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japanese.china.org.cn |22. 05. 2024

『世界遺産 大シルクロード展』を訪れて=小林正弘氏

タグ: 世界遺産  シルクロード 仙台 博物館
中国網日本語版  |  2024-05-22

文・写真=小林正弘

清華大学法学博士 

Genuineways Law Firm パートナー


5月初旬、久しぶりに北京から仙台に里帰りした際に、日中友好平和条約締結45周年を記念して昨年9月から日本国内6都市巡回展示をスタートした『世界遺産 大シルクロード展』を訪れる機会に恵まれた。仙台駅から電車で25分、長閑な田園風景が広がる国府多賀城駅に隣接する東北歴史博物館には平日にも関わらず多くの市民が訪れ、熱心にシルクロード沿線地域の貴重な文物の数々に見入っていた。

草原、砂漠、雪山を往来する命がけの交易を担った隊商の活動を物語る勇壮な胡人庸や駱駝(唐・7-8世紀・洛陽博物館、西安博物館)、蹄を上げ嘶く青銅製の車馬儀杖隊の陣列(後漢・1-3世紀・甘粛省博物館)、「シルクロードの東の終着駅」と呼ばれる正倉院にも同時期の類例がある空色のガラス製貼付円文高脚杯(6-7世紀・新疆ウイグル自治区博物館)やふくよかな樹下美人図(唐・8世紀・新疆ウイグル自治区博物館)など、シルクロード沿線の洛陽、西安、蘭州、敦煌、新疆地域など中国27の博物館・研究所から厳選された金銀器、青銅器、ガラス、陶磁器、壁画、染織、経典、仏像など、日本の国宝に相当する一級文物44点を含む約200点の貴重な文物が敦煌莫高窟や火焔山などシルクロードの美しい写真と共に展示されている。2000年の時を刻み直線距離でも約1万3千キロ、地球の一周の3分の1におよぶ壮大なスケールで当時の人々の異文化交流の様子と文明融合の精華を伝える圧巻の展示品を前にすると、まるで自分が一人の旅人になったように、シルクロードの歴史とロマンに魅了されて時の経つのも忘れてしまう。

「民族往来の舞台」、「東西文明の融合」、「仏教東漸の遥かな旅」との三大テーマで構成された展示品を一つ一つ丹念に見ていくと、シルクロードが絹に代表される単なる交易ルートであっただけでなく、仏教の伝来ルートであり、東西文明の交流の道であったことが実感される。ユーラシア大陸を横断するシルクロードはかつて経済、文化、思想の交流の大動脈となり、東西文明の融合によって新しい文化を生み出した。現代においてもなお人類史に残る至宝として輝きを放ち続けている文化遺産に学ぶべきことは非常に多い。

同展は、中国側の全面的な協力により、2014年に「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」が世界遺産に登録後、中国国外で初めての大規模展覧会である。多摩美術大学理事長の青柳正規氏は同展の開催を歴史的快挙であると評価し、その背景について同展を企画した東京富士美術館がこれまで「中国敦煌展」「北京・故宮博物院名宝展」「大三国志展」など様々な企画を通し、中国の諸機関と強い信頼関係を築きあげてきたこと、同美術館の創立者である故・池田大作氏のリーダーシップのもと、創価学会が長年、中国との文化交流を重視し、地道な取り組みを続けてきたことが大きく影響していると指摘している。

少年時代からシルクロードへの憧憬を抱き、敦煌仏教遺跡の保護に生涯を捧げた「敦煌の守護神」常書鴻氏(元敦煌文物研究所所長)と敦煌をテーマとして対談集を出版するなど歴代の敦煌文物研究所所長等と交流を重ねてきた池田氏は、かつてシルクロード展構想について以下のように語っている。「シルクロードを介して東西に伝播した文物を一堂に集めて、文化交流の大展覧会が開催されるならば、人びとは無言のうちにも平和の尊さをかみしめることになるに違いない。…戦乱にでもなれば、貴重なる文物が灰燼に帰してしまうことを、いやというほど思い知らされてきた…..これからの時代は、人類の文化遺産を21世紀の後継者に伝えていくという明確なる強い意志をもたなければならない。それらの遺産が照り返す英知の光を後継していくことが、平和への砦ともなり、また21世紀への光源ともなりゆく」(池田大作著『敦煌を語る』)と。

世界の各地で分断と紛争が混迷を深める中、民衆次元の文化交流を着実に積み重ね、人間の交流、心の交流によって人々に地球文明的な一体感を広げ、民族や体制の違いを超えた新しい平和の文化を生み出す「平和のシルクロード」の構築が今こそ必要な時である。同展が今後、日本だけでなく世界各国で展開され、一人でも多くの人々に感動とロマンを与え、中国以外の博物館の展示品も一堂に出展される地球規模の平和文化イベントへと大発展することを心から願ってやまない。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年5月22日