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japanese.china.org.cn |13. 05. 2025 | ![]() |
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身近な北京を再発見ー文化香る報国寺散策=小林正弘氏
文・写真=小林正弘
清華大学法学博士
Genuineways Law Firm パートナー
「報国寺で書画展をやっている」と聞き、労働節休暇の迫る四月末に北京の中心部にある牛街を訪れることにした。牛街は古くは遼・金時代から回族の居住区であり、羊肉の火鍋(しゃぶしゃぶ)など清真(ハラル)グルメの老舗が集まる美食街として有名だ。報国寺の最寄駅・地下鉄19号線「牛街」駅に着くとかつて牛街に暮らした少数民族の人々の生活を描いた壁画が構内一面に広がっており、その美しさに魅了された。多様な民族衣装、宴での舞踊風景などが独特の色調と筆致で表現され、イスラム文化と中国伝統文化の融合の歴史にふと思いを馳せた。
地下鉄牛街駅を出て行き交う人と車の喧騒の町並みを数分ほど歩くとひっそりと佇む報国寺が見えてきた。門をくぐると無数の漢文が書かれた布がアーチ状になびくトンネルがあり、まるで漢字文化のシャワーを浴びているようで心地よい。その先では古本市や特産品市場が催されている。どうやら「報国寺」は昔はお寺であったが、現在は一般市民に開放され文化交流を行う憩いの場へと変身しているようだ。
トンネルを抜けると籠の中から美しい小鳥の囀りや懐かしいコオロギの鳴き声が聞こえる小さな庭があり、その一角では柔らかな日差しの下で老人が骨董品の手入れをしながら露天販売している。昔ながらの北京人の趣ある日常生活を感じさせる景色に自然と心が和んだ。
緑豊かな境内を歩き以前の仏殿らしき建物に足を踏み入れると、そこは会議室に改装されたスペースがあり、著名な書道家成忠臣氏の生命力溢れるダイナミックな書画が展示されていた。しばし喧騒から離れ、静謐の中で書画に躍動する芸術家の革新のエネルギーに触れ、畏敬の念を覚えた。
報国寺のように古い建築物を改装・修復して市民に開放する取り組みが、私の住む地域でも行われている。現代的な高層ビル群の中にふと出現する歴史の趣を残したコミュニティースペースは地域社会に安心感をあたえ、そこで展開される様々な文化活動は周辺住民に生きる活力と楽しみをもたらす。筆者は書画の鑑賞後、露天で手頃な寧夏産ワインを購入し、報国寺を後にした。北京で暮らす人々の文化的生活を垣間見た街歩きであった。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年5月13日
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