人民網のネット掲示板(BBS)「中日論壇」は4日午後、第2次世界大戦時に強制連行された中国人労働者の対日訴訟で、中国側弁護士を務める康健さんをゲストに招いた。康健さんは交流の中で、インターネット利用者から多数の質問を受けた。ここでは対話の一部を紹介する。
――6月30日に、日本の中国侵略期間中に中国人労働者を強制連行した日本企業のリストを発表された。このリストは以前から入手していたのではないか。なぜ今になって発表したのか。
康健さん:リストは確かに、95年の提訴当時から手元にあった。しかし、法廷で争っていたため、日本企業の戦争責任に対する態度や、日本の裁判官、政府の戦争責任に対する態度を見る必要があった。つまり、余地を残すことで、彼らが自分の誤りを認め、誤りを改める機会を提供してきたと言える。しかし、(返ってきたのは)相変わらず事実を隠し、事実を歪曲し、責任を回避するという良くない態度だった。
このため、われわれはリストの発表を決定した。もし彼らがそうした頑なで誤った立場を取り続けるのであれば、われわれは法廷上でのあからさまな責任回避の態度を社会に発表し、日本政府の政治家らが外交の場で話す外交辞令が全くのうそで、法廷上の責任回避こそが本音であることを、全世界の人々に知ってもらう。
――今回の敗訴(6月23日の東京高裁判決)は、両国の政治情勢と関係はなかったか。
康健さん:両国の政治情勢とは何も関係なく、日本の国内政治そのものと直接の関係があると思う。日本で主導的な地位を占める政治家は、とにかく侵略戦争を否定するばかりだ。それにとどまらず、あの戦争は日本を防衛し、アジアの欧米による植民地支配からの脱出を助けるものだったという、事実を無視した考え方を持っている。このため、人類の尊厳を守る正義の訴えが日本の法廷で失敗に終わったのも、われわれにとっては想定内のことだった。法廷上では負けたが、日本政府の勝訴も、あまり恰好の良いものではない。
――何年にもわたり、対日賠償請求訴訟に携わってこられたが、訴訟の目的達成へのカギはどこにあるだろうか。
康健さん:最も中心的な目的は、あの痛ましい歴史を記録することだ。さらに、中国国民として、当時の被害者として、侵害された権利をいかにして守るかを知る必要がある。歴史の悲劇の再演を避けるため、われわれは日本の軍国主義による暴虐な行いをあばかなければならず、必ず彼らの罪を清算させなければならない。あの歴史は、中国・日本両国の国民が真剣に反省しなければならないと思う。ここには、汲み取るべき多くの教訓もある。訴訟への参加を通して深い感慨を持った。中国国民がこのことに注目するよう願う。
――最悪の結果とはどのようなものか。
康健さん:最悪の結果とは、日本の最高裁判所の終審でも敗訴することだ。しかし、これまでのケースでは、われわれの敗訴ではあるものの、日本の裁判官はいずれも当時の日本政府や日本企業による中国人労働者の強制連行という侵害事実を認めている。慰安婦の案件でも、裁判所の判決で日本政府の中国人女性に対する侵害事実が認められた。このため、こうした事実の確認は、日本政府の歴史教科書問題、靖国神社に関するでたらめな発言への効果的な反撃となる。
――「国家賠償法」第6条の「相互保証」は、どのように理解すればよいか。
康健さん:これは日本の「国家賠償法」第6条の相互保証に関係する条項で、中国が1995年に実施した「国家賠償法」にも同様の原則的規定がある。つまり、国家公務員の公務中に公民への侵害行為があった場合は、保証しなければならない。しかし、侵害を受けた公民が外国人である場合は、その外国人の本国に(相互保証による)同等の賠償条項が設けられている必要がある。(ない場合は賠償の対象外となる)
この案件は日本政府がかつて発動した中国への侵略戦争中のものではあるが(中国は当時、「国家賠償法」未制定)、中国の公民に著しい不法な侵害行為を犯したものであり、一般の行政行為で引き起こされる侵害とは性質上の違いがある。日本政府は加害者として、これによって責任を回避するわけにはいかない。
――対日賠償訴訟は両国の友好にマイナスだという人がいる。あなたは対日賠償訴訟と中日友好の間に矛盾があると思うか?
