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japanese.china.org.cn |29. 03. 2023

中欧班列ユーラシアの経済支えるバリューチェーンへ

タグ: 中欧班列
人民中国  |  2023-03-29

中国物流研究会幹事福山秀夫(談)

 過去10年間の「一帯一路」イニシアチブの発展成果と課題について、国際物流の観点からお話をしたいと思う。 

 ご存じのように、「一帯一路」の「一帯」は「シルクロード経済ベルト」として2013年9月にカザフスタンで、「一路」は13年10月にインドネシアで「21世紀海上シルクロード」としてそれぞれ提唱された。対象分野は経済政策、インフラ整備、投資貿易、金融、人的交流の5分野にわたり、構想に含まれる国は65カ国となっている。考え方の枠組みとしては、東アジアと欧州の2大経済圏をつなぐ陸上海上大通路建設が、国際物流の視点としては重要だと考えている。 

 シルクロード経済ベルトとは、経済ベルトの延伸によって中央アジア各国の貨物を太平洋の港まで運ぶ物流ルートを指す。16年に「中欧班列建設発展計画」が出され、「中欧班列」という名称がこのとき初めて使われた。この計画では、中国、欧州、「一帯一路」沿線国におけるコンテナでの鉄道国際複合一貫輸送(インターモーダル)が推進されることが明確にされている。 

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 ドイツ・デュイスブルクのDIT貨物駅にある中欧班列のコンテナ(新華社)

 中国鉄道輸送の現代化 

 中欧班列の淵源は、中国鉄道輸送の現代化とコンテナリゼーションにある。2000年代初頭に海上コンテナ輸送の発展があり、中国港湾の取扱量が増大したことで、大量のコンテナを内陸部までどう運ぶのかという交通上の課題と鉄道の現代化の課題が出てきた。そこで鉄道コンテナ輸送を本格的に導入整備しようということになり、中国語で「海鉄連運」と呼ぶ国際複合一貫輸送に対応するために、第10次五カ年計画(2001〜05年)にも盛り込まれ、国内輸送だけではなく、三大海鉄連運ルートによる港湾起点のランドブリッジ輸送も始まった。これは連雲港港–阿拉山口–欧州、天津港–二連浩特–欧州、大連港–満洲里–欧州というルートがメインとなっている。 

 ここで言う「中国鉄道輸送の現代化」は何かというと、運行の定時性、高速性、安全性の確保、ドアツードアのサービスの確立だが、裏を返せば中国鉄道にはそれらがなかったということになる。 

 鉄道部は鉄道コンテナ輸送の確立を目指して貨物のコンテナ化を進めたが、そのためには、鉄道コンテナ輸送の実現のためのインフラ整備を一から始めなければならず、コンテナ取扱駅の整備などのプラットホーム整備が始まった。 

 ここでは四つのことが行われた。まず中国全土のコンテナ輸送を管理する、中鉄集装箱運輸有限責任公司(CRCT)が03年に設立された。さらに06年に、ハブになる18カ所の鉄道コンテナセンター駅の建設が、昆明を皮切りに始まった。3番目には、国際複合一貫輸送を管理する中鉄国際多式連運有限公司が作られた。多式連運は中国語で、日本語では複合一貫輸送という。4番目には中鉄聯合国際集装箱有限公司(CUIRC)を作り、鉄道コンテナセンター駅の管理を行うこととした。 

 18カ所の鉄道コンテナセンター駅には、港湾型と陸港型の2種類がある。そこではハブ駅同士の輸送体制を整備し、ハブ駅と港湾の連携輸送体制を整備し、ハブ駅と国境都市との連携が進められた。さらに地方有力都市を結ぶということで、地方の有力都市に多数のコンテナ取扱駅が作られた。これにはだいぶ時間がかかっている。このネットワークの下で、中欧班列が誕生した。 

 中欧班列の第1便は11年3月に、渝新欧国際列車という名称で重慶鉄道コンテナセンター駅を出発した。重慶から新(新疆)を通って欧州への国際列車につながることでこの名前が付けられた。その後続々と、漢新欧(武漢発)、青新欧(青島発)、蓉新欧(成都発)、鄭新欧(鄭州発)、西新欧(西安発)というように、センター駅から「一帯一路」のための路線が続々と開通する。 

 新しいランドブリッジ 

 これが意味するところは、港湾起点のランドブリッジから内陸起点の国際列車がメインの体制に移行していくということだ。これを「ユーラシア・ランドブリッジの新展開」と私は呼んでいる。16年、この新しいランドブリッジにブランド名として付けられたのが「中欧班列」という名称だ。 

 中欧班列は東通道、中通道、西通道の3ルートからなり、西1通道がシベリア鉄道、西2通道がカスピ海、西3通道がキルギス・ウズベクルート、重慶が東南アジアに向いているという図式になる。 

