日本の安倍晋三首相は8月上旬の内閣改造で「仕事人内閣」と話していたが、筆者はBS-TBSの番組を見て、この内閣の唯一の「仕事」とは政権を守り、選挙を待つことだと予想していた。この予想は不幸にも当たってしまった。(筆者:蒋豊 日本新華僑報編集長)
9月25日午後、安倍首相は臨時国会の冒頭で衆議院を解散し、総選挙が10月10日公示、22日投開票で行われることを正式に宣言した。まだ政権運営から2カ月もたたない新内閣はすぐに解散となり、日本の政局には再編が生じることになる。当然ながら、安倍首相はなぜこれほど慌ただしく、衆議院を解散するのかと疑問に思う人もいるだろう。
まず個人を見ると、各種スキャンダルに巻き込まれ、安倍政権の支持率が急落し、「安倍一強」の神話が崩壊したため、総選挙により現状を打開する必要がある。
周知の通り、安倍夫妻が森友学園・加計学園の「土地取得問題」のスキャンダルに陥ると、日本メディアは安倍首相の傲慢さと民意の無視を痛烈に批判し、野党は説明責任を果たすよう厳しく追及した。与党内の派閥も復活し、「首相が党の足を引っ張っている」という声があがるようになった。内外の問題を受け、安倍首相は内閣改造に取り組み、さらに衆院会議後にこれらの問題について「真摯に説明する」と約束していた。しかしこれらの問題は、永遠にはっきり説明できない。それならば手段を考え、印象を薄め忘れさせる必要がある。そこで安倍首相は衆院解散を宣言し、説明すべき対象を消去してしまった。
また自民党の選挙体制によると、安倍総裁の支持がなければ自民党議員と候補者は選挙で豊富な政治資源を手にできなくなり、当選の可能性が大きく下がる。安倍首相はこの措置により、党内の「不服者」を縛り付けようとしている。
次に野党を見ると、安倍首相の衆院解散により、そもそもバラバラだった野党がさらに大きな闘争に陥ることになる。
安倍首相が衆院解散を宣言すると、国政進出を目指していた東京の小池百合子都知事が直ちに行動に出て、「希望の党」を立ち上げた。さらに150人の候補者を擁立する予定だ。直ちに勝利を手にするため、小池氏は新人育成という古い道を歩まず、その他の野党からの引き抜きを重視している。小池氏の「人材募集」の標的となっているのは、主に首都圏を中心とする野党の国会議員だ。「日本のこころ」の重鎮、中山恭子氏は24日、約10人の議員を率いて希望の党に入党する態度を示した。民進党の重鎮、元拉致問題担当大臣の松原仁元氏も、離党し希望の党に入る意向を示した。民進党の衆院議員、柿沢未途氏も鞍替えする可能性がある。「結党」「離党」「叛党」という一大劇が、日本の野党内で次々と上演され、結果的に野党が弱体化している。