われてきた。50年代の婚姻法は建国前に革命根拠地で進められた婚姻・家庭法律の制定についての経験を総括したものであり、もちろんそれをさらに発展させたところもあった。80年代の婚姻法の改正と補足の部分はあまり多くはなかった。新しい世紀の婚姻・家庭関係を全面的に調整し、公民の婚姻・家庭の権益をより効果的に保護し、社会の細胞としての婚姻・家庭の積極的な役割を発揮させ、社会の文明と進歩を促進するため、関連制度を充実させ、法律制定の空白を埋めるとともに、立ち遅れている規定を改正しなければならなくなったのである。

現行の婚姻法の改正過程について

早くも1990年に、わが国の法曹界は現行の婚姻法の改正を社会に呼びかけた。その年は1950年の婚姻法の公布施行40周年、1980年の婚姻法の公布10周年にあたる年であった。人民出版社出版の『現代中国の婚姻・家庭問題』という本の中で、法曹界の婚姻・家庭制度を充実させるという提案が打ち出された。その後、中国法学会婚姻法学会はこれを内容とする研究テーマを引き受け、全国人民代表大会内務司法委員会は最高人民法院、中華全国婦女連合会、民政部、国家計画出産委員会などの関係部門、及び学界の一部関係者を招いて婚姻法の改正についての討論会を開いた。1994年と1995年において、一部の全国人民代表大会代表と全国政治協商会議委員は婚姻法改正についての提案と議案を提出した。1995年には、内務司法委員会は全国的範囲で婚姻法の法律執行状況についての点検を行うと同時に、各地の婚姻法改正についての意見を求めた。1995年10月に開かれた第8回全国人民代表大会常務委員会第16回会議では、内務司法委員会はその提案の審査報告の中で、婚姻法の改正案を認可し、婚姻法の改正案を補足案として第8回全国人民代表大会の法律制定計画に組み入れ、1996年には婚姻法改正指導者グループを発足させ、1997年には起草作業に着手し、また作成後の草案を全国人民代表大会常務委員会法律工作委員会に提出した。先般、法律工作委員会の提出した婚姻法改正案はすでに第9回全国人民代表大会常務委員会第18回会議によって一回目の審議を経た。

婚姻法改正活動の重点とホットスポットについては、法学者の主張する法律制定の重点と社会の各界に幅広く関心が持たれるホットスポットとは、一致したところもあれば、一致しないところもあった。それについて簡単に説明しておきたい。

親族制度の通則的規定について

 現行の婚姻法の中には親族制度の通則的規定は書き入れられていない。わが国の法律のほとんどには親族の事項に関連する規定がある。例えば、親族の種類、法律によって調整される親族関係の範囲、親等についての認知の方法などがそれである。これらの通則的問題について規定を設けないと、法律施行の中で解決しにくい問題がたくさん起こりかねない。現在、わが国の関連法律の親族についての規定はまだ統一されていない。例えば、1978年の刑事訴訟法では、「本法で言われるところの近親とは、夫妻、父母子女、同胞の兄弟を指す」としているが、民法通則と関係司法で言われるところの近親の範囲は上述の規定の範囲を超えるものである。また、婚姻法では、直系親族または三親等内の傍系親族の場合は結婚を禁止することを規定している。これについて、中国においては直系姻戚関係の結婚は認められるかどうかという質問を出した外国人もいる。この問題は法律面から明確な回答すべきである。

無効婚姻制度について

 無効婚姻とは婚姻の成立に必要な法的手続きが欠ける違法の結合である。現行の婚姻法は結婚する条件と手続きのみを規定しており、当事者がこれらの条件と手続きに背いて、夫婦の名義で結びつくことによってもたらされる結果については相応の法的規定がない。無効婚姻は婚姻としての法的効力を持たないため、離婚の問題は存在しないはずである。例えば、現行の婚姻法の第4条によれば、男女双方の自由意志による婚姻でなければ無効婚姻とされるため、もしこの無効婚姻とされるべき婚姻を離婚の手続きに基づいて処理するならば、法律に背き、婚姻法の権威性と厳粛性を損なうこととなろう。これは違法の結合も合法的で、有効婚姻と黙認することとなる。婚姻が成立した後、終止方式は二種類しかない。一つは配偶者が死亡した場合、もう一つは離婚を通じて法により婚姻関係を解除した場合である。離婚は配偶者が生存期間中に婚姻関係を解除する法的手段であり、無効婚姻は「離婚」にはならない。指摘しておかねばならないのは、無効婚姻には夫婦の権利と義務についての規定が適用されないことである。もし、当事者が子女をもうけた場合は、父母と子女との関係は父母の婚姻が無効になることによって消失することはない。今回の婚姻法の改正を通じて無効婚姻に関する制度を追加することによって、わが国の婚姻制度はより完ぺきなものになるだろう。

