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japanese.china.org.cn |24. 07. 2024

中国の新時代を開く「針路」=木村知義氏

タグ: 三中全会 改革深化 中国式現代化
人民中国  |  2024-07-24

「中国式現代化」の捉え方 

加えて、改革を深化させることと「中国式現代化」あるいは「中国の特色ある社会主義」というものが不即不離、一体のものだということが見えてきます。ここで大事なことは、中国における社会主義、あるいは社会主義市場経済は、米欧日本などの資本主義経済とは根本的に異なる原理・原則に基づいて動いているということです。ですから、ここで言う「中国式」あるいは「中国的」ということの深い意味を理解できなければ、中国の実像は見えてこないと言うべきなのです。われわれが日々肌を通して痛感している、いまや行き詰まりに苦悶する米欧日などの「欲望の資本主義」の「原理」あるいは「尺度」で中国の社会主義市場経済を測ろうとする限り、中国の実相は見えないというわけです。 

そして、今回の「三中全会」では、未来に向けて、この「中国式」「中国的」ということが貫かれること、そのことが中国と世界にとって重要な意味を持っていることが示されました。 

「中国式現代化は平和的発展の道を歩む現代化である」として「揺るぐことなく独立自主の平和外交政策を実施し、人類運命共同体の構築を推進し、全人類共通の価値を実践し、グローバル発展イニシアチブ、グローバル安全保障イニシアチブ、グローバル文明イニシアチブを実践し、平等で秩序ある世界の多極化と互恵的・包摂的な経済グローバル化を唱導し、外事活動の仕組みの改革を深化させ、グローバル・ガバナンス体系の改革と整備に積極的に参与し、それを牽引し、国家の主権・安全・発展の利益を断固として守らなければならない」というのです。 

また、「中国式現代化は物質文明と精神文明のバランスがとれた現代化である。文化への自信を強め、社会主義の先進的文化を発展させ、革命の文化を発揚し、中華の優れた伝統文化を伝承し、情報技術の急速に発展する新たな情勢にいち早く対応し、規模壮大な優れた文化人材陣の育成・形成を促し、全民族の文化革新・創造の活力を引き出す必要がある」とも述べて、「中国式」「中国的」ということが中国の在り方を総体として包み込む重要な鍵となっていることを示しています。 

公有制経済と非公有制経済 

これから新たな段階の「中国の特色ある社会主義」を建設、構築していく上で避けて通れない課題となる公有制経済と非公有制経済の在り方についても、重要な提起がされています。「市場メカニズムの役割をよりよく発揮させ、より公平でより活力のある市場環境をつくり出し、資源配分において効率の最適化、効果の最大化をはかり、『緩和の柔軟性』を保ちながら『管理の徹底』をはかり、しっかりと市場の秩序を維持して市場の失敗を補完し、国民経済の循環を円滑化し、社会全体の内生的原動力とイノベーションの活力を引き出す必要がある。揺るぐことなく公有制経済をうち固めて発展させ、揺るぐことなく非公有制経済の発展を奨励・支援・リードし、各種所有制経済が法に基づいて生産要素を平等に使用し、市場競争に公平に参加し、法律による保護を同等に受けられるようにし、各種所有制経済の優位性の相互補完と共同発展を促す。全国統一大市場を整備し、市場経済の基礎的制度を整備する」と述べています。 

「揺るぐことなく」という言葉に込められた意味をどう読み取るのか、ここには、新たな社会主義像を創造的に生み出していくのだという決意が込められていると感じます。これまで、こうした高い段階の社会主義を実現した経験は皆無です。すなわち、中国が目指す新たな段階の「中国の特色ある社会主義」とは、前人未到の目標だと言って過言ではないでしょう。しかし、いま、中国はそこを目指して歩みを進めようというのです。人類史的なチャレンジに船出するという決意が示されているのです。そのために英知を集め、勇を奮って、目標の実現を目指して歩みを進めることを世界に向けて表明しているのです。ここにも、今回の「三中全会」が歴史を画する位置付けとなる意味が表れていると言えるでしょう。 

問われる日本の私たち 

ここまで書いてきて残念と言うしかないのですが、「三中全会」を報じる日本のメディアを前に実に深刻に考えさせられました。 

「習氏の愛好映す三中全会、中国式説明では世界に通じず」とコラムの筆を執った元中国総局長。「中国経済が抱える深刻な課題への処方箋は示されなかった。国際社会の懸念は残されたままだ」と書く社説。北京と東京を結んでライブで報告したあるメディアの中国総局長は「中国式現代化というが、(コミュニケを)一生懸命読んでみたがまったくわからない」と冷笑まじりに語りました。 

中国語も自在で、普段から中国をウオッチしている中国専門記者があまたいるはずなのですが、いまだにこの程度の中国認識がまかり通る日本のメディアなのかと情けなくなりました。 

なぜこんなことを述べるかといえば、中国と向き合う営為は、すべからく、日本のこれからの行く道を誤ることなく定めるためであり、中国を知ることは、日本を知り、世界を知ることに他ならないという問題意識に立つからです。 

「三中全会」閉会の翌日7月19日午前、記者会見して決定事項、審議の詳細について説明した中国共産党中央政策研究室の唐方裕副主任によれば、「『決定』は15部分60カ条からなり、三つのカテゴリーに分かれており、300以上の重要な改革措置が盛り込まれている」ということです。また、経済低迷の要因となっている不動産不況に関し、党で経済政策を担当する中央財経委員会弁公室の韓文秀副主任は、「融資や土地、税など関連する制度の見直しを進め負債拡大に頼った高リスクの経営方式の弊害を取り除く」と説きました。つまり諸課題については周到に対策が立てられ、施策が準備されているということなのです。われわれが抱く中国の現況、とりわけ経済の困難に対する吟味、検討と対策、施策の立案については、「三中全会」開催に至るプロセスも含め、専門家を交えて相当詰めた議論が重ねられたことがうかがえるのです。すなわち、今回の「三中全会」は、明らかに中国のひと時代を画する重要な節目をなす「三中全会」として位置付けられるということなのです。 

今風に言えば、中国のこのパラダイム転換を見逃してはならない、でなければ、日本の今後の成長、発展は望むべくもないと痛切に感じます。目を凝らし、そしてなによりも謙虚、真摯に中国の現実に分け入って、中国と向き合わなければならない、中国とはそれだけ奥の深い存在であると思います。 

「三中全会」が問い掛けるものは、単に中国のこれからがいかなるものであるかにとどまらず、あらためて、われわれの中国観総体が問われる構造にあるということを知らなければならないと思います。このことを肝に銘じることこそが、日本のわれわれの喫緊の課題だと考えます。 

木村知義 (きむら ともよし) 

1948年生。1970年日本放送協会(NHK)入局。アナウンサーとして主にニュース・報道番組を担当し、中国・アジアをテーマにした番組の企画、取材、放送に取り組む。2008年NHK退職後、北東アジア動態研究会主宰。  

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