中国国務院新聞弁公室は10月15日、「中国の農村貧困対策」と題する白書を発表し、20世紀70年代末いらい、貧困人口の衣食の問題を解決するため中国政府の実施してきた貧困対策計画の進展を振り返り、21世紀初頭において中国の農村貧困対策が直面しているチャンスとチャレンジについて分析した。
白書の全文は約2万の漢字からなり、貧困対策の経緯と成果、貧困対策の政策による保障、貧困対策の主な内容と道筋、特殊貧困層の貧困対策、21世紀初頭の農村貧困対策といった五つの部分からなっている。
白書の要旨は次のとおりである。
中国は世界最大の発展途上国であり、これまでのかなり長期間、さまざまな原因によって貧困問題は中国にとってずっと頭の痛い問題であった。
1949年の新中国成立後、とりわけ改革・開放後の20年余このかた、中国政府は全国的範囲で、貧困人口の衣食の問題の解決を主要目標とする、組織的かつ大規模な貧困対策を実施してきた。
家庭請負経営制度に端を発した体制改革によって促進された貧困対策、大掛かりな開発的貧困対策、貧困対策の難関攻略といった三段階のたゆまぬ努力を経て、中国の農村における衣食問題が未解決の貧困人口は、1978年の2億5000万人から昨年の3,000万人まで減り、農村総人口に占める貧困人口の比率も30.7%から3%まで下がった。20世紀末までに農村人口の衣食問題を解決するという中国政府の戦略目標はほぼ実現された。
貧困地区のインフラが整備されておらず、人口の増加が速すぎ、教育・医療衛生などの基本的な社会サービスのレベルが低く、農業生産の条件が悪く、財政収入のレベルが低いなどの問題に鑑み、中国政府は国情にかなった貧困対策の政策を制定した。例えば、貧困の基準を定め、国が重点的に助成する貧しい省を確定し、貧困対策の重点を中西部地区に傾斜するなどがそれである。また、西部地区の発展を促し、地区間の発展レベルのギャップを縮小するため、中国政府は西部大開発の戦略も実施し始めた。
20年このかた、中国政府は貧困対策への資金投下を絶えず増やし、貧困対策の専用資金を合計1,680億元余拠出し、貧困地区と貧困農村世帯の貧困脱出のために、貧困地区に対する財政移転交付の度合いを強めるなどの優遇政策を制定した。そのほか、中国政府は貧困対策のなかで、村レベルの組織の建設を強化し、村委員会の直接選挙制度の普及に力を入れ、農家自体の組織の度合いを高め、農家が積極的に貧困対策に参加するよう導くなどが強調している。
開発的貧困対策は、従来の分散的貧困対策に対する改革と調整である。中国政府は、経済の発展を中心とすることを堅持し、貧困地区が生産条件を改善し、地元の資源を開発し、商品生産を発展させ、自らの備蓄、発展の能力を強めることを助成し、奨励している。
それと同時に、中国政府は世界の貧困対策の経験を取り入れ、小口融資を積極的に貧困世帯に提供している。1999年末までに、全国での投下資金総額は30億元に上り、240万世代余の農村貧困世帯をカバーするものであった。
貧困地区の貧困脱出の能力を強めるため、中国政府は科学・技術・教育による貧困対策を重視し、専用資金を調達し、科学・技術の伝授、優良品種と進んだ実用技術の導入、テストケース、モデルづくり、普及などに用いている。また、1995年から「国家貧困地区義務教育プロジェクト」を実施し、該当地区で九年間の義務教育の普及を助成するために100億元以上の資金を注ぎ込んだ。
貧困対策の過程で、中国は更に、東部の比較的発達した省(直轄市)が西部地区の省(自治区)をワン・ツー・ワンの形で支援する方式を取り、西部貧困地区の貧困脱出のペースを速めた。ここ数年、東部と西部の間でプロジェクト契約書が5745件結ばれ、契約ベース投資額は280億元を上回り、実際投資額は40億元余に達した。なお、西部地区で1,400ヶ所の小学校の校舎を新築または改築し、貧しくて学校に入れなかった約4万人の児童を入学させた。
