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japanese.china.org.cn |17. 03. 2025

「日中お笑い親善大使」ねんど大介さんの飛び込みライブに参加して

タグ: 芸人 お笑い ライブ
中国網日本語版  |  2025-03-17

文=小林正弘

清華大学法学博士

Genuineways Law Firm パートナー

3月初旬の週末、「中国で一番人気がある日本人芸人·ねんど大介さんのお笑いライブがある」と友人に誘われ、北京市内の日本料理屋を訪れた。カウンターに座り元気に談笑しているかっぷくのよい男性がねんど大介さん(1973年生まれ、長崎出身)であった。底抜けの明るさと謙虚な立ち居振る舞いは初対面の人とでも一気に心の距離を縮める魅力が感じられる。ねんどさんは日本大使館での天皇生誕レセプションで各国来賓にお笑いパフォーマンスを披露する訪中の重大なミッションを終え、現地で飛び込みライブを展開されているところであった。

休日のお昼時とあって会場には少し空席もあったが、「空席以外は満席!!!」と空席すらも笑いのネタにしてしまう。ねんどさんの勢いと楽観主義に会場も大爆笑。子供を相手に読心術トークをしながら本格的な紙風船の傘回しやバルーンアートを披露し、子供も親も同時に笑顔が弾ける。今回は日本語でのパフォーマンスであったが、言葉·文化·習慣が異なる中国の地で、中国語を駆使して多くの人々を心から笑わせることはそう簡単にできることではない。その裏にはどれほどのご苦労と挑戦があったことだろう。

ライブ終了後、ねんどさんに中国との関りについて伺う機会に恵まれた。ねんどさんは19歳の頃、訪日中の中国雑技団の裏方スタッフをしており雑技団の女性に一目惚れしたことをきっかけに、独学で中国語の勉強を開始。思いを打ち明けるために仕事を辞めて中国まで女性に会いに行くも敢え無く玉砕。しかし、彼女を通じて中国が好きになった、ねんどさんはその後も幾度も中国を訪れることとなる。中国で日本料理屋の店長をしながら雑技団の一員となり、中国雑技の極地に触れつつ本場の中国語と雑技を磨いた。現地の飲食店などに飛び込み中国人相手にお笑いパフォーマンスを披露する中で人気が上昇、中国のテレビ番組や人気ドラマに出演する機会も増え「中国で一番人気のある日本人芸人」へと成長してゆく。しかし、靖国参拝や釣魚島問題による日中関係の緊張などで活動の場を失うなどその人生は幾度となく荒波に襲われている。その中で、自分の人生を変えてくれた大好きな中国と母国日本との間で悩みながらも、「悲しみをバネに」「ピンチはチャンス!やれることをやろう!」をモットーにどんな状況の中でも体当たりで新たな活路を切り開いて来られた。日本でワハハ本舗の一員としての中国本格雑技を披露しつつ日本のお笑いも習得、自称「日中お笑い親善大使」として中国再移住、夢だったNHK中国語講座の講師担当、「笑顔届け隊」として中国大陸部の日本人学校訪問、台湾省への芸能進出、中華圏へ日本の魅力を紹介するインバウンド事業など、逆境に遭うたびに活躍の場を広げ、民衆レベルでの相互理解と交流の促進に東奔西走されている。数々の「悲劇」や「ピンチ」を持ち前の楽観主義と強いハートでお笑いのネタに変え、出会う人々に清々しい笑いと明日を生き抜く活力と勇気を届ける、ねんどさんの冒険に満ちた人生に深い感動を覚えた。

今後の目標について尋ねると、認知症の親を介護する家族をテーマにしたお笑いを思索しているとのこと。ご自身も認知症の母を持つねんどさんは、「認知症の介護は家族にとって想像を超える負担であるが、その中でも認知症の親とのコミュニケーションが面白いと感じる瞬間がある。そして高齢者問題は日中両国の人々が抱える共通の悩み。自分の笑いを通じて少しでも日中の認知症を抱える家庭を元気にできたら」と熱く語って下さった。日中お笑い親善大使ねんど大介さんの今後の益々のご活躍とご健康を心から祈りたい。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年3月17日