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japanese.china.org.cn |20. 01. 2025 | ![]() |
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USスチール買収計画禁止命令と日本の安全保障戦略のあり方
文=小林正弘・清華大学法学博士/Genuineways Law Firmパートナー
1月3日、バイデン元大統領が日本製鉄(日鉄)によるUSスチール買収をアメリカの国家安全保障上の懸念を理由に禁止する命令を発表した。報道によると、その背景として次期中間選挙を見据え約85万人の組合員の集票力を持つ全米鉄鋼労働組合(USW)からの支持を固めるための政治的判断、USスチール買収を目指しているアメリカ鉄鋼大手クリーブランド·クリフスの日鉄買収反対のロビー活動の影響、アメリカを象徴する企業が日本企業に買収されることへ不満(経済的ナショナリズム)等が指摘されている。1月6日に同命令を不当として日鉄とUSスチールがバイデン元大統領らを提訴したことから、今後は国家安全保障のリスク判断の正当性についてのアメリカ司法の判断が注目を集めていくことになる。
今回のバイデン元大統領による決定は、過去の日本に対する半導体産業規制に続き、日本人に「国家安全保障」とは当然のことながらアメリカ人の利益を最優先とするものであって、日本が同盟国であることを理由にアメリカが無条件に日本企業に経済活動の自由を保障するわけでないことを再認識させるものといえよう。この傾向はアメリカファーストを標榜するトランプ政権が誕生したことによって今後より鮮明になるものと考えられる。
第二次世界大戦の敗戦から80年の時が経過し、戦争を体験したことのない世代が大多数を占めるようになった今日、現代における日本にとっての最善の国家安全保障とは何かを深く議論し、今後の日本の歩むべき方向性を自ら模索すべき時が来ているように思える。
日米同盟の文脈で語られる国家安全保障といっても日米間で常に利益が一致すると考えるのは幻想である。と同時に、グローバル化が進み、国境を越えた感染症のパンデミックや地球温暖化による自然災害が世界各地を席巻する状況において、一国だけの繁栄や平和はありえず、自国の利益だけを最優先する国家安全保障の考え方自体がすでに時代遅れの遺物であることに気づく必要がある。
このような認識の下、日本は新たな視点で国家安全保障を再考することが求められている。特に歴史から学び、現在を見据えることが必要だ。第二次世界大戦で多くの国を侵略し、かつ唯一の被爆国となった日本はその歴史を決して忘れず、戦争の愚かさと核の恐ろしさを後世に伝え続ける責務がある。右顧左眄することなく、平和主義を堅持してあらゆる国々と友好関係を拡大し、軍事同盟の拡大によるのではなく、多国間対話メカニズムの構築や経済交流の継続·発展等によるアジア地域の安定と信頼関係の強化に尽力し、世界平和の実現に貢献する使命がある。それが日本にとって最善の国家安全保障であり、平和国家として進むべき道ではないだろうか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年1月20日
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