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japanese.china.org.cn |17. 12. 2024 |
<粵港澳大湾区の新しいチャンス>縮まる都市同士の距離
王朝陽=文
「石岐乳鴿は残り829羽」
今年の国慶節連休(10月1~7日)期間中、広東省中山市にある老舗レストラン石岐佬菜館は大繁盛し、客たちは店内に掲げられたモニターに表示されている乳鴿(小バト)の現在の数に釘付けだった。モニターの数字がまたたく間に変わるたびに待っている客たちは神経を尖らせる。なぜならその数字が減るということは、乳鴿が誰かの胃袋に収まり、自分は手ぶらで帰ることになるかもしれないからだ。店の駐車場は市外のナンバープレートの車だらけで、中でも多いのが粤B(深圳ナンバーの頭文字)で、次が香港ナンバーとマカオナンバー、そして粤A(広州ナンバーの頭文字)の車だ。
海を渡ってでも食べたいハト
中山乳鴿の7月からの大人気は、6月30日に正式に開通した「深中通道」と深い関わりがある。伶仃洋をまたぐ全長24㌔の海上橋は珠江河口東岸の深圳と西岸の中山をつなぎ、バスで片道5時間だった所要時間を一気に30分に短縮した。交通がスムーズになったことで、深圳や香港の食道楽たちが大量に中山に押し寄せ、ご当地グルメである乳鴿も美食家たちの定番メニューになった。
「今まで市外から来るお客さんはたいてい広東省西部からでしたが、今回の大半が深中通道で珠江河口の東岸から来たお客さんでした。彼らは支払い能力が高く、テーブル単価もこれまで以上です」と石岐佬菜館オーナーの張偉雄さんはうれしそうに語る。深中通道開通で店の営業も変化した。「7月に入ってから連日大盛況です。これまでは11時から営業を始めて20分程度で満席になっていましたが、今では前倒しでオープンしているのはもちろん、1分もたたずにお客さんでいっぱいになります」
10月7日に深中通道は開通100日目を迎えた。広東省交通運輸庁のデータによると、深中通道の100日間の通行台数は延べ890万台で、10月1~7日の通行台数が延べ106万台、1日は開通以来最多の延べ15万5000台だった。広東省文化観光庁によると、深中通道がもたらした大規模な旅客流動によって、今年の国慶節中の中山市の観光客数は前年同期比102・36%増の延べ341万3800人で、観光収入は19億6800万元だった。
珠江の東岸「深莞惠(深圳、東莞、惠州)」と西岸「珠中江(珠海、中山、江門)」の二大都市群をつなぐ唯一の直通道路として、深中通道がGBAにもたらすのは観光収入だけにとどまらない。両岸都市はそれぞれ独自の発展の特色を持っている。東岸は先進製造業の実力が強大で、科学技術イノベーション能力が高く、産業チェーンとサプライチェーン体系が整っているが、発展空間に限りがあり、生産要素のコスト高という問題に直面している。西岸は利用・発展可能な産業空間が広大で、土地の使用やリースにかかるコストが比較的低いものの、産業のモデルチェンジ・グレードアップをして現地の発展をけん引する必要に迫られている。「深中通道の開通はGBA東西両岸の生産要素の流動と融合的発展に役立ち、(東岸の)深圳と香港のサービス業やハイテク産業がもたらす発展のチャンスを西岸都市に広めることを推し進める新たなきっかけとなった」と語る曁南大学経済学院教授で特区港澳経済研究所副所長の謝宝剣氏は、「深圳本部+中山製造」「深圳研究開発+中山実用化」などの新たな産業協力モデルの実現も間近だと考える。
新たな生活始める「渡り鳥」
深中通道はGBA内部の融合的発展を促す象徴的プロジェクトの一つだ。「綱要」発表後の5年間、より緻密に張り巡らされたGBA内の交通網は現地の経済発展を効率的かつスムーズに進める上で強力なサポートとなり、GBAの「1時間生活圏」を徐々にビジョンからリアルへと変えた。
広佛南環(佛山西駅―広州番禺駅)と佛莞(広州番禺駅―東莞西駅)都市間鉄道の運営が5月26日に正式に始まり、開通済みの佛肇(佛山西駅―肇慶駅)と莞惠(東莞西駅―惠州小金口駅)都市間鉄道と連結し、GBA内で全長258㌔の交通大動脈をつくり、惠州、東莞、広州、佛山、肇慶の5市を東西で結び付けた。列車の最高速度は時速200㌔に達し、駅の総数は39駅、平均運行間隔は約26分だ。路線図の中央にある広州番禺駅から出発した場合、近くの佛山や東莞に30分で着き、東西両端にある惠州と肇慶には60分で着く。
仕事でいつもGBA内の都市を行き来している香港人の程建華さんは、「今列車の発車時刻の間隔はさらに狭まり、各都市への直通路線は多くなり、旅行も出張もより楽になりました。こういうふうに便利になる『1時間通勤圏』で、より多くの香港人が北上して仕事や生活をするようになるでしょう」と期待を述べた。
この都市間鉄道は香港・マカオの人材を北上させているばかりか、遠距離通勤(3)する「渡り鳥」族を大幅に身軽にした。
佛山で暮らし広州で働く謝暉さんは、通勤で苦しんでいた「渡り鳥」族の一人だ。2018年に佛山に家を購入したが、その新居は広州の職場と70㌔以上離れており、毎日往復5時間余りもの通勤時間は重荷以外の何物でもなく、広州に小さな部屋を借りるしかなかった。都市間鉄道(4)の運営が正式に開始した初日、謝さんは矢も盾もたまらずその最新の通勤方法を試した。「通勤時間が大幅に減っただけではなく、通勤交通費もだいぶ安くなりました。これまでは広州と佛山を車で往復したら月6000元余りかかりましたが、都市間鉄道に乗れば2000元しかかかりません」。時間と交通費を計算した彼は、部屋を引き払い、佛山の新居に引っ越して新たな生活を迎えるつもりだ。
GBAの鉄道の営業距離及び着工距離は2035年までに5700㌔に達し、全ての県級以上の都市をカバーする予定だ。交通網構築が加速し、GBAの都市構造と住民の外出、仕事、生活モデルも生まれ変わっている。朝は広州で飲茶を食べ、昼は中山で小バトを味わい、夜は香港のビクトリアピークで夜景を楽しむというのが現地の人々にとって当たり前になりつつある。
「人民中国インターネット版」より2024年12月17日