劉徳有:中日関係の発展についてのいくつかの考え方
今後、どのようにして中日関係を発展させるかについて、私は次のことを考えている。

1、中日関係の原点である「中日共同声明」「中日平和友好条約」と「中日共同宣言」を守ることが肝要である。この3つの文書は中日関係の基本であり、歴史問題に対する認識と台湾問題に対する原則を明確に規定している。これらはいずれも中日関係の重要な政治的基礎であり、必ず確実に守られなければならない。私は、最も重要なのは信義を守り、中日関係のもととなるものを堅持し、実際の行動によって、両国関係の回復と発展にプラスとなるよい雰囲気と条件を整えることであると思う。

2、新しい世紀に向かって、平和と発展のための友好協力パートナーシップの確立という目標を構築し、一貫してこれを堅持すること。これは両国の指導者が共通の認識をもって確定した戦略的目標である。これは当面の世界の時代的特徴を反映すると同時に、中日両国の関係の全般的な方向を確定するものである。このスローガンのキーワードは平和、発展、友好、協力で、その中で最も重要なのは平和である。新中国成立後、中国は一貫して独立自主の平和外交政策を実行してきた。中国は全世界に向かって平和共存五原則を断固順守し、永遠に覇権を求めることはないと何度も厳かに表明してきた。現在はもちろん、将来も中国はいかなるものにたいしても脅威となることはない。日本は戦後の50余年に、曲折があったにもかかわらず、平和と発展の道を歩んできた。われわれは日本が今後のアジアと世界の歴史の過程において引き続き平和と発展の道を歩むよう望んでいる。

3、中日の経済貿易協力を大いに発展させる

歴史が立証しているように、中日両国は対立するよりも協調と協力するほうがよい。経済の協力は双方に役立つ。

中日経済貿易協力は中国の社会主義現代化建設に対し積極的な役割を果たしている。中日経済貿易協力の中で、日本の貿易黒字は累計2800億ドルに達し、同期の日本対中投資をはるかに上回った。事実、70年代から、中国はずっと日本が貿易によるメリットを獲得する最大の市場の一つとなっている。ある意味から言えば、ほかでもなく、まさに経済協力があるゆえに、中日関係は回復不可能になるまで悪化しないのである。ここからも、経済協力が重要であることが分かる。

21世紀の中日関係を展望すれば、その主旋律は経済協力関係であるべきだ。中日両国は密接な経済協力関係を打ち立てるにあたり、いくつかの障害が存在しているが、われわれはむしろその巨大な潜在力と可能性をもたらす面を見るほうがよい。中日両国の間では、資源、資金、技術市場などの分野においてかなり大きな相互補完性と互恵性が見られる。ハイテクと環境保全などのグローバルな問題においても、両国は協力をいっそう強化すべきである。小泉首相は先般、李鵬委員長に次のように語った。日中両国の経済にはそれぞれの優位性があり、互いに補完し合うことができる。特に中国がWTOに加盟してから、今後はさらに高いレベル、幅広い分野で協力を強化し、共同発展、互恵と相互補完を実現し、双方にメリットになるべきである。日中両国の発展はアジアひいては世界経済の発展に積極的な役割を果たすことになる。

現在、中国は西部大開発戦略を打ち出している。これは21世紀の中日間の経済協力により広い分野を提供するものである。中国の西部地区は土地が広く、末開発のところが多くある。西部は資源が豊富で、労働力が安いが、沿海地区と比べて経済的基礎が軟弱であるため、各方面の経済協力を展開する潜在的可能性はかなり大きい。日本は国土開発と地域総合開発の面で多くの成功の経験を積み重ねており、中国の西部開発に対し自らの貢献をすることができる。

4、文化交流を積極的に展開

私は、重要なのは中日両国人民の相互理解と相互信頼を深めることだと思っている。文化交流は心と心の交流であり、両国人民が心の中に友好と相互理解の懸け橋をつくる重要なルートでもある。文化交流の役割は、今日を見るだけでなく、明日と明後日をも見るべきである。

