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商標権侵害裁判でのヤマハ発動機の勝訴と中国の知財権保護

特集:中国製品の品質と安全性

中国の知的財産権保護状況が国際的な話題となって久しい。かつては国際判例との食い違いなど問題点が目立っていたものの、個別の事例では話題性のある司法判断もいくつか見られる。今年6月、中国の司法における知財権保護状況の改善方向を示す、ある裁判が行われた。

日本のヤマハ発動機が中国メーカーや販売業者など4社を訴えていた商標権侵害裁判で6月、830万元という過去最高の賠償金支払命令が下された。この一件は日本のメディアにも取り上げられ、「画期的」などと評価されて注目を集めた。人民網は今回、この裁判で原告側弁護団のメンバーだった世澤律師事務所の姫軍弁護士にインタビューした。以下は姫弁護士との一問一答。

――830万元もの請求額が認められたポイントは何でしょうか?

830万元という損害賠償金額が、一審法院及び終審法院の最高人民法院において一銭も差し引かれることなく、完全に認められたポイントは、これは本件の原告が損害賠償の金額の立証に成功したことを証明しています。

――日本では「画期的判決」という報道がされていますが、どのような点で?

私は原告の代理弁護士としての立場から、そのメルクマールとしての意義は以下の2点にあると考えます。

 まず、本件において判定された損害賠償額の人民元8,300,440.43元という金額は、これまでの中国商標保護の渉外事件の中で最高金額であるという点です。中国最高人民法院が公布した2006年の10大知的財産権事件(これにはソニー、スターバックス等の国際著名商標も含まれている)の賠償金額の合計はわずか3,300,000元であり、このうち最も高い事件の賠償金額が864,000元でした。中国知的財産権の賠償金額は全般的に低いといわれる司法の実践において、本件の損害賠償額の高さは相当なものであるといえます。

 さらに重要なのは、原告の訴訟請求である、8,300,440.43元という損害賠償金額が、一審法院の江蘇省高級人民法院及び終審法院の最高人民法院において一銭も差し引かれることなく、完全に認められたという点です。これは本件の原告が損害賠償の金額の立証に成功したことを証明しています。権利侵害の証明は容易でも、損害賠償の証明が困難であるとされる中国知的財産権保護の司法の実践において、本件のように損害賠償請求が完全に人民法院によって認定されたケースは極めて珍しいことです。

――今回の判決で、今後の商標権侵害事件(知的財産権)にどのような影響があると思われますか?

(一)複数の被告の共同権利侵害が証明され、連帯責任を負うという前提では、メーカーと販売業者の権利侵害の一連の行為をひとまとまりとして、違法利益取得額を計算するということが、本件で確立されたひとつの重要な原則です。今後の損害賠償の算定に、ひとつの、より具体的な計算方法を提供したものといえます。

(二)今後、判例の運用がますます重視されるようになっていくでしょう。具体的な法的根拠の裏づけがない場合、判例は人民法院も無視できない法的根拠となり、人民法院の判決に対して一定の影響力を持つようになることが考えられます。

(三)「民事訴訟証拠規則」第2条及び第75条が、一方当事者の証拠の不提出に対抗する有効な手段となりうる。本件において上記条項の適用が確認されたことで、悪意による証拠の不提出の抑制に、積極的な意義をもつようになるだろうと考えられます。

(四)本件の判決は、適用する法律に対する深く掘り下げた検討、緻密な証拠収集、証拠規則の正確な運用などを含む事件に対する周到な準備を行えば、民事訴訟が権利侵害を阻止し、賠償を獲得する有効な手段となることを証明したものであるといえます。

「人民網日本語版」2007年9月19日

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