夫婦財産制度について

夫婦財産制度の改正は今回の婚姻法改正の重点の一つである。夫婦の財産をめぐっての約束についての規定は以前よりもっと具体的になるはずである。夫婦財産制は結婚後の双方の財産の帰属とかかわりがあり、占有、使用、管理、収益及び婚姻終止時の財産清算、夫婦の対外財産の責任などの問題が含まれている。社会主義市場経済の環境の下で、夫婦財産制を充実させることは、夫婦双方の財産権益の必要を保護するためだけではなく、社会における取引の安全を保障するためでもある。

現行の婚姻法を起草する際、当時の夫婦財産関係は比較的簡単だったため、わずか一つの条項しか設けなかった。つまり、夫婦が婚姻関係存続中に得た財産は、夫婦の共有に属するものである。双方の間で別に約束がある場合はこの限りでない。夫婦は、共有する財産に対し、平等の処分権を有する。約束についての条項を追加したのは、国際結婚、華僑の結婚及び老人年寄りの再婚などいくつかの特殊な情況を考慮に入れたからである。20年以来、社会の財産関係と夫婦の財産関係はますます複雑になり、家庭の経済の機能がいくらか強まり、農民の家庭は生産量連動請負責任制を実行する生産、経営部門となり、また数多くの都市と農村の個人経営者と私営企業などが現われた。さまざまな家庭の異なる必要に適応するため、一定の選択権を当事者に与えるべきである。夫婦間では財産について約束することもできる。もちろん、この約束は必ず合法的でなければならないし、この約束を利用して第三者の権益を侵害してはならない。このような約束は夫婦財産制の適用より優先されるものである。約束がある場合は約束にしたがって処理し、約束がない場合はもちろん法定の夫婦財産制度を適用する。夫婦の財産関係は多くのルートを通じて社会のその他の分野の財産とあれこれの関係がある。例えば、生産、経営、債権、債務、共同経営などがそれである。借金がある場合、夫婦一方の財産で返済するか、それとも夫婦共有の財産で返済するかは、夫婦の財産を根拠にしなければならない。そのため、法曹界は夫婦の財産をめぐっての約束、特に約束の法的効力の問題について、より具体的な規定を設けるべきだと提案している。

離婚の法的理由の具体化について

今回の離婚条項に対する改正は、主に離婚の法的理由を具体化し、それに一定の操作可能性を持たせるためである。もちろん、ここで言われているのは訴訟手続の離婚であって、双方の合意による登録離婚ではない。これは離婚を難しくするだけであると言う人もいるが、これは誤解である。現行の婚姻法では、夫婦の感情に亀裂が生じ、調停しても効果がない場合は、離婚を認めなければならないと規定しているが、この規定はあまりにも原則的で、大雑把である。どのようにして夫婦の感情に確かに亀裂が生じたと認定するのか。最高人民法院は1989年にこれについて司法解釈を行ったが、その中に列挙されたいくつかのケースは、実際には婚姻無効が原因となるものであった。今回の改正を通じて、いくつかの具体的な状況を列挙して、夫婦の感情に確かに亀裂が生じた客観的外在基準にすることは、離婚理由の原則的規定を正しく適用することにプラスとなり、離婚の自由を保障し、軽率な離婚を防ぐことにもプラスとなる。「別居2年以上」を感情に確かに亀裂が生じた根拠にすることは、離婚を難しくするものであると考える学者も一部にはいるが、実は、双方は同居する条件があるにもかかわらず、感情に亀裂が生じたため2年以上別居している場合は、ただ感情に亀裂が生じた根拠の一つに過ぎず、すべての当事者は2年以上別居してはじめて離婚できることではない。例えば、相手に虐待されたり、遺棄されたり、あるいはその他の理由で離婚を要求する場合、なぜ別居2年以上でなければならないのか。

一方、離婚の法的理由の具体化は離婚率の上昇を招く恐れがあると考えている人もいれば、また、離婚率の上昇を懸念するあまりに、離婚の難度を高めることを望んでいる人もいる。私たちはこの20年来絶えず上昇している離婚率に対しあまりにも消極的な評価を行うべきではなく、離婚率のいかんと婚姻の質との関係に対して科学的かつ客観的な分析を行うべきである。中国の封建社会の時代の離婚率はかなり低かったが、その時の婚姻の質が高かったと言うことができるか。わが国では、離婚問題の主流は比較的健全であり、離婚率が上昇した主な原因は、社会生活と婚姻・家庭生活の変化、社会の価値観の変化につれて、人々の婚姻に対する期待感が彼らの父母の世代、祖父母の世代より高いものとなったためである。以前の低い離婚率は決して婚姻の高い質の裏付けにはならず、現在の婚姻の質は明らかに以前より高い。一部の人の婚姻に対する不道徳が、確かに離婚の一因になっているが、それによってすべてを否定することはできない。重要なのは教育、広報、法整備などを通じて、婚姻の基礎と結婚後の結婚生活の調整を強化することにより、社会全体の婚姻の質を高め、離婚率の過度な上昇を防ぐことである。人為的に法律で離婚の難しさを高めることは何の役にも立たない。離婚率を60、70年代のレベルに下げることはだれもができないのである。

