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「同時通訳者」という大人気の職業
発信時間: 2009-08-25 | チャイナネット

林国本

 

今中国の若者の間では、いくつかの職業がたいへん人気となっている。さまざまな切り口によって、いろいろな分類の仕方があり、一概には言えないが、テレビのキャスター、国際会議の同時通訳者、ファッションモデル、弁護士、公認会計士などがよく若者の間で話題となっており、これらの職業につくことを目標としている人もかなりいる。大学などで若者たちと対話する機会があると、いつも若者たちに囲まれて、「同時通訳者」になるには、どうすればよいのか、と質問される。

私は特異なケースで、「同時通訳」は私にとっては余技のひとつで、私の本来の目標はジャーナリストか翻訳家になることであった。ところが、ある日、私の親友、畏友に自分の所属する新聞社と日本の新聞社が国際会議をひらくことになったので、一肌脱いで当時通訳を手伝ってくれと言われ、この親友、畏友にはノーといえないそれまでの経緯があったので、引き受けることにした。なんとそれがまぐれ当たりで、いっぺんに人気者となり、それ以後、余技のひとつとして楽しんできたが、本腰をいれたことはなかった。また、親切な人が、「そこまでできるのなら、それまで勤めていたマスコミ機構をやめてフリーランサーになった方が稼ぎが多いのでは」、といってくれたが、私はあくまでもジャーナリズムの世界に踏みとどまることにした。そして余技の同時通訳で知識の幅を広げ、それをジャーナリズムの世界に生かすことにしてきた。

しかし、フリーランサーになって猛烈に頑張っている人も何人かいる。人生いろいろで、人にはそれぞれ生き方がある。これまた楽しからずやであろう。

この世界で一応認められるには、結局、外国語と自国語を徹底的にマスターし、それは瞬時に置き換えるコツを身に着けることであろう。日本語をベースとする同時通訳の世界を見ると、中国では、レギュラーとして十人ぐらいいるようで、それぞれ自分に適したコツやスタイルを身に着けている。フリーランサーの場合、仕事が途切れないように逐語訳などの仕事も引き受けて、「旅がらす」のように各地を飛び回っているようだが、健康に気をつけることも大切である。私はうわべは元気はつらつとしているが、幼少の頃からそれほど丈夫な体質ではなかったので、セーフティーネットを構築して、なるべく末永くジャーナリズムの世界で人生を楽しむことにしてきた。だから、同時通訳はこれまでの国際ジャーナリズムの世界での蓄積を実証する場としてきた。そして、「旅がらす」のような生活は自分には不向きなので、自宅をベースとした人生を目指してきた。フリーランサーとして同時通訳の世界で頑張っている人たちは、日本人好みの表現を使えば、「一匹オオカミ」の世界で頑張っている人たちである。この人たちはそういう意味で、私より真剣に自分の人生に立ち向かっているといえる。

だいたい、ジャーナリズムの世界でも、同時通訳の世界でも、ずば抜けたレベルに達するには、持続的な努力あるのみだと思う。常識のような話になって恐縮であるが、日本語、母国語においては普通のレベルではやっていけない。

そして、日本という国の特色から、外来語とそのベースである英語、さらにはフランス語、ドイツ語などをいくらかかじっておくと便利なこともたしかだ。そして、政治、経済、文化などもろもろの勉強も必要だ。若い人の間では、日、英、中三カ国の同時通訳をこなす人も現れているが、これは喜ぶべきことだ。時代の進歩ともいえよう。「二兎を追うものは一兎をも得ず」といわれてきたが、堂々と二兎を追っているのだからたいしたものだ。ヨーロッパなどでは、子供の頃から自然に三カ国語以上身につけるケースもあるが、中国の場合、子供の頃から国際学校みたいなところに入れてもらう以外そういう機会はない。

中国の国際的地位の向上により、同時通訳のニーズも増えてくることだろう。これからの若者たちにとっては、まさにチャンス到来である。いろいろの人材が現れてくるにちがいない。

しかし、私はあくまでも、流行を追うのではなく、基礎となることをしっかり勉強しておいた方がよいと思う。そして、日本人がよく言うように、「つぶしのきく」スタイルを構築することが必要であろう。今度の国際金融危機が一つの教訓である。

かっこいい同時通訳者に憧れるのはよいが、肝心な基礎としての勉強を怠らなければ、適応力も身につくし、スムーズに自分の夢を実現することも可能となるのではないだろうか。

 

「チャイナネット」 2009年8月25日

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