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japanese.china.org.cn |19. 11. 2024 |
林江東岩彩画展と日中交流=小林正弘氏
文=小林正弘
清華大学法学博士
Genuineways Law Firm パートナー
(撮影:小林正弘氏)
錦秋の11月初旬、工場跡地に芸術家がアトリエやギャラリーを構えるアートストリート・798芸術区を訪れた。早朝、澄んだ空気の中、ひっそりと静まりかえる芸術区内の景観やストリートアートを楽しみながら林江東先生の岩彩画展「卓然天成」に向かった。
先生は1968年に北京大学東洋言語文学部(日本語専攻)を卒業し、1981年に同大学経済学修士を取得後、80年代初めより国家経済委員会など数十年に渡り日中経済交流・提携業務にご尽力された。その間も、幼少期からの画家となる夢を持ち続け、2000年には中央美術学院、北京画院にて中国画を学び、2002年からは在日本中国大使館に常駐し、中日文化交流に携わりながら日本画への造詣も深められ、2006年に中国に帰国後、執筆活動や美術創作活動に邁進されて現在に至る。
(撮影:小林正弘氏)
開館したばかりギャラリーに足を踏み入れると、ビビッドカラーの抽象画が出迎えてくれた。活力にあふれ、生き生きとした絵を眺めていると、自然と元気が沸き、林江東先生の精神世界へと引き込まれていくように感じられた。静かなギャラリー内に展示された渾身の作品を一つ一つ鑑賞していくと、林先生の画風の多彩さに驚かされる。顔料を振りかけるダイナミックな画法は、偶然的な要素も含み、モチーフになっている海、山、花、湖などの自然風景は見るものに懐かしさや生命の躍動を感じさせる。これは西洋画とも中国画とも言いがたい林先生独自の画風だと感じられた。
(撮影:林江東氏)
林先生が到着し、画風について質問すると、これまで見てきた美しい景色や様々な体験が自身の脳裏に蓄積されており、それらに着想を得て創作を行っていること、技法は顔料に鉱物を用いる岩彩画であること、岩彩画は元々、古代中国の発祥のもので、千年以上の時を経ても色あせることのない敦煌壁画などでも用いられていたが、宋代に植物を顔料する水墨画の流行によって中国ではその技法は失われてしまったこと。しかし、岩彩画は遣唐使や遣隋使によって日本に伝えられ、その後、日本画の母体となり、独自の発展を遂げたものであり、その歴史自体が中日文化交流の歴史と重要性を物語っていることなどを熱心に語ってくださった。
(撮影:王利氏)
その後、懇意させて頂ている先生方や友人も到着し、林先生を囲んでの美術談義で盛り上がった。中国人の先生方は長年、各分野で日中交流に尽力されて来た方が多く、林先生の作品を前に「これは富士山とその湖を描いたものだ」と着想の謎解きをするなど、日本の美しい風景を連想し、その光景をみなで懐かしく振り返りながら心温まる歓談のひと時を過ごすことができた。
林先生は2021年に数十年来の日本滞在や旅行での体験を基にした随想集「東瀛行-邂逅中国文化」」を中国で出版なさっている。そこでは日本で目にした庭園、寺院、人文、歴史など各分野に息づく中国古代文化の美しさを「真珠」にたとえ、これを大切に拾い上げ、心を込めてつなぎ合わせれば、その輝きが架け橋となり、両国の草の根の相互理解をいっそう深めることができるとの思いがつづられていた。文化に国境はない。中国文化に根ざしながらも、西洋絵画、そして日本絵画に真摯に学び、それらの良さを見事に融合させ、一度は途絶えた中国岩彩画に新たな息吹をもたらす林先生の創造的な生き方に日中交流の進むべき道を教えられた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年11月19日