20世紀90年代に入ってから、中国政府は貧困対策の分野で国際組織との協力関係を絶えず拡大している。そのうち、中国ともっとも早くから協力を行い、資金投下のもっとも多い世界銀行の中国に対する貧困対策融資プロジェクトは、9つの省(自治区)と800万人余の貧困人口をカバーし、援助総額は6億1,000ドルに上る。
少数民族、身体障害者と女性は、中国の農村貧困人口のなかの特殊貧困層である。そのため、中国政府は貧困対策にあたって、政策や措置などの面での重点への傾斜や特別な配慮をしてきた。
1994年から2000年にかけて、全国の貧困対策資金の38.4%は内蒙古、広西、チベット、寧夏と新疆など五つの少数民族自治区と少数民族人口の多い雲南、貴州、青海の三つの西部の省に投じられ、総額は432億5300万元に達する。統計によると、この八つの省(自治区)の貧困人口は、1995年の2,086万人から1999年の1185万人に減り、4年間で901万人も減少し、貧困発生率も15.6%から8.7%に下がった。この八つの省(自治区)にある232の国の貧困対策重点県では、農民一人あたりの収入は1995年の630元から1998年の1189元へと88.7%も増えた。長期にわたって続いてきたチベットの農村・牧畜地区の貧困状況に根本的な変化が生じ、貧困人口は20世紀90年代初期の48万人から現在の約7万人まで減った。
現在、中国には6,000万人余の身体障害者がいる。そのうちの80%は農村部に暮らしている。そしてかなり多くの人々が貧しい生活を送っている。中国政府は、障害者への貧困対策を国の貧困対策計画の重要な内容とし、リハビリ・貧困対策の専門貸付金を作り、貧困障害者を扶助するとともに、末端の障害者連合会による貧困対策サービス・システムの構築に取り組み、農村の障害者にタイムリーかつ効果的なサービスを提供している。
ここ10年間に、1,000万人の貧困障害者の衣食の問題が解決された。昨年末までに、貧困障害者の数は979万人に減った。
中国政府は農村の女性の貧困脱出問題も非常に重視している。全国婦女連合会は、貧困対策の出先機関を設立し、扶助対象を特定し、知識・技術のトレーニングを行い、貧困地区の女性たちを組織して輸出志向の商品加工に参加させ、女性の貧困脱出のためのプロジェクトを実施するなどの形を取って、合計347万人の貧困女性を貧困から脱出させ、豊かになる道へと導いた。
貧困の緩和と一掃は、今後においても相変わらず中国の長期にわたる歴史的課題である。21世紀初頭の中国の農村貧困対策は、得難い歴史のチャンスに恵まれながら、厳しいチャレンジと深刻な問題にも直面している。
この20年余の貧困対策によって築かれた基礎と積み上げられた経験、今後の経済の持続的成長、経済構造の調整、西部大開発戦略の実施、対外開放のよりいっそうの拡大などは、いずれも貧困地区に新たな発展の機会をもたらすことになろう。
しかし、中国の貧困対策は今世紀の初頭において次のような課題も抱えている。貧困対策の基準のレベルがまだ低い。いったん衣食問題が解決された貧困人たちも、さまざまな要因の制約を受けて、再び貧困状態に舞い戻りしがちな脆弱性がある。貧困地区の立ち遅れた社会、経済と文化の状況はまだ抜本的に改善されていない。膨大な人口の基数による就業の圧力は貧困人口の就業にも響き、一部の貧困対策措置は功を奏しがたい、などがそれである。
中国政府は引き続き、衣食問題がまだ解決されていない貧困人口を貧困対策の主要対象としていく。今後10年間の貧困対策の重点は、貧困人口の集中している中西部の少数民族地区、もと革命根拠地であった地域、国境地区および特に困難な地区である。全般的目標は、極少数の貧困人口の衣食問題をできるだけ早く解決し、貧困地区の基本的な生産・生活の条件を更に改善し、衣食問題解決の成果を固め、貧困人口の生活の質と全体的な資質を高め、農村貧困地区のインフラ整備を強化し、自然環境を改善し、貧困地区の社会・経済・文化の立ち遅れた状況を徐々に変え、まずまずのレベルの生活に達するための条件をつくることである。
「チャイナネット」 2001年10月16日