栽培面積を拡大すると同時に、ハドソンさんはナッツの加工会社も設立した。商品は中国に送る前に洗浄し、小分けする。生産が需要に追いつかなかったことから、昨年、会社の規模拡大を決め、工事は今春に始まったばかりだ。
ハドソンさんは中国市場開発のために大量の力を投入し、すでに100回以上にわたって中国を訪れ、中国への理解を深めてきた。ハドソンさんのオフィスには中国から持ち帰った刺繍(ししゅう)や「福」の字、水墨画などの記念品が飾られている。
ハドソンさんによると、1990年代には、ジョージア州のペカン年産量は1億ポンドだった。1ポンド1ドルで計算すると、総生産額は1億ドルだった。中国市場の恩恵を受け、ペカンの単価は今では1ポンド3ドル前後に高まり、州の年産量は1億5千万ポンド、総生産額は4億5千万ドルに達した。このほかペカン産業には灌漑(かんがい)設備やトラック設備などもいる。ジョージア州の農村地域だけで、ペカン産業の年総生産は20億ドルに達した。ペカン業の旺盛な発展は、中国市場に多くを負っている。
ジョージアのペカン栽培協会の分析によると、米国のペカンの追加関税徴収が始まれば、中国人消費者はほかの売り手へと移ってしまう可能性がある。そうなればハドソンさんのような大勢の米国の農民が損失を負うことになる。
「南アフリカやメキシコなどのペカン栽培大国が中国市場での米国のペカンのシェアを奪う可能性がある」。同協会は内部向けの刊行物で、現地の農家は連合し、米国政府に保護貿易主義政策をやめるよう訴えなければならないと呼びかけた。
ハドソンさんは、具体的な影響は秋の収穫までわからないが、販売量は3~4割減ると見ている。見通しがはっきりしないことから、もともと立てていた拡張計画も頓挫した。「拡張してもうフルタイムの従業員を4人と季節労働者を15人雇うつもりだった」とハドソンさん。「でもそれも今は一時停止を迫られている」
米国の農民は往々にして負債を抱えて経営している。米国では良い農民は「金はないが土地はある」と言われ、できるだけ多くの資金を注ぎ込んで生産を拡大するのが当たり前となっている。中米貿易摩擦はそのため、ハドソンさんを含む多くの米国の農民を資金繰りの破綻のリスクに直面させている。
ハドソンさんが一番受け入れがたいと感じているのは、大量の農民がこうした危険に直面しているのに、米国政府が既定の政策を変えようとしないことだ。ハドソンさんはすでに、各種のルートを通じて農民の心配を米議会議員に伝えた。「もしトランプ大統領の貿易政策を評価するなら、落第と答える」
取材が終わる前、ハドソンさんは中国人に伝えてくれと、「現在の局面は私たちの望んだことではなく、貿易戦争を支持してもいない。これまで通り、中国と商売をできることを願っている」とのメッセージを記者に託した。