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japanese.china.org.cn |09. 09. 2024

デジタルスマート都市建設で進化を続ける鄭州市を訪問して

タグ: デジタルスマート技術 文化 歴史 鄭州
中国網日本語版  |  2024-09-09

文・写真=小林正弘

清華大学法学博士 

Genuineways Law Firm パートナー

本年7月の三中全会で採択された決定では企業がデジタルスマート技術、グリーン技術を用いて伝統産業のグレードアップを行うことをサポートすることが強調された。「デジタルスマート技術(中国語:数智技術)」とはデジタル化とスマート化の有機的融合を指す。デジタルスマート技術の応用は新たな工業化の旗印とされ、「新たな質の生産力」を構築するため重要な手段の一つと位置づけられている。中国政府はAI技術を応用した製造業のデジタルスマート化を推進し、伝統産業の転換とアップグレードを行うことによって、より高い水準での経済発展を目標とし、様々な政策によって力強く後押している。

8月下旬、河南省国際文化交流センターのご厚意によって、人口約1300万人、中原に位置し、多くの王朝が都を築いた4千年の悠久の歴史を刻む河南省鄭州市を訪れる機会を得た。今回の視察を通じて、緑豊かで高速鉄道2時間圏内で4億人の生活・消費地域にアクセスできる交通の要衝としても知られる鄭州市が、今まさに新たなデジタルスマート都市建設を通じて伝統産業の転換とアップグレードを急速に推進している状況を目の当たりにすることができた。

鄭州市では、鄭州都市部、開封市、許昌市のデルタ地帯の中心に管轄面積747k㎡の鄭州航空港経済総合実験区を建設している。同実験区内の鄭州新鄭国際空港は2時間以内航空圏内は全国90%以上の人口と市場をカバーし、陸路交通網との接続や「空のシルクロード」構想の推進により、将来的には世界一の航空貨物輸送ハブとなる潜在性も秘めている。今回はすでに建設された125k㎡のエリアにある河南鄭州航空港市民センターにてその概況を学ばせて頂いた。同実験区には2023年にファックスコンの世界最大iPhone工場および電気自動車最大手BYDの最先端新エネルギー車生産工場などが稼動しており、住民90万人が生活し、2023年度のGDPは1294.9億元(約2.5兆円、前年比13.1%増)に達している。BYD工場は最先端の自動化生産ラインとスマート製造システムを備え、溶接作業の98%がロボットによって行われており、年間100万台を越える生産量を誇るという。関係者は、鄭州市では以前は大型トンネル掘削機やトラックの生産などの伝統的な製造業がメインであったが、新エネルギー車、新材料、バイオ医薬、宇宙航空など先端産業の育成・発展を今後の新たな成長のエンジンにしたいと語っていた。

鄭州市は中国八大古都の一つとされており、遺跡や文物の発掘と保護に力を入れているだけでなく博物館などでは「デジタルスマート技術」を駆使した体験型の展示が多く採用されており、それを楽しむ多くの市民の姿が印象に深く残った。3600年前に構築された城壁跡を展示する鄭州商城東城垣遺跡博物館では実際の城壁一面を大スクリーンとして歴代王朝の興亡と城壁の成立ちを鮮明かつ色彩豊かな3Dデジタル映像で上映しており、その迫力に驚かされた。その映像にはAI技術により復元された商(殷)朝のデジタル湯王も登場し、今後は観客との対話もできるように調整中だ。

中原科技城投資促進センターでは、2001年から黒川紀章氏による中国伝統文化「如意」を二つの人工湖とそれをつなぐ運河で表現した壮大なグランドデザインに基づき都市開発を進めている鄭東新区の発展状況を学ぶことができた。同区では既に2022年から自動運転バスが運行されており、360度の展望パノラマからは建設の槌音止まぬ来年完成予定の龍湖金融島(副CBD)を望むことができた。

百聞は一見に如かず。悠久の歴史をしっかりと継承しながら人にやさしいデジタルスマート都市建設を推進する鄭州市に学ぶべきことは非常に多い。河南省の歴史文化遺産や食文化も非常に魅力的であった。末筆ながら今回の貴重な機会を提供して下さった河南省国際文化交流センターの方々に深く感謝したい。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年9月9日