30年来、中日両国の文化交流は急速な発展をとげ、民間および政府間のさまざまなルート、レベル、形をもつ新たな局面が現れている。その中で、民間の文化交流が特に活発で、かなり大きなウェートと目立った地位を占めている。このような交流は音楽、踊り、芝居、絵画、書道、映画、ラジオ放送、テレビ、図書館、博物館、文化財、考古学、新聞、出版、写真、文学、寄席演芸、民俗、大衆文化および教育、スポーツ、医療・衛生、自然科学、社会科学、宗教、建築などの分野に及ぶものである。ここから見ても分かるように、中日文化交流と協力はすでに全面的な発展をとげており、その範囲の広さ、規模の大きさ、数量の多さ、内容の豊かさ、交流の頻繁さは、中国が文化交流を行っている世界の各国の間で、先頭を行く地位を占めている。今日、経済のグローバル化、情報技術革命と世界的なマルチメディア構造によって、国際間の文化交流の拡大にはグローバル化の特徴が見られ、国際文化交流を推し進める形も多様化している。21世紀に入って以来、国際関係における文化の役割と地位がますます目立つようになっていると私は思う。異なった文化の交流が民族間のわだかまりと偏見を解消し、国と国の政治と経済関係の発展を促すことに役立つため、各国間の文化交流と協力はいよいよ差し迫って必要となっている。われわれが中日両国を含む各国が文化交流を大いにくりひろげることを主張する理由もそこにある。

当面、中国は歴史的な大きな変化を経験しつつある。中国の改革・開放のたえまない深化と国民の生活のたえまない向上は、中日の文化交流により有利な条件をつくり出すことになった。中国のWTO加盟と2008オリンピックの北京での開催によって、中国により積極的な変化が生じ、文化のマーケットがいっそう活性化し、協力の分野がますます広くなり、チャンスもますます多くなることであろう。未来を展望するにあたり、われわれは中日文化交流の前途に対して自信に満ちあふれている。中日国交正常化30周年を迎える今年において、中日双方はすでに日本で「中国文化の年」、中国で「日本の年」を催している。私はこのイベントを通じて、中日両国人民の相互理解をいっそう深め、中日関係と中日文化交流が新しい世紀においてより大きな発展をとげるよう願っている。

今年は中日国交回復30周年のあたる年であり、戦後における中日の民間友好活動展開の50周年にあたる年でもある。中日友好の基礎は広はんな両国国民間の友好である。換言すれば、中日友好はとどのつまり、両国の国民間の友好であり、そのため、両国の国民に幅広く働きかけ、それを組織して中日友好運動に参加させるべきである。戦後の中日友好の歴史を振りかえるならば、日本ではまさに広はんな国民が民間交流で政府を促すことによって、中日国交正常化を推し進め、今日のような政府間の交流と民間の交流を並行して行う局面が現われたのである。今後、中日友好を一層発展させるため、日本においては「民間交流で政府間の交流を促す」ことが時代遅れでないばかりでなく、それは強化されるべきである。中日友好を主張、推進する日本の力の成長・発展を促すため、われわれは日本の各層、各業種との友好活動に力を入れなければならない。

両国の民間団体は従来から中日友好の新鋭勢力である。2001年1月、新しい世紀の鐘が打ち鳴らされたばかりのとき、中国の10の大衆団体と日本の7つの友好団体は、北京で共同で「新世紀の中日民間友好宣言」を発表した。新しい世紀の初めに中日友好と協力を推進するために発表されたこの宣言は、中日両国人民の共通の願望を示すものであり、広い範囲において賛同と支持を得た。2002年1月、中国の30の団体、日本の23の団体の計53の団体の責任者らが北京に集い、昨年の「友好宣言」の基礎を踏まえて、中日友好を呼びかける「アピール」を共同で発表した。この行動は重要な現実的意義を持つものであり、中日友好事業の前進を大いに促すに違いない。

ここ数年、中日双方は若い世代の交流を重視し始めている。これは将来的展望をもつ戦略的措置である。中日両国の若者はそれぞれの国を建設する重責を担っており、中日友好事業の歴史的重責をも担っている。中日友好事業は代々伝えられていく必要があり、現在、新しい世代と旧い世代が交替する重要な時期にあり、われわれは中日友好事業の後継者の育成に大いに力を注ぐ必要がある。中日双方は先人たちのように中日関係において重要な役割を発揮する友好人士を育て上げるべきである。これは中日友好事業が先人たちの事業を受け継ぎ、未来を切り開くことを真になし遂げるため差し迫って必要とされることである。それと同時に、両国関係の健全な発展の後続力を強め、両国国民が世々代々友好的につきあっていく共通の願いを実現するため、われわれは両国の若者が両国関係の大局を意識的に守るよう教育し、絶えず若者の交流を深め、推進すべきである

 言うまでもなく、中日関係は今日の国際関係における重要な構成部分である。アジアと世界において重要な影響力をもつ中日両国が善隣友好関係を発展させることは、アジアと世界の平和、安定、繁栄の重要な要素である。そのため、中日両国は新しい世界秩序を確立するためにしかるべき貢献をする責務がある。ほかでもなく、まさにこのような位置づけが、中日両国が自覚して自分の歴史的役割を認識し、担うことを要求しているのである。

(作者は中華人民共和国文化部元副部長、中華日本学会会長)


 
 
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