西暦の毎年2月18日前後は雨水の節気である。雨水については、「斗が壬を指すことが雨水であり、東風が凍を解して、氷と雪が全て解けて水になり、変化して雨になり、そのために、雨水と呼ばれる」。雨水は降雨のはじまりを示すだけでなく、降水量が増え始めることを示している。
雨水の節気の到来に従い、雪が降りしきり、寒気が骨にしみる天気はだんだん消えて去っていき、春風が頬をなで、氷と雪が解けて、湿っぽい空気、ぽかぽかとした日射し、しとしとと降る小雨の日が訪れてくる。杜甫の詩に「好雨時節を知り、春に当たって乃ち発生す。風に随って潜かに夜に入り、物を潤して細にして声無し」(春夜雨を喜ぶ)という二句がある。詩人は春は万物が芽生え、生長する季節であることを端的に表現し、降水を必要とする時に、それが訪れ、この春雨は暖かい風を伴って、夜のとばりが訪れる時に、しとしとと、音もなく、ぱらぱらと降って万物を潤している、としているのである。詩人は擬人的手法で、雨を擬人化し、それを「時節を知る」ように客観の必要を満たすことを知ると言っているのである。春には万物が芽生え、生長する春の季節の降水を必要としている時に、雨が降り始めるわけだ。「好」という字は、「雨」を賛美するだけでなく、同時に助けなければならない人のために恵みの雨を届けた人たちをたたえているのである。詩人はこのような「好雨」を待ち望み、このような「好雨」が好きなのであった。
人々が常に言っているように、「立春になると天気がだんだん暖かくなり、雨水になると肥料運びで忙しくなる」。一年の計は春にあり、春季がどうであるかは、雨水を見るべきである。農民にとって、雨水はまさに小春は農作業の手順をつけ、大春は耕作の支度をする重要な時であり、われわれの生活も新しい望みに満ちるわけである。
雨水の節気の自然界に対する影響に基づいて、養生篇の中で私は雨水の節気に「脾臓、胃を保養する」重要性を重点的に強調することと結び付けている。脾臓、胃は「後天的にそなわった本」で、「血、気の発生変化の源」であり、脾臓、胃の強弱は人が長生きするか若死するかを決定する重要な要素だと漢方医は考えているからである。明代の医家張景岳は、「土の気は万物の源であり、胃の気は養生の主である。胃が強ければ強くなり、胃が弱ければ弱くなり、胃があれば生きており、胃がなければ死んでおり、養生家であれば脾臓、胃を重視しなければならない」。(五行と五臓の関係の中で、五行の中の土は五臓の中の脾臓に対応する)「図書篇・臓気臓徳」は、「脾臓を保養すれば、気を養い、気を養うことは、養生のかなめである」と指摘した。これから見ても分かるように、脾臓、胃の健康は人々の健康・長寿の基礎である。
春の肝臓(木)はどうして脾臓(土)と関係があるか。五行の学説は中医学の応用の中で、五行の特性で人体の五臓の生理機能を説明する。肝臓は木に属し、木の性は曲げてもまっすぐにしてもよく、順調で円滑で、発生の特性があり、したがって肝臓は順調を好み、鬱憤をきらい、疎通・排泄の機能がある。脾臓(胃)は土に属し、土の性は重厚で、万物を発生変化させる特性があり、脾臓は水と穀物を消化し、精微を運び、五臓、六腑、四肢、体に栄養をあたえる効果があり、「気、血の発生変化の源」となっている。その五臓は生理の面で互いにつながり、病理の面で互いに影響し合っている。五行の相生相克の関係の変化の中で、木が盛んになれば土に乗じ、つまり肝臓(木)が盛んになりすぎれば脾臓(土)に克ち、つまり肝臓(木)の疎通・排泄がオーバーになるため、脾臓、胃はそのために気が虚となし、もしかんしゃくが鬱積しすぎれば、脾臓、胃はそのために気がとどこおり、両者はすべて肝臓(木)が脾臓(土)に克つことになる。「難経」は「逆転」と称し、つまり肝の病気は脾臓に伝わる。したがって、春季の養生の中で春季の陽気の発生の特徴に意をくばり、陽気も助ければ、脾臓、胃を傷つけることも免れるようにしなければならない。
