中国人研究者がSARS(新型肺炎・重症急性呼吸器症候群)の分子流行病学とSARS冠状ウイルス分子進化規律について、8カ月にわたる研究を経て解明した成果が米誌『ネイチャー』に掲載された。
SARS防止治療基礎理論研究グループはSARSの流行病学に関して突っ込んだ調査研究を行い、SARSが流行初期には独立して発生し、地域的に制限があり、伝染にも制限があるという特徴を備えていることを突き止めた。科学技術部では「重大な意義をもつ研究成果で、世界各国のSARS防止治療に新たな科学的なデータとなる。成果の全文が『ネイチャー』に載ったことは、この研究が世界の科学技術界に認められ、重視されたことを示すものだ」と話している。
研究グループは、2002年から2003年にかけてSARSが流行した時期を早、中、後期の3段階に分けて分析を実施。各段階の広東省と香港の患者24人の18株の冠状ウイルスと11種のウイルス生物サンプルを含むウイルス遺伝子グループの全序列を測定するとともに、すでに公開されたその他32種の人間の冠状ウイルスと2匹のハクビシンのサンプル冠状ウイルスの遺伝子グループ全序列と合わせて生物情報学分析を行い、SARS冠状ウイルスの分子が流行過程で変異する規律をさらに深く突き止めた。
まず第1に、ウイルス分子の進化によって流行病学の調査で得た結論が実証されたほか、動物から離れて流行した各段階での冠状ウイルスに特徴ある遺伝子型の分子標記が見られた。第2に、進化モデル計算で取得した一連の重要な基礎データから、冠状ウイルス遺伝子グループの中性突然変異速度はHIV(エイズウイルス)遺伝子グループのそれの3分の1であることが判明した。第3に、冠状ウイルス遺伝子グループの各主要なセクターは、流行の過程で環境の選択の圧力に対し異なる反応を示すことが分かった。
研究者はさらに、動物に由来するウイルスの人間への感染は、初期では発病や伝染させる能力はほとんど低く、相対的に抑制や治療はしやすいが、強大なプラスの選択圧力を受けると、ウイルスの変化は速くなり、ウイルスが一定の時間を経て人体に適応し、流行が中・後期の段階に入ると、マイナスの選択圧力を受けて変異は遅くなるが、伝染能力はむしろ高まり、病状が一般に重くなることを突き止めた。
実験に参与した研究者は「今後、動物に由来する可能性のあるSARS冠状ウイルス感染の再発を監視し、時宜を逃がすことなく隔離して抑制すれば、2003年初めのような爆発的な流行が起こることはない」と指摘している。
「チャイナネット」2004年2月2日