女子十二楽坊のプロデュースに当たり、王氏が最初に考えたのは海外市場の開拓だった。王氏は友人を通じて、日本のレコード会社・ワーナーの塔本一馬氏へ初コンサートのVTRを送った。するとそのわずか2日後、まだ面識もない塔本氏から「一緒にやりましょう」との返事が届いた。塔本氏は女子十二楽坊プロジェクトに専念するため、ワーナーを退職して新会社のプラティア・エンタテインメント株式会社を設立。当初2億円だったプロジェクト投資額は、やがて5億円にふくらんだ。
今回授賞式に出席した塔本一馬氏は、カップを手に喜びの気持ちを語った。「日本人は中国の古典音楽が大好きだが、民族音楽と現代的手法とのミクスチュアが広く受け入れられたのは、女子十二楽坊が初めてだ」と語った。
中国国内では90年代末頃に起きた「新民族音楽」運動をめぐって論争が繰り広げられていた。そこで王氏は女子十二楽坊を売り出す際、「新民族音楽」という言葉は使わず、「ビジュアル民族音楽」を使用。それでも音楽界では「新民族音楽」の一種、または「民族音楽の新しい試み」との受け止め方が一般的だった。
有名な作曲家で、中国軽音楽協会副会長の付林氏は、「女子十二楽坊は中国の民族音楽が世界へ羽ばたく可能性を示唆している。伝統音楽の決まり切った演奏スタイルから脱却し、現代音楽のリズムと作曲法を取り入れた結果、幅広い年齢層のファンを獲得することができた」と分析する。
音楽評論家の金兆鈞氏は「民族音楽が市場で伸びるためには、演奏家自身が見様見真似でビジネスをするのでなく、営業のプロフェッショナルを起用する必要がある」と指摘。女子十二楽坊の成功については、「すぐれた着想と営業手腕によるもの。コスト管理や売り出し方がプロフェッショナルだった」と分析する。
中央民族楽団の顧夏陽団長は「女子十二楽坊のセールス記録に注目すると同時に、民族音楽の道筋について、冷静かつはっきりと線引きすることが必要だ」と指摘する。女子十二楽坊は中国音楽界の多元化を促進し、市場からも受け入れられたが、「ビジュアル民族音楽」の一種に過ぎず、民族音楽全体の未来を示すわけではない。顧団長は「『そのままの味わい』を保ち、リミックスやリズムマシーンを使用しないことが必要な民族音楽の形もある。中国民族音楽イコール女子十二楽坊ではない。民族音楽こそが、一つの国家、一つの民族の伝統文化を体現したものと言える」と語った。
「人民網日本語版」2003年12月23日