ホーム>>経済>>視点
人民元の国際化が始動 そのプラスとマイナス面
発信時間: 2009-08-06 | チャイナネット

次に、人民元国際化のマイナス影響としては、次の4点が挙げられる。

 第一に、人民元の国際化は、資本項目へのコントロールを中国が取り消すことを意味しており、自由両替が可能な通貨に人民元がなることを意味している。これによって、中国の金融市場が海外投機資本のターゲットになる可能性が出てくる。投機資本の打撃を受ければ、人民元と中国の金融市場に大きなダメージが出ることになる。

 第二に、人民元国際化は、中国にインフレを起こす可能性がある。人民元が国際化すれば、国際間の価格計算・支払い・貯蓄に使われる手段になるため、人民元の需要は大きく上昇するだろう。このような需要増加によって、人民元の発行量は大きく増加し、インフレ圧力を引き起こす恐れがある。

 第三に、中国の貨幣政策のオペレーションに一定の困難を与える可能性がある。人民元が地域化・国際化していない状況では、中央銀行がどれほどのベースマネーを投入しても、中国の国内で流通するだけだった。だが人民元が地域化・国際化を実現すれば、かなりの部分が海外で流通することになる。こうして海外に流れ出た貨幣が国内の物価にすぐに影響することはないが、正確なデータはつかみにくくなり、数量の増減は貨幣当局がコントロールできる範囲を超えてしまう。そうなれば貨幣供給量に対する中央銀行の調節は難しくなる。海外に流出したこれらの人民元は一定の条件が整えばいっきに還流し、国内の通貨流通と貨幣価値の安定に影響を及ぼす可能性がある。また資本の流出や流入に対する制限を取り消せば、中国の金融市場と世界の金融市場は一体化し、中国国境を資本が自由に出入りすることになる。貨幣政策の効果は人民元国際化で薄れることになる。

 第四に、中国経済の成長持続にもある程度のマイナス効果が出ることが考えられる。人口が多い中国では就職難の問題が長期的に存在してきた。就職難を緩和し、急速な経済成長を維持するためには、内需拡大と外需開拓を同時に行う必要がある。だが、人民元国際化の最終目標は国際準備通貨になることだ。準備通貨となれば、人民元は、国際流動性をほかの国に提供しなければならなくなる。このことは中国の国際収支を必然的に赤字にする。さもなければ、人民元準備の出所をほかの国がなくしてしまうことになる。国際収支が長期的に赤字を続けるということは、輸出の減少と輸入の増加を意味している。その結果、外需は減少し、国内市場の一部もなくなることになる。国内の就業を増加させ、中国経済の急速成長を保つことに対しては、一定のマイナス影響が出ると考えられる。

 このように、人民元国際化にはプラス面とマイナス面がある。人民元が国際化の歩みを始めた今日、人民元国際化の利害を客観的に認識し、その利益を増やし被害を減らす方策を事前に研究することは、経済学者にとっての差し迫った課題だと言える。

 作者:首都経済貿易大学金融学院副院長 謝太峰教授

 「人民網日本語版」2009年8月6日

     1   2  


  関連記事
  同コラムの最新記事

· 不動産大手が不動産価格上昇を予想

· 専門家、外国企業の中国A株市場上場解禁を評価

· 中国の株投資家、外国企業のA株上場に賛否両論

· 当面中国にインフレ問題なし 人民銀副総裁

· 中国アニメの潜在市場は3千億元 税政面で優遇