康健さん:対日賠償訴訟と中日友好との間には矛盾があるとは思わない。なぜなら、10年にわたる訴訟の中で、一連の訴訟が中国国民と日本の良知ある国民とが理解と信頼を深めたことを強く感じるからだ。これは重要なことだ。日本の国民は真相を知ったあと、正しい決断を下し、立ち上がって、戦争責任を早く取るよう日本政府を促している。もし歴史の残したこれら問題が解決されなければ、真の友好は問題外だ。中国人の角度から言えば、加害者の責任をきちんと清算しないお人よしの態度では、再び被害を受けてしまう。日本人の角度から言うと、あの歴史を直視せず、しかもあの戦争がアジア解放と日本防衛のためだったと考えるのであれば、軍国主義の復活は時間の問題だろう。このため、(中国人の)お人よしの態度も、(日本の)軍国主義も、中日友好の(危機への)導火線となる。真の中日友好のため、われわれはあの戦争を直視しなければならず、この貸し借りにけりをつけなければならない。
――真心をこめて支援した日本の弁護士を紹介してほしい
康健さん:10年にわたる訴訟の過程で、良知ある日本の弁護士や国民と知り合った。かれらは非常に誠実かつ熱心に中国の被害者の権利主張を助けてくれた。(支援者は)中国人戦争被害者賠償請求訴訟・日本弁護士団や支援会の方々で、いずれもボランティアで結成されたものだ。中には高齢の方や、他に仕事を持っている方もいる。しかし、さまざまな困難を克服し、法廷の活動に積極的に参加したり、事実を伝える広報活動や募金活動を展開したりしている。これは日本では容易ではない。かれらは一部日本人らの無理解に遭っている。また、重い心臓病やがんにかかっている弁護士もいる。しかし、全くを顧みず、道義のために一歩も後に引かず、こうした活動に参加している。この10年間、1銭の報酬もないばかりか、多額の資金を自腹でまかない、中国に何度も調査に出かけてくれた。支援会の日本人らは、より多くの日本人に訴訟への注目や法廷の傍聴を呼びかけた。こうした活動はいずれも容易ではないが、案件の(審理の)を進める上では重要だった。かれらは名誉や利益のためではなく、何も言わずにこうやって行動している。これには感動させられた。
――いま日本で争われている強制連行をめぐる訴訟はどのくらいあるか。最終的にすべて敗訴したらどうするか。
康健さん:現在、日本の法廷で争われている13件が未解決だ。7月には新たに提訴される案件もある。敗訴への心の準備はあるが、しかしこの努力は必ずしなければならない。訴訟のプロセスは、日本や全世界に対し、日本の政府や企業がかつて行った戦争犯罪をあばくものだ。少なくとも(事実を)明らかにする道筋を放棄することはできない。
同時に、日本や全世界に対し、侵害された尊厳を守るという中国の被害者の決心を示すものでもある。自分が自分の権利すら重視しないのに、他人からの尊重を受けられるだろうか。
――法廷の記録を今公開してもらえるだろうか。
康健さん:残しておいて今後公開したい。ただ、簡単に説明すると、日本政府の代理人は、法廷で公然と「あの戦争では日本人も被害者だった。だから中国も日本人への賠償を考えなければならない」と述べた。日本政府の代理人があのような立場で述べた観点は、日本政府の主流派の本音であることが明白だ。これは、日本の政治家が訪中時に語っているような耳あたりの良い外交辞令とは全く違うものだ。日本企業の代理人は、非常に軽蔑した表情で「われわれは当時起こったことなど知らない。だからわれわれは責任を負わない」と表明した。これら企業の発展はあの侵略戦争を足がかりにしたもので、中国人の鮮血に染まっている。しかし、かれらは今も悔いる気持ちがみじんもない。
――日本は、強制連行をめぐる賠償訴訟でひとたび原告側が勝訴すると、連鎖反応が起きるのではないかと心配していないか。そのために、あの手この手で妨害しているのではないか。
康健さん:その通りだ。現在のところ、日本政府や事件に関連する日本企業は根本から戦争責任を取るつもりはない。日本の裁判官の多くも、日本政府や日本企業に責任を負わせるつもりはない。このため、ない知恵を絞ってあのように薄弱な根拠を探し、手中の権利を使って不当な裁判を行った。
――今後、第2次世界大戦中に中国人に強制労働を迫り、しかも反省しない日本企業を制裁する手を考えるか。
康健さん:私は担当弁護士の1人として、長い間この問題を考えている。むやみかつ短絡的に日本製品排斥を訴えることはできないが、戦争責任のある、反省を知らない日本企業に寛大になることもできない。現在われわれができることは、戦争責任のある一連の企業を明らかにし、少なくともかれらに対し、当時の犯罪行為がもたらした恥辱を認識させなければならない。かれらにこうした感覚がないからこそ、責任を取るつもりがないのだ。自分が罪人だと思わない人が、責任を取ろうとするだろうか。このため、かれらに自分の罪を認識させることこそが、第一歩になる。
「人民網日本語版」2005年7月5日