ベトナムとの国境沿いに位置する広西チワン族自治区大新県の徳天村。徳天の滝は県の中心から78キロ、区都・南寧からは僅か140キロ余りのところにある。国指定の景勝地。中国とベトナムをまたぐ滝としてはアジア最大、そして世界で第2。水源は同自治区靖西県を流れる帰春河。水は枯れることなく、ベトナムに流入して広西へと流れ込み、徳天村にある断崖に阻まれて瀑布となる。
上流の流れはときに急にときに緩やかとなり、ときに分流しときに合流し、天を衝く古木の間を、草花が互いに照り映え、さまざまな鳥が低く徘徊するなかを曲がりくねって流れ、突如、断崖にぶつかって急落していく。あたかも峡谷に高く掲げられた巨大な白絹のようだ。滝の下に立つと水しぶきがすさまじい。上を見ると銀河が怒涛のように複雑に絡みながら落ちてきて、耳や口そして目を衝く。まるで百雷のように水の落ちる音が山間にこだまし、遠く離れていても耳に響いてくる。頂を望むと、群峰は揺れ動き、巨大な瀑布は大海原のようで、水沫が跳ねとび、あまたの真珠を思わせる。晴れた日には虹が滝をまたぎ、雄大な景色に艶やかさを添える。重なり合う山々、青一色の山林。流れはベトナムと接する高度80メートルの高浦湯島から一気に落ちていく。近くでまた遠くから見ても、魂を揺さぶられるほど実に壮観だ。
滝の幅は100メートル。水のカーテン1つひとつが、深山に掛けられた真珠のネックレスを彷彿させる。落差が大きいため、1キロ離れた場所でも轟音が鳴り響き、心が騒ぐ。飛翔する水滴が山のあたりを漂って100メートル以内は濛濛としている。水滴はいつまでも消えさることはないが、陽光射す日には、風景は一面5色に覆われてまばゆいほどだ。桃源郷にでも足を踏み入れた錯覚にとらわれる。
滝は四季折々に違った姿を見せる。春。キワタノキは火のごとく銀河に彩りを添え、一瞬、爽やかな春風を感じさせる。夏。水かさは増し、激流が山を徘徊して海中に落ち込み、清々しい風が肌一杯に感じられて気持ちがよい。秋。白絹が高く掛かり、紺碧の清流が実り豊かな田畑を染め、豊作の喜びに満ち溢れる。冬。流水は織物を思わせ、束になって悠然と落下し、心穏やかに気高い心境におかれる。
滝の周囲に連なる山々には棚田が続く。棚田の傍にベトナムの国境線を示す石山がある。山の上の真っ直ぐに緑一色の大樹はさらに壮観だ。
国境沿いにある2カ国をまたぐ滝としては世界第2、アジア最大の徳天の滝。この景勝の地では、神秘のベールに包まれた国境ならでわの情景が見られる。250キロも続く“山水の画廊”と呼ばれる自然景観。名所は40ヵ所を超え、自由にコースを選択できる。竜州、靖西、憑祥、東興などにも近く、またベトナムのハノイ、カオバン、モンカイ、アロン湾を観光してもいいだろう。
このあたりは名勝が多く、風光明媚だ。徳天の滝はむろんだが、“小桂林”とも呼ばれる田園風景が広がり、滝が点在し、奇峰が対峙し、樹木が生い茂る黒水河、奇怪な石が点在する雷平石林や水上石林、鍾乳洞が幾つもある恩城山や自然保護区も是非行ってみたい。鏡のような水面、石峰が屹立する喬平湖、神の技を思わせる竜宮岩、中越国境を示す53号境界碑、それに数多くの古跡や希少な動物たち。美しい思い出を残してくれるだろう。
婚姻の風俗:
当地には中国の男性がベトナム人女性を娶る習慣がある。国境をめぐる戦争が終結したのち、民間貿易が盛んになってきた。両国間の経済に格差があるためか、ベトナムの女性が中国人に嫁ぐケースは珍しくない。興味を引くのは、中国人と結婚する場合、ベトナムでは何ら手続きを取る必要はないこと。男性の家に住めば即、結婚したことになる。
境界碑をめぐる逸話:
徳天瀑布の上流600メートルのところに53号碑はある。清朝政府は境界線を定めて碑を立てることにしたが、当時は交通が非常に不便で、道は険しく困難を極めた。碑を持った官兵数人がこの場所にたどり着いたが、すでに暗くなり、まだ道が遠かったため、面倒がってこの地、今の53号碑のあるところに穴を掘って碑を立てたといわれる。結果、中国はかなりの領土をベトナム側に与えることになった。
「チャイナネット」2002年7月12日