中国が改革・開放を実施してから20数年このかた、とりわけここ10年間に、中日両国政府の指導者の多大なる促進のもと、両国は官民の次元で共に力を入れ、政府資金と民間資金が相互補完しあい、投資と貿易が互いに因果関係となり、両国の貿易協力が大きく、全面的な発展を遂げるよう促し、両国は互いに重要な経済貿易の協力パートナーになり、双方に大きな利益がもたらされるようになっている。
中国税関の統計によると、昨年、中日両国の貿易額はこれまでの最高記録を更新し、831億6600万ドルとなった。今年1−10月に、双方の貿易額は前年同期比6.7%増の718億4400万ドルに達した。そのうち中国側からの輸出は365億6200万ドル、輸入は352億8200万ドルとなり、前年同期比それぞれ8.4%と5.0%増えた。
日本の対中直接投資は、1998年、1999年の下落を経て2000年に回復的成長を実現した。今年に入っていらい、中国経済の健全な発展および中国のWTO加盟などの好材料に恵まれて、日本企業の対中投資が活発化し、大手企業のトップが相次いで中国を訪問し、協力の意向を示している。今年1−10月に、日本企業の対中投資プロジェクトは前年同期比30.2%増の1610件、契約ベース投資額は同62.9%増の46億400万ドル、実質投資額は同53.1%増の36億5500万ドルに達し、それぞれ全体の7.8%、8.3%と9.8%を占めている。今年10月末までに、日本の累計対中直接投資プロジェクトは21993件、契約ベース投資額は434億1800万ドル、実質投資額は314億5600万ドルとなっている。
当面の両国貿易関係の主な特徴は次の通りである。
一、当面の国際貿易が経済的要因の影響で低迷しているなか、中日両国の貿易は依然として一定のテンポの伸びを保っている。とりわけ、日本の対中輸出規模は今年上半期にすでに韓国と台湾への輸出を上回り、日本の対外貿易において中国は初めて輸出と輸入の両面でアメリカのみに次いで第二の貿易パートナーとなっている。半面、中国の国際貿易の多元化および規模の拡大によって、日本は中国最大の貿易パートナーの地位を保っているものの、そのウェイトはピーク時(85年)の30.4%から2000年の17.5%へと下がりつつある。
二、中日貿易は日本の対中投資の増加につれて発展をとげ、「投資が貿易を引っ張る」というはっきりした特徴をもつに至っているが、主な貿易形態は加工貿易である。2000年の中日貿易額に三資企業(訳注:外国独資企業、中外合弁企業、中外合作企業)の輸入と輸出が占める比率はそれぞれ68.5%と56%となっている。日本国内の企業と在中国の日系企業間の貿易はすでに中日貿易の半分を占めるに至っているのが実情である。統計からみれば、近年中国の対日輸出の伸びが速かった製品は紡績と機械・電子製品であるが、(92年―98年の)日本の対中投資構造からみると、電気設備業種が18.7%、機械業種が9.0%、紡績業種が10.37%を占めている。中国の対日輸出の拡大は、かなりの度合いにおいて日本企業の対中投資から受益しているし、これは日本政府が「開発輸入」奨励政策と切り離すこともできず、中日双方の優位性の相互補完、互恵協力の必然的結果であることもそこから読み取れよう。
三、中日両国の経済貿易協力はすでに相互依存の局面を形成しており、この密接な関係によって必ず「和すれば利益を共に享受し、争えば共倒れになる」局面になるといえる。そのため、中日経済貿易協力の特徴を良く分析し、存在している課題を適切に解決する必要がある。
