東日本国際大学・西園寺一晃客員教授
中米間の調停役こそが日本の生き残る道――西園寺氏
良き隣人となることが双方の最大の安心につながる――汪氏
西園寺氏は講演で、「世界が新たな秩序の構築という大転換を迎える中、日本政府は外交安保と経済を切り分けて関係構築をしようとしている」と評し、「右手で中国をなぐり、左手で握手を求めている。このような不安定な両国関係は長続きしない」と憂慮を示しました。そのうえで、「日本は米中のはざまにある。米国とも中国とも良い関係を築くため、米中間に大きな矛盾が生じた際には、日本はあらゆる方法で両者の調停を行い、その緩和に努めるべきだ」と示し、それこそが日本の唯一の生き残る道だと指摘しました。
汪婉氏の講演は「対立か協力か インド太平洋地域における日本の地政学的・経済的選択」と題したもので、両国の一衣帯水の関係と現状について、日本国内で公開された資料を用いた説明が行われました。汪婉氏はそのうえで、「これまでの15年間で、中国経済の世界への貢献度は27%に達した。米国も日本も、中国との相互依存の重要性を正しく認識する必要がある」と指摘し、さらに、日本国内で台頭しつつある「経済安全保障」の動きに懸念を示し、「平和的な中日関係が崩壊すれば、日本経済も壊滅的な打撃を受ける」と警鐘を鳴らしました。結びには、「良き隣人として共に発展を目指すことが、双方にとって最も安心できることだ」と西園寺氏の発信に呼応しました。
「良き隣人めざすべき」 国交正常化50周年に向け、日中民間交流対話がオンライン開催_fororder_s1
東日本国際大学・西園寺一晃客員教授
人類史上初の、豊かで強くありながらも平和的な国の誕生に期待する――西園寺氏
より成熟して安定した中日関係を構築すべき――汪氏
北京大学国際戦略研究院・汪婉理事
質疑応答の部では、「中国が今後、国際社会で果たす役割」について、西園寺氏は、「中国は総合国力において21世紀中に米国を追い越すだろう」と見通し、「対外侵略と覇権主義というのが、歴史上の『強国』が共通して歩んできた道だった。しかし中国には、人類史上初の、豊かで強くありながらも平和的な国家になるよう期待する。それを決めるのが中国の若者だ」と話しました。
対して、「中国が望む日中関係」という質問に対し、汪氏は「アジアの近代化には、西洋が武力をもって価値観などを押し付けたという事実がある。しかし、漢字や論語、儒教、お箸など、中国から日本に伝わったものの中には、武力によって押し付けたものは一つもない」と歴史を振り返ったうえで、「56の民族からなる今の中国は、漢字、儒教文化、漢民族の商業文化などにより、民族が融和して出来上がった国だ。世界各国は、制度や価値観の違いを乗り越え、共に話し合い、共に建設し、その成果を共に享受すべきだというのが、中国の取る立場であって、習近平主席の主張でもある」と話しました。さらに、中日両国は来年で国交正常化50周年を迎えるのを契機に、「初心を振り返り、半世紀にわたる中日関係の教訓や経験を十分に総括し、より成熟して安定した中日関係を構築すべきだ」と訴えました。