5月末に北京で死去したイスラエル・エプスタイン氏は国際的に著名なジャーナリストだ。彼の生前の最後の著作「歴史を忘れてはならない」が今年4月、出版された。その中には深く考えさせられる忠告がある。
日本軍国主義が中国を侵略した犯罪について、中国人民が日本の侵略者に抵抗した歴史について、エプスタインは目撃者であり、記録者であり、伝達者であり、名実ともに備わった歴史の証人だ。彼は本の「あとがき」で次のように記している。
「第二次世界大戦の導火線は日本侵略軍が点火したと多くの歴史家は考えている。それは1931年9月18日、日本の軍隊が中国の東北を占領した『九一八事変』(満州事変)である。この日、世界の他の地域では多く話題にのぼらなかったが、中国人民の心には深く刻まれた。これは西の欧州で第二次世界大戦が始まったと通常考えられている時期より数年早い。例えば、第二次世界大戦の始まりをある人はナチス・ドイツが欧州近隣諸国への侵略を始めた1939年と考えているし、ある人は日本が米国を攻撃した1941年12月に始ると考えている。事実上、日本による中国への侵略行為が国際的に激しい非難と懲罰を招かなかったために、他のファシズム国家が悪事を真似たのだ」
戦後日本の右翼勢力が侵略を美化し、歴史を歪曲する行為について、いわゆる「日本が戦争を始めた目的は、西洋の植民地主義統治から各国人民を解放するためだった」という間違った説について、エプスタインは次のように批判している。
「もちろん歴史的観点から見ても、また道徳的観点から見ても、これはきわめてでたらめだ。
実際には、日本軍国主義は西洋植民地主義に取って代わることを愚かにもたくらんだのであり、各国人民をさらにひどい被害に遭わせ、さらには民族抹殺も行おうとした。日本戦犯の裁判で、南京大虐殺を指揮した日本軍将校はこうした自己弁解をしたが、死刑判決を受けた。東南アジア諸国の国民に聞くといい。彼らはかつて日本軍国主義の『解放』を経験したが、彼らはすぐ武器を手に取り、こうした『解放者』を相手に戦ったのだ。日本や他のファシズム国家が敗れた後、人民の武装蜂起を経て、特に中国人民による解放闘争の勝利に励まされ、彼らは最終的に植民地統治を終わらせ、独立へ歩み出したのだ」
世界反ファシズム戦争勝利60周年記念にあたり、世界人民の収めた勝利の偉大な意義をどう評価すべきだろうか。ファシズムが繰り出してくる奇怪な論調にどう向き合うべきだろうか。一世紀を越えた老人はわれわれにこう教えている。
「われわれの新世紀における主要な任務の一つは、ファシズム反動勢力が勢いを盛り返してくるのを防ぐことであると私は信じている。歴史の教訓は忘れてはならない。ファシズムの復活を許してはならない。ファシズムをいかに美化し、ファシズムの侵略犯罪行為をいかに否認しようとも、われわれはすぐ暴き出し、反論する。なぜならファシズムの罪は重く、全世界の奴隷化を愚かにもたくらんでいるからである。世界反ファシズム戦争の勝利は、世界平和の基礎を築き、民族解放の道を切り開き、人類社会の進歩を推し進め、世界の文明史上における不朽の記念碑である。平和は容易なことではない。世界大戦の悲劇は決して再び繰り返してはならない。高度な警戒心を常に保ち続け、平和の力を絶えず発展させ強大なものにして、戦争に至るあらゆる要素を抑え、取り除かなければならない。われわれはわれわれの次の世代も歴史をしっかりと心に刻み、決して楽観視せず、反ファシズムの伝統を受け継いでほしい」
「前事不忘 後事之師」(過去を忘れず、後世の教訓に)は著作「歴史を忘れてはならない」の最後に記された言葉だ。1915年に生まれた老人が、彼の90歳の誕生日に、世界反ファシズム戦争勝利・中国抗日戦争勝利60周年を記念する年にあたり、平和な時代に生きる人々(日本の政治家も含む)に対する指摘である。
「人民網日本語版」2005年6月7日