ある時期以来、日本国内で「中国脅威論」が大げさに取りざたされるようになっている。その中には極めて主観的で、極端な、かつ一方的な観点もあると言わざるを得ない。その氾濫を放任すれば中国への正しい理解を深めることにプラスとならないばかりか、両国の経済貿易協力の促進にもマイナスで、情勢に対する誤った判断をもたらすことになるかもしれない。なかでも対中投資は日本国内の「産業空洞化」を引き起こすという見方が目立っている。この見方は、中国経済の発展の現状に対する過大評価によるものであるとともに、中日経済貿易協力の現状に対する理解不足による誤った判断でもある。まず指摘しなければならないのは、日本の対外投資に占める対中投資の比率は非常に低いものであり、日本の「産業空洞化」になる直接的因果関係はない。日本の統計によると、1998年末までに、日本の累計対外直接投資のうち、対北米は約42%、対ヨーロッパは約20%、対アジアは約18%、対中国はわずか3%にしかならないといった具合である。このような対中投資の比率でなぜ「産業空洞化」を引き起こすことができるのか。それに、中国側の統計によると、(2000年の)日本の対中投資プロジェクトの一件あたりの投資金額はわずか228万ドルで、ドイツの989万ドル、シンガポールの326万ドル、アメリカの306万ドルと香港の235万ドルに次いで第五位である。日本企業の対中投資の技術と資金の密度はまだ保守的な、比較的低いレベルに留まっている。上記のデータからみると、日本企業の対中投資は比較的早く発展しているものの、現在の中国外資導入の国(地域)別統計のなかでは、もっとも多いものでもなければ、もっとも良いものでもない。対中投資による産業空洞化を無責任に吹聴することは、世論を誤った方向に導き、両国の発展にプラスとならない。
アジア金融危機および今年以来の情勢の発展が立証しているように、中国経済の発展は世界市場のよりいっそうの拡大および世界、地域経済の安定材料の増大を意味する。中国は更に幅広い分野で発展をとげ、豊かになってこそ、中国の市場はより現実的なビジネス的価値をもつことになる。つまり、中国経済が高成長を維持することは、日本からの輸入を増やす前提であるが、中国での投資・生産はそれぞれの経済環境とコスト競争力によって形成された自然の流れであり、日本製品の競争力を保つ必要でもあり、両国間貿易の拡大をもたらし、ウィン・ウィンの結果になるものである。
日本は中国にとって最大の貿易パートナーである。世界銀行の研究では、先進国のなかで、中国のWTO加盟による最大の受益者は日本だと見なされている。チャンスは客観的に存在しているが、つかむことが出来るか否かは主観的な努力によるものである。日本企業が良いチャンスを見逃した教訓もあるが、後から奮い立って追いついたケースもあり、真剣に研究・総括の必要があるように思う。
両国の貿易規模の絶えまない拡大と構造調整の過程で、貿易紛争や摩擦の出現は避けられないし、それを避けて通るつもりもない。しかし、強調したいのは、中日経済貿易協力は、一般の二国間貿易関係の特徴もあれば、前述のようにそのはっきりした特殊性もある(つまり中国製品の対日輸出の増加は、日本企業の投資協力、技術指導、委託加工などの形態のもとで徐々に発展してきたものである、ということ)。従って、双方の貿易摩擦を解決するには、この点を十分に認識したうえでじっくり話し合い、双方に受け入れられる方法を提出しなければならない。日本や他国のモデルを安易に当てはめ、冷静さを欠いた協議をおこない、一方的に措置を取ることは望ましくない。在中国日系企業の利益を犠牲にし、国内の立ち遅れた業種の利益を過度に保護することも不公平であろう。したがって、友好的な話し合いを通じて問題の解決を図ることを主張しており、制限を設けるいかなる措置ももろ刃の剣である。
当面、中日両国とも改革と発展、アメリカおよび世界経済の減速による影響の克服などの課題を抱えている。東南アジア地域の経済協力の進展、両国の経済構造の調整および中国のWTO加盟などは、両国の経済貿易協力の拡大に新たに大きなチャンスをもたらしている。長年の努力を重ねた結果、中日経済貿易協力はすでに望ましい成果と経験を獲得し、すさまじい勢いの「ハネムーン期」からしっかりした「成熟発展期」に入っている。両国は引き続き「官民ともに力を入れる」伝統を発揚し、政府は促進者、企業は開拓者の役割を果たし、積極的に実務交流と協力を展開し、新たなチャンスとチャレンジに直面するなかで中日経済貿易協力をより高い、幅広い次元に発展させるよう促さなければならない。
(作者は中国対外貿易経済合作部アジア局の呂淑雲副局長である)
「チャイナネット」 2001年12月24日