 鉄道コンテナセンター駅は発展し、国際陸港という自由貿易区の国際港務区を形成していく。つまり中欧班列は、国際陸港という国際港務区の戦略に基づいて動いているということになる。成都国際陸港の発展戦略を例に取ると、西に向かうのは欧州やパキスタンなどの「深化西向」の戦略だ。最近話題の中国ラオス鉄道や中国ミャンマー鉄道、中国ベトナム鉄道などは南向で「突出南向」戦略、日韓方面に広がる戦略は「提昇東向」戦略となる。中欧班列はこれら戦略に基づいて運営されている。東向に当たる日韓発貨物の接続は日系企業も頑張っており、日通が18年5月に重慶・武漢が拠点の「ユーラシアトレインダイレクト」サービスを行っている。日新も「日中欧SEA&RAIL一貫輸送サービス」を商標登録し、19年4月に横浜港からアモイ(廈門)・重慶を通ってドイツまでの路線を確立した。20年12月、武漢新港という長江の港湾管理者が、自らの子会社の船を運航して、すでに19年に開設していた名古屋直行ルートを利用し、武漢コンテナセンター駅から欧州へ運んだ。その後大阪港、釜山港もこのルートに加わり、中部陸海連運大通道という、中国人らしい大きな名前が付けられた。 

 また、在日のシノトランスジャパンは重慶へのルートで同じ国営の中鉄と組んでコストを安くし、威海港経由重慶経由欧州・中央アジアへの物流サービスを提供している。日中韓の国際高速船ネットワークは、RORO船やフェリータイプの船によるネットワークで、昨年1月1日にRCEP(地域的な包括的経済連携)協定が発効したため、初めての日中韓3カ国のFTA(自由貿易協定)ということで、コンテナ船ネットワークも含めた、3カ国間物流による活性化が期待されている。 

 17年から開始された、重慶と欽州港を鉄道と道路でつなぐ西部陸海新通道で、特に大事なのは鉄道だ。北から来る中欧班列のシルクロード経済ベルト、北東アジア航路とつながる東の長江経済ベルト、南の東南アジア航路・欧州航路の三つの物流を集約する役目を果たしている。つまりこの路線により、三つの地域間の物流が融合するようになるということだ。さらに中国–ベトナム間には中越班列が、中国–ラオス間には中老班列が、中国–ミャンマー間には中緬班列があり、これらは全て西部陸海新通道と共に、重慶を起点に中欧班列とつながっている。 

 中欧班列の成果と課題 

 「一帯一路」イニシアチブの発展成果として、私は以下のことが挙げられると思う。まずグローバルなコンテナリゼーションを推進し、これに貢献したこと。次に、ユーラシア大陸横断鉄道コンテナ輸送をグレードアップしたこと。それから国際複合一貫輸送上の新しいサプライチェーンを構築したこと。東アジアの巨大な国際物流ネットワークインフラも作られたこと。さらに大切なのは、5番目に東アジア複合一貫輸送共同体形成の道を開いたということだ。1から4までをやるためには、日中韓ASEANの共同体を形成するための相互協力が必要であり、「一帯一路」イニシアチブはまさにこの道を開いたと思っている。 

 中欧班列が現在のように急成長した影には、新型コロナウイルス感染症の流行がある。11年当時の中欧班列の列車便数はわずか17便、コンテナ数で1000TEUに過ぎなかったが、13年の「一帯一路」発表後の14年の数字を見ると、列車便数で285%、コンテナ数で271%と急成長している。21年は新型コロナの影響を受けているが、1万5183便で146万4000TEUとなっていて、11年の約1000倍にまで拡大している。 

 この勢いはまだどんどん続いていくと私は考えている。RCEPがもたらすものは、北東アジア物流の活性化、東アジア域内航路の活性化、中欧班列と中国・ASEANクロスボーダー輸送の接続による活性化だ。そして最も大事なことは、「一帯一路」とRCEPが連携しているということだ。東アジア域内の物流サプライチェーンも陸のシルクロードと海のシルクロードが融合し、変化が始まっている。欽州港のハブ港化や東アジアと欧州間物流の変容は、ASEANに進出している日中韓の製造企業に大きなビジネスチャンスをもたらすだろう。それに合わせて、北東アジア航路における釜山港、日本の5大港・北部九州港も活性化するだろう。西2通道(カスピ海ルート)も拡充されている。中国語で中吉烏という西3通道、つまり中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道開発は、23年から始まる予定だ。 

 総括すると、「一帯一路」は国際物流において東アジアの国際物流に大きな利益をもたらしたといえるだろう。今後の課題は、長大な中国沿岸部を接続域とする中欧班列と、北東アジア航路、東南アジア航路、アジア域内航路、国際RORO船との連携の強化だ。西部陸海新通道と中欧班列の連携強化も必要だ。これらが実現すれば、日中韓3カ国の企業に大きなビジネスチャンスをもたらすだろう。コロナ後のサプライチェーンの再構築のため、海上輸送と中欧班列のバランスの取れた利用も必要になってくる。このような東アジア複合一貫輸送体制の構築については、日中韓ASEANの相互協力が不可欠だし、カスピ海ルートのグレードアップや中吉烏鉄道の建設も必要だ。そのためには日中韓ASEANの枠組みを超えた中央アジア諸国との相互協力も必要になるだろう。これらを達成すれば、中欧班列は欧州航路と並び、それを補完するサプライチェーンとなり、ユーラシア大陸の経済を支えるバリューチェーンへと成長するだろう。 

 (呉文欽=構成)

 「人民中国インターネット版」2023年3月29日