わが国の婚姻状況はいま現在依然として世界で最も安定した国の一つである。離婚率の増大という問題を大げさに語るべきではない。離婚率はわが国にとってとくに深刻な社会問題ではない。離婚の法的理由の具体化は、主に離婚をよりよく原則的規定に適用させるためであり、離婚の難しさを高めるためでもなければ、離婚の基準をゆるめるためでもない。

重婚について

重婚は婚姻法改正の作業の中で最も注目されている問題の一つである。一夫一妻制の原則を守るため、重婚やその他の一夫一妻制に違反する行為を禁止すべきである。重婚とは、配偶者がいるのに他のものと結婚すること、あるいは相手に配偶者がいることをはっきりと知りながらもその人と結婚することを指す。司法解釈によると、配偶者がいるのに他のものと夫婦の名義で同棲することも重婚になる。この問題については、婚姻法は刑法の関連規定からはみだすことが不可能であるが、手続きと民事結果の面からさらなる具体的な規定をいくつか設けてもよい。例えば、重婚については公訴することもできるし、自訴することもできること、相手の重婚を離婚の理由にすること、重婚がゆえに離婚に至った場合、過失のない側は慰謝料を要求する権利があることなどである。

重婚についての解釈には、配偶者のいる者が他のものと夫婦の名義で同居してはいないが、実は半年以上同居している、あるいは子供をもうけた場合は重婚と見なすべきだという主張もある。私はこの意見に賛成できない。もし、重婚の問題が日増しに深刻になり、厳しく取り締まる必要があると思うなら、むしろ配偶者のいる者が他のものと不法同棲するという不法同棲罪を刑法に書き入れるほうがよい。不法同棲を重婚と混同してはならない。 

高齢者の婚姻保護について

平均想定寿命の延長と婚姻をめっぐての意識の変化に伴って、高齢者の再婚件数が以前よりはるかに多くなった。現在、都市部においては子女の結婚に干渉する親はあまり多くないのに対し、親の再婚に干渉する子女は少なくない。その原因を究めると、親の再婚に干渉するのは主に財産問題と絡むことにある。婚姻法には、子女が親の再婚と再婚後の生活に干渉することは許されない、子女の扶養義務は親の婚姻関係の変化によって消失しないとされるべきである。もちろん、これについてはそれぞれ異なった意見もある。例えば、総則には婚姻の自由に干渉することは許されないとあるのだから、親が子女の婚姻の自由に干渉することは許されないという条項を書き入れる必要はないと考えている人もいる。

家庭内暴力について

現行の婚姻法の中にも家庭を構成するものの間の虐待を禁止するという規定がある。今回、家庭内暴力を禁じるという規定についての改正、追加は非常に必要なことである。このような現象は客観的に存在しているため、法律の上で対策を制定することが必要である。わが国は国連の『女子に対する不平等差別撤廃公約』の最初の締約国の一つであり、家庭内暴力を禁じるのはわが国の履行すべき条約的義務である。この面の規定を追加することには国際化する意味もある。もちろん、婚姻法はこれに対して比較的原則的な規定しかできず、民法の角度からいくつかの法定の救済方法を規定することしかできない。刑事責任と行政処罰の面の問題については、関連の法律に基づいて処理すべきである。

第三者について

第三者とは正確な法律概念ではない。婚姻法の中ではそのために条項を設ける必要はない。第三者はそれが違反した法律によって相応の規定により法律の責任を追及され、例えば、第三者が被害者に対して人身傷害、誹謗行為などがある場合、その第三者としての身分によって法律の制裁を加えられるわけではない。この問題では法律と道徳の限界をはっきりさせるべきだ。

いかにして婚姻・家庭の法律制定を充実させるかという問題については、異なる構想と方案がある。私は、婚姻・家庭分野に存在している実際的な問題を考慮する必要もあれば、制度の確立に力を入れて、さまざまな具体的な制度に整合性、系統性、科学性、先取性を持たせる必要もあると考える。今回の改正は、婚姻・家庭の法律制定を充実させるために必要な過渡的措置であり、婚姻・家庭関係の法律調整を強化する上で非常に重要な意義を持っている。民法の法典化が実現したあかつきには、わが国の婚姻・家庭についての法制はきっと完ぺきなものになろう。

 「チャイナネット」2001年2月19日

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