中医学は脾臓、胃を「水、穀物の海」と呼び、気、血のめぐりをよくする機能がある。人体の機能の物質的基礎、栄養、気、血、唾液、精髄などは、脾臓、胃に化生し、脾臓、胃は元気旺盛で、源が十分で、臓腑の機能が盛んになることができる。脾臓、胃は体の運動の中枢でもあり、脾臓、胃が調和すれば、体の新陳代謝を促進、調節し、生命活動のバランスを保つことができる。体の元の気は健康の本であり、脾臓、胃は元の気の本である。元代の著名な医家李東垣は、脾臓、胃が傷つけば元の気が衰え、元の気が衰えるならば人の寿命が縮まるという観点を打ち出した。彼の「脾胃論」の中で、「真の気は元の気とも呼ばれ、体の生む精気で、胃の気がなければ補給することができなくなり」、「脾臓、胃に障害が生じるならば、さまざまな病気にかかる」と指摘した。脾臓、胃の虚弱がさまざまな病気を誘発する主な原因であることを物語っている。
「本草衍義総論」は、「養生に長じた者はその内を養い、養生に長じていない者はその外を養う。外を養う者は実に外で、気持ち、喜び、貪欲、容貌、情をつとめとする、外が実であれば内が虚であることを知らないのである。内を養うことに長じた者は、臓腑を安定させ、三焦はそれぞれその位を守り、飲食は常に適する」と書いている。これから見ても分かるように、脾臓、胃は生命の本、健康の本であり、歴代の医家、養生家は脾臓、胃の保養を重視している。近代医学の実験が立証しているように、脾臓、胃を保養すれば体の免疫機能を効果的に高め、老化を予防することができる。
脾臓、胃を保養する具体的な方法はみずからの情況に基づいて飲食の調節、薬物の養生、日常生活の調節を選択的に行うことである。
飲食の調節 春季の気候が暖かくなり、風が多くなり、物が乾燥し、しばしば皮膚、口、舌が乾燥し、唇は乾いて裂ける現象が現れ、そのために、新鮮な野菜、果物を多く摂取し、体の水分を補充すべきである。春季は万物の発生のはじまりであるため、陽気が発生する季節に、脂っこい物の摂取は少なめにすべきで、陽の外への排泄を避け、さもなければ肝臓(木)の発生がオーバーとなり、脾臓(土)を傷つけることになる。唐代の養生学者孫思繝は「千金方」の中で、「春は72日で、酸を省いて甘を増やし、それによって脾臓の気を養う」と書いた。五行の中で肝臓は木に属し、味は酸で、脾臓は土に属し、味は甘で、木は土に勝つ。そのため、春季の飲食は酸味を少なめにすべきで、甘味を多く取り、それによって脾臓の気を養う。ニラ、香椿、ユリ、エンドウの若葉と茎、シュンギク、ナズナ、春のタケノコ、ヤマイモ、レンコン、サトイモ、ダイコン、クログワイ、サトウキビを選ぶことができる。
「大金月令」 「正月はかゆを食べなければならず、……第一は地黄のかゆを食べて、腎臓を補う。(新鮮な地黄150グラム、汁をとって必要に備え、うるち米50グラムをきれいに洗って、氷砂糖を適量ナベに入れて、適量の水を加え、かゆ状になってから、新鮮な地黄の汁をかゆの中に入れて、とろ火で20分煮るとよい)。第二は防風のかゆを食べ、四肢の風を取り除くことである。防風一人分を取って、煎じて汁を取ってかゆを煮る。第三はシソのかゆを食べることで、シソの一人分を取って、淡黄色になるまで煮て、少し香りが立つ時に、汁でかゆを煮る」。生ものや冷たいもの、様々な食品を少なめに取り、脾臓、胃が傷つくことを防ぐ。
薬物の養生 脾臓、胃の昇降変化の機能を念頭に置くべきで、陽気を発生させる方法を使って、脾臓、胃を保養し、補う。沙参、西洋ニンジン、決名子、白いキクの花、何首烏の粉末および補中益気湯などを選ぶことができる。
精神の保養 「およそ憤怒、悲しみ、考えすぎ、恐怖感は、元の気を傷つける」ことになり、そのため、精神保養の面で心を静めて寡欲であることに努め、働きすぎないようにして、元の気を養う。
日常生活の労働と休息の保養 日常生活は正常を保ち、労働と休息を結び付ける。つまり自然に順応し、体が自然の変化の法則に従うことに努め、生命のプロセスのリズムを時間、空間、四季の気候の変化に従って調整し、脾臓、胃を丈夫にし、後天的に養われた本を保ち、寿命を延ばす目的を達する。
食あたりになりやすいもの 正月にはヒツジの肉、イヌの肉、スズメの肉を食べず、生ネギ、ニンニクを食べてはならず、落花生は煮たもののほうがよい。