「小野妹子と隋の文帝」「清少納言と白居易」「足利義満と永楽帝」……この歴史上有名な日本人と中国人が、互いに影響を与え合った、ということをご存知でしょうか。これを漫画に描いて、日本語と中国語の解説をつけた『2007 中日交流漫画掛暦(カレンダー)』が作られ、話題になっています。子供にも親しんでもらって、日中間の相互理解の一助になれば……。そんな願いを込めて、昨年から作られています。
十二組のペアが示す交流の歴史
このカレンダーを企画・制作したのは、上海の日系PR会社の共同拓信公関顧問(上海)有限公司。「日中関係が改善の方向へ進み始めましたが、日本人と中国人の相互理解はまだまだ足りないのではと、強く感じています。そこで、まずは毎日の生活の中で身近に接するカレンダーを通じて、お互いの共通点や異なる点を理解しあえればと思い、昨年に引き続き今年も制作しました」と、同公司副董事長の田岡子(たおか・し)氏は企画の意図を話す。
昨年のカレンダーは、日本人なら中国に、中国人なら日本にそれぞれ縁のある人物が描かれた。日本人は阿倍仲麻呂、宮崎滔天、内山完造ら6人、中国人は魯迅、孫文、鑑真ら6人が、毎月一人ずつ登場した。
今年のカレンダーは、互いに影響を与えあった12組の日本人と中国人のペアを選んで、前回同様、故手塚治虫氏のプロダクションが描いた漫画をあしらっている。
例えば11月は「魯迅と藤野厳九郎」。中国近代文学を代表する文豪、魯迅が留学先の仙台医学専門学校(現・東北大学医学部)で藤野教授と出会い、藤野教授との民族の壁を越えた人間的な交流をし、魯迅はそれを『藤野先生』という短編小説として著している。
6月の「平賀源内」のお相手として登場する中国人は「宋応星」だ。博物学者、からくり師、戯作者など多芸多才な活動で知られる平賀源内だが、海外の機械を参考に仕組みを研究して「エレキテル」という静電気発生装置などを製作したエンジニアの顔も持っている。その彼に影響を与えたもののひとつが、宋応星が著した科学技術書『天工開物』。17世紀末に大阪で翻訳出版された。さらに、同書は中国では遺失してしまったが、辛亥革命時に、日本語翻訳版をもとに再出版されたというエピソードもある。
そのほか、「大塩平八郎と王陽明」「林羅山と李時珍」「近松門左衛門と鄭成功」「朱舜水と徳川光圀」「大河内輝声と黄遵憲」「武田泰淳と秋瑾」「李大鏸と吉野作造」とペアが収められ、2人の関係も、カレンダーに記されている。
へー、この2人が影響しあった関係だったなんて、浅学な私は、驚くことしきりだった。
日本と中国の暦を併記
カレンダーには、日本と中国の暦が併記されていて、双方の国の記念日などが一目で分かるようになっているのも特徴だ。
中国から日本へ伝わった季節の行事は多い。例えば七夕。
日本では新暦で祝うようになったため7月7日と固定されているけれど、中国ではいまも旧暦で祝うから、毎年、七夕の日が動く。さらに、日本が七夕を祝っているその日は、中国では抗日戦争のきっかけとなった1937年の盧溝橋事件が起きた日でもあり、中国人の心の中に深く刻まれている。
新しい月が来るたびに、今月はどんな記念日や伝統行事があるのだろう、と互いの国に思いを馳せ、確認することができるわけだ。外国人と交流をしていくうえで、その国のひとびとにとって大切な記念日を忘れないことは、相互理解の第一歩だ。
「オフィスや家庭でカレンダーを利用して頂くことで、相手の国の暮らしや歴史を考えるきっかけになれれば」と、田岡氏は話している。
(上海在住フリーランスライター 須藤みか)
「人民中国」より