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japanese.china.org.cn |15. 10. 2022 |
「共に豊かに」の道へ
慶応義塾大学名誉教授大西広(談)
中国のこの10年における経済発展のキーワードは「共同富裕」である、とまずは申し上げたい。私は改革開放期の中国における「先富論」は決して間違っていなかったと思っている。当時貧しかった中国にとって、経済発展は間違いなく最優先事項だった。しかし今は事情が異なる。2021年の統計によると、中国居民の1人あたりの可処分所得は35128元に達しており、政府はそれに応じて「先富(富めるものから先に)から「共同富裕」の実現へと政策を調整していった。経済発展を優先させるあまり、環境汚染、発展の不均衡などの問題が適切に解決されていなかったが、今度はそれらの課題こそが重視されなければならない時代となっている。
貧富の差を埋めるための「中国式」政策とは
貧富の差の縮小は、「共同富裕」の課題の実現に直結している。私は 2003 年から 2020 年までの「各種格差指標による 2003 年以降の格差動向」 (表 1) と、2014 年から 2019 年までの都市と農村における「所得5分位別の対前年所得上昇率の推移 」 (図 1 と図 2) を収集した。これらデータからわかることは、表 1 の都市部と農村部の消費支出比率が 2011 年の 3.218 から 2020 年の 2.11 に低下し、常に縮小しているということだ。 さらに図2からは、2018 年から 2019年にかけての農村の最低所得層における収入増加率が5%近くという明らかな増加が見られる。これらデータからは、近年における中国政府の貧困撲滅、特に農村部の貧困撲滅への取り組みが見て取れる。
日本のような先進国では、所得再分配政策で貧富の差に対処することがよくあるが、中国は先進国とは異なる独自の道を歩み始めた。具体的には労働力の移転、新都市の建設、新たな産業構造の創出などだ。中国政府は貧困層の農民を第一次産業から第二次、第三次産業に転換することを援助し、供給側改革に似たような方法で貧富の差の縮小に効果を上げている。
しかしこれらの政策は人口動態の変化が比較的大きな時期にのみ通用する、という点には注意したい。中国は続いて中高速で発展した経済成長率から低速へと徐々に移行し、人口減少などの課題にも直面している。よって、中国政府は事前に対策を練